<プレスリリース>

石炭火力発電所「是認」の環境大臣意見について

パリ協定と完全に矛盾。国際合意を踏みにじるな

2016年5月27日
特定非営利活動法人気候ネットワーク
代表 浅岡美恵

本日5月27日、鹿島火力発電所2号機建設計画(出力約65万kW)準備書及び常陸那珂共同火力発電所1号機建設計画(出力約65万kW)準備書に対する環境大臣意見が公表された。環境大臣は昨年、石炭火力発電所の建設計画をめぐって環境影響評価(環境アセスメント)で5件の計画に対して「是認しがたい」などと異議を唱えていたが、今年2月8日に方針転換の意向を示して以来はじめての意見書となる。今回の意見書では、「省エネ法のベンチマーク指標の遵守」や「電力業界全体の取り組みの実行性の確保」などを上げながらも、事実上「是認」とする方向を打ち出した。

これまでも業界の自主行動計画や、省エネ法のベンチマーク制度も努力目標であり、目標は達成できていないケースも多い。今回の環境大臣の要求は、これらの拘束力のない自主行動や自主制度に対し、何ら追加的な施策を講じるものでもなく、担保もない。2020年以降に運転開始予定とする石炭火力発電所の新規建設計画を推進する環境大臣の今回の方針は、今世紀半ばまでに事実上の排出ゼロを決めた「パリ協定」と完全に矛盾し、それを踏みにじるものであり、日本は”高炭素化“を目指すという意思表示として受け止められることになる。そして、この春に閣議決定した「地球温暖化対策計画」の中でも位置付けられた長期目標「2050年80%削減」の目標達成をも危うくするだろう。

折しも、G7伊勢志摩サミットが閉幕した本日、首脳声明には2016年のパリ協定発効を目標に明示し、気候変動に対する長期戦略を策定することが盛り込まれた。日本のリーダーシップの欠如により、強い政治的なリーダーシップの発揮が見られずに終わったが、それも日本がG7の中で唯一、石炭火力発電所の新規計画を強力に推進している国だからと批判を浴びているところである。そこに加え、環境大臣までもが石炭火力の新設を容認するといった今回の意見書での対応によって、気候変動の危機を回避するための「2℃目標」を目指し、「脱石炭」に向かう欧米諸国の対応とのギャップをさらに際立たせる結果となった。

 環境大臣は、日本が約束したパリ協定の実施や、長期戦略を2020年より先立って策定することと整合的に、国内の石炭火力発電所の建設計画を早急に見直し、にブレーキをかけ、省エネや再エネによるエネルギー転換を推進する国内環境政策を実施してもらいたい。

プレスリリース(印刷用)

石炭火力発電所「是認」の環境大臣意見について パリ協定と完全に矛盾。国際合意を踏みにじるな

資料

鹿島火力発電所2号機建設計画に係る環境影響評価準備書に対する環境大臣意見の提出について(Web)

常陸那珂共同火力発電所1号機建設計画に係る環境影響評価準備書に対する環境大臣意見の提出について(Web)

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