5月1日(日)、気候ネットワークは四国電力が計画している「西条発電所1号機リプレース計画 計画段階環境配慮書」に対する意見書を提出しました。

西条発電所1号機リプレース計画 計画段階環境配慮書 に対する意見書

1.規模増強のリプレース計画について

 本計画は、既存の西条発電所1号のリプレースであり、現発電所の規模15.6万kWを50万kWと3倍以上もの設備に増強する計画である。このような規模拡大は、周辺への大気汚染だけではなく、CO2の大量排出による地球温暖化の甚大な影響を及ぼすものだが、その気候変動への影響の項目すら配慮事項に含めていない本計画については環境保全の見地から建設自体に反対する。

 そもそも、現時点で四国電力管内の伊方原発が2012年1月に停止して4年になるが、電力不足には陥っておらず、一昨日4月29日にも阿南発電所3号機(定格出力45万kW)がトラブルで運転を停止したが、それも当面の電力需給への影響はないとしており、電力は現状ですでに充分足りている状況である。

 本計画では運転開始時期を2023年としているが、その頃には今以上に再生可能エネルギーも増強され(むしろ再エネにシフトすべきであり)、省エネも進んでいることから、時代錯誤な石炭を燃料とする本計画は全く不要である。

2.二酸化炭素を配慮事項にしない点について

本配慮書では、二酸化炭素を「計画段階配慮事項として選定しない理由」として「施設の稼働に伴い二酸化炭素が発生するが、最新鋭の高効率な超超臨界圧(USC)発電設備を採用することにより、単位発電量あたりの二酸化炭素排出量を低減することから、計画段階配慮事項として選定しない」と記載している。しかし、使用される技術が最新鋭であっても、事業によって引き起こされる CO2の総排出量の影響を検討し、対応を実施することは、事業者の社会的責任として不可避である。「計画段階配慮手続に係る技術ガイド」によれば、事業によって「重大な影響を受けるおそれのある環境要素の区分を明らかにすべき」(p23)とあり、CO2排出量の程度が著しい事業は 「重大な環境影響」を持つとみなされる(p26)。回避・低減が可能、影響が可逆的、短期間 であるなどの特性を持つ影響は、方法書以降で扱うことができるとされている(p24)が、本事業を通じて大量に排出されるCO2による気候変動への影響は回避できるものでなく、またその影響が不可逆的であり、長期間にわたる。事業の計画段階において検討されるべき事項であることは論を待たず、この点を欠く本配慮書は、十分に環境保全について検討しているとみなすことはできない。

3.CO2排出が及ぼす影響に関する具体的データについて

 本配慮書においてはCO2に関する詳細データが提示されていない。CO2排出量や発電端効率、送電端効率は環境保全の見地から検討するにあたって重要な情報であり、使用石炭種の主要産炭地毎の評価を実施すべきである。今後、低品位炭を使用して発電効率が低下した場合、環境影響評価を改めて実施するなどの対応策は事前に示されるべきである。これらは事業実施の是非や、周辺環境への影響にも深く関わる情報であると考えられるため、事業者はこれを早急に開示、取り決めをするべきである。

4.「パリ協定」及び「日本の長期目標」との整合について

 昨年12月、COP21において「パリ協定」が採択され、本年4月22日には日本を含む175カ国が署名した。「パリ協定」では地球の気温上昇を1.5~2℃未満にすることを目標とし、今世紀後半にはCO2排出を実質ゼロにすることとされた。

 また日本政府は、第四次環境基本計画(2012年4月27日閣議決定)において、2050年に温室効果ガス排出量を80%削減させる目標を掲げている。しかし、本計画が実行されれば、排出は減らず、むしろ増えることになる。

 本事業が少なくとも30年程度稼働することを考えると、「パリ協定」の合意に反し、国の目標とも整合しないため、本事業の正当性は認められない。

5.自主枠組みにおける目標との整合について

 本年2月8日に、「電気事業低炭素社会協議会」が発足し、四国電力もそのメンバーになっている。この協議会では、排出係数0.37kg-CO2/kWhを目標に掲げているが、石炭火力発電はいかなる最新の高効率技術を用いてもこのレベルには到達しがたい。石炭火力発電所を稼働してこのレベルに達成させるためには、非化石電源を稼働することでバランスする必要が生じるが、四国電力が持つ伊方原発は中央構造線断層帯に近接しており、熊本地震で地震リスクが高まる中再稼働するのは非常に甚大なリスクを伴い、国民世論の理解は得られていない。

 協議会で設定した目標も充分とはいえないが、少なくとも現状で再生可能エネルギーや高効率のLNG火力発電など様々な発電方法がある中で、あえて最悪の石炭火力発電所を新たに建設するという判断自体が環境への配慮を著しく欠いていると言わざるを得ない。

 

意見書

西条発電所1号機リプレース計画 計画段階環境配慮書 に対する意見書(PDF)

 

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