<プレスリリース>

四国電力・住友商事、宮城県仙台港で石炭火力発電所新設計画

仙台に1基たりとも石炭火力発電所はいらない

2017年3月14日
特定非営利活動法人 気候ネットワーク
代表 浅岡 美惠

本日3月14日、四国電力と住友商事は、共同で、宮城県仙台市の仙台港において、石炭火力発電所(バイオマス混焼)の建設計画を発表した。発電規模は11.2万kWと、仙台市環境影響評価条例にもとづくアセスメント対象だが、国の環境影響評価法のアセスメント対象基準(11.25万kW以上)を僅かに下回る規模の、悪質な計画である。以下の理由からこの計画に断固反対し、中止を求める。

1. パリ協定がめざす脱炭素社会に逆行する、時代錯誤の計画である

昨年11月4日、パリ協定が発効し、世界の気温上昇を産業革命前の1.5℃~2℃未満の上昇にとどめることが目標となった。1.5℃~2℃未満の目標達成には、残された化石燃料の燃焼によるCO2排出許容量はごくわずかである。とりわけ、天然ガス火力の2倍のCO2を排出する石炭火力発電所は、新設はおろか、既存の石炭火力発電所も速やかに廃炉にすることが求められる。今回の計画は、パリ協定発効後、日本がパリ協定に締結してからの発表であり、時代錯誤も甚だしい。

2. 国の排出削減目標の達成をより困難にする

欧米先進各国で「脱石炭」が進む中、日本では2012年以降、48基もの石炭火力発電所新増設計画が浮上し、国際社会から批判されている。環境省の「電気事業分野における地球温暖化対策の進捗状況の評価案」も、計画中の発電所がすべて稼働すれば、将来のCO2排出量が国の削減目標を上回るおそれがあること、発電事業者が十分な対策を示していないため評価できないことを指摘している。現時点では、石炭火力発電技術として、大気へのCO2放出を防ぐ技術は確立していない。CO2を排出しない再生可能エネルギーの技術がありながら石炭火力発電をあえて選択し、仙台港に新設することは、本来さらに深掘りすべき国の目標の達成をより困難にするものであり、認められない。

3. 石炭火力発電所の増設は、再生可能エネルギー普及を阻害する

日本は、エネルギー政策において石炭火力発電をベースロード電源としている。「ベースロード電源」は再エネよりも優先され、太陽光発電をはじめとする再エネ系統への接続が制限され始めている。東京電力福島第一原発事故後、仙台において石炭火力発電所を新たに増やすことは、東北における再エネ普及を妨げる。

4. バイオマス混焼であっても環境への悪影響があり、社会的コスト増の懸念もある

事業者の方法書では「バイオマス混焼」と発表されたが、バイオマス燃料を海外から輸入する場合、むしろCO2排出が増える懸念がある。混焼により発電効率が低下するおそれもある。また、「再生可能エネルギー固定価格買取制度」の対象にもなり、一般木材等の調達価格は2017年から2019年で21円/kWhとされている。一方では石炭で燃料価格を安く調達し、他方ではバイオマス混焼分について電力需要家から高く買い取られるという問題のあるしくみを悪用するもので、社会的コストを増加させる。再エネ100%にすべきである。

5. 被災地に石炭火力発電所を建設することは安心で安全な復興の妨げになる

仙台港では、関西電力と伊藤忠エネクスを親会社に持つ仙台パワーステーション株式会社が11.2万kWの石炭火力発電所を建設中である。これに対し、地元住民から「自分たちの目指す復興の姿ではない」と強い反対の声があがっている。近隣には貴重な自然生態系を有する蒲生干潟があり、半径5km圏内には多くの小中学校がある生活圏である。電気は首都圏へ、利益は地域外へ流れ、地域の住民には自然環境破壊、大気汚染や健康リスクが残るのみである。傷ついた被災地に何のメリットももたらさず、復興を妨げる計画である。

プレスリリース本文

四国電力・住友商事、宮城県仙台港で石炭火力発電所新設計画 仙台に1基たりとも石炭火力発電所はいらない

参考

仙台市における石炭バイオマス混焼発電所に係る 「環境影響評価手続き」の開始について(四国電力)