<プレスリリース>                        

「気候変動適応法案」の強化に向けた国会での議論を

2018年2月28日
特定非営利活動法人 気候ネットワーク
代表 浅岡 美恵

 

 2月20日、 「気候変動適応法案」が閣議決定され、第196回国会に提出された。この法案は、気候変動への適応を推進するため、気候変動適応計画の策定、気候変動影響評価の実施、適応を推進するための業務の実施、気候変動への適応に関する情報の収集及び提供等の措置を講ずるものである。

 本法案の審議に当たり、まず確認すべきは、気候変動対策は、最大限の緩和策の実施が大前提であるということである。その上で、本法案が、気候変動関連リスクを幅広く把握・共有し、避けることのできない影響をできるだけ軽減するものとなるために、以下の論点について現行法案を強化するよう、国会議論が行われることを期待する。

1.脱炭素化の推進は、最大の適応策である

 パリ協定では「1.5℃~2℃未満目標」をかかげ、温室効果ガスの排出を早期に削減し、脱炭素社会を構築することが決められた。しかし、日本ではそのために必要な実効ある緩和策がとられていない。緩和策の強化は、未然に影響と被害を回避する最大の適応策であるとも言え、緩和策と適応策を総合した国全体の気候変動対策の基本方針を位置付けることが必要である。本法案の?明では、環境省は「緩和策」と「適応策」は車の両輪だとしているが、「適応策」のみしか扱わない本法案は、包括的な気候変動対策方針を描くことが出来ていない。本法案では、まず、本法案が緩和策を弱体化させることなく、緩和策をさらに強化して影響を最小化させる必要があることを明示し、気候変動リスクを回避するために取るべき緩和策についてフィードバックすることを法に位置づけるべきである。

2.企業などの各主体の気候変動リスク評価情報の横断的な収集・把握

 気候変動影響評価にあたっては、企業や自治体などそれぞれの事務・事業活動において、気候変動リスクについて把握することが基本となる。必要な情報の収集・整理・分析を行うことは国の責務(努力ではなく義務)とし、影響が予測される企業等に対して定期的に情報の提出を義務付ける権限を政府に与え、各省庁が情報提供に協力し、全省庁挙げて横断的に推進することを明記すべきである。

3.適応対策の名の下の無駄な公共事業のチェックと排除

 気候変動の適応策として、これまでもその名の下に様々な公共事業の必要性が論じられてきた。これまで「無駄な公共事業」と言われてきたような治水ダムや防潮堤設置などに代表される事業について、「適応策」としての妥当性について厳しく事業評価を行われるよう、国家予算を無駄に消化することのない仕組みの導入が不可欠である。

4.第三者の評価の仕組みが必要

 評価情報の的確性、計画の内容の妥当性を確保するためには、独立した第三者機関の評価と勧告の仕組みが必要であり、これを法に位置づけるべきである。

5.市民の幅広いリスクの共有とソフト面での適応策の強化

 一般の市民にとって、様々な場所で様々な形で起こる気候変動リスクはまだ実感が伴うものとはなっていない。市民が経済や暮らしを脅かすリスクについて横断的に理解できること、さらに、影響や被害を回避し強靭な社会をつくる上で、市民や自治体、企業などが連携するソフト面での対応が重要であり、その点での対策の推進も法に位置づけるべきである。

 

関連サイト)環境省「気候変動適応法案の閣議決定について」http://www.env.go.jp/press/105165.html

 

プレスリリース(PDF)

【プレスリリース】「気候変動適応法案」の強化に向けた国会での議論を(2018/2/28)

 

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