本日3月2日、気候ネットワークは、現在経済産業省が行っている「エネルギー政策に関する意見箱」に対して意見書「エネルギー基本計画改訂にあたっての提案~脱炭素社会と脱原発の実現、エネルギーシフトに向けた大転換へ~」を提出しました。

2018年3月2日

エネルギー基本計画改訂にあたっての提案
~脱炭素社会と脱原発の実現、エネルギーシフトに向けた大転換へ~

認定NPO法人 気候ネットワーク

 2014年のエネルギー基本計画の改定から3年が経過し、新たな見直しのタイミングを迎えている。日本のエネルギーをめぐっては、原子力発電の甚大なリスクと安全神話の崩壊、気候変動に関するパリ協定の遵守、化石燃料利用に起因する大気汚染と健康被害、再生可能エネルギー成長の低迷による経済成長・雇用増の機会損失、エネルギー安全保障の確保や自給率向上など、様々な課題が顕在化している。しかし、現行のエネルギー基本計画やそれに基づいて作られた2030年のエネルギーミックス(電源構成)は、「価格が低廉」であることを理由に原子力発電や石炭火力発電をベースロード電源と位置付け、2030年の電源構成では原子力22~20%、石炭26%と過大な見通しをたて、旧来型の持続不可能な原発・化石燃料依存のエネルギーシステムを内在化しており、様々な現代の課題に対応しているとは言い難い。

 世界は今、パリ協定のもと「脱炭素社会」の早期実現に向け、「原発・化石燃料」から「省エネ・再エネ」へとダイナミックにシフトする「エネルギー大革命」の中にある。脱石炭の宣言・達成や、再生可能エネルギー100%の宣言・達成といった動きは、国家レベルのみならず、地方自治体、企業、大学、民間団体など様々な主体が率先して取り組みはじめている。実際、この数年で、風力、太陽光をはじめとする再生可能エネルギーは、様々な専門機関の予測を遥かに上回る勢いで導入が進んできた。自然の変動が大きい太陽光発電や風力発電等を基幹電源とし、蓄電池や揚水発電などの調整電源を活用することで、1日24時間フル稼働させるベースロード電源を基軸にした電力システムから、フレキシブルに電源活用する電力システムへシフトしている。

 日本は、「資源が乏しい」と言われるが、化石燃料の賦存量が脆弱なだけであって、自然資源(再生可能エネルギー資源)には非常に恵まれている。日照時間は長く一年を通して太陽に恵まれ、四方を海に囲まれ風力のポテンシャルも高い。また火山国だからこそ地熱を有効に活用でき、森林資源も豊富にあり、水力に活用できる水にも恵まれている。こうした豊かな資源を活かし、日本のエネルギー政策を見直し、地域社会を豊かにし、未来を切り開くエネルギー政策に切り替えていくことが、日本の未来を切り開くことにつながると考える。そこで、エネルギー基本計画改正にあたって、以下のとおり提言する。

(1)原発ゼロの実現~非現実的な原発稼働の想定と不健全な原発延命策の見直しを~

 遅くとも2020年までに原発ゼロを実現する方針を盛り込むべきである。

(2)パリ協定”1.52℃目標の遵守~削減目標の深掘りと長期の脱炭素社会の実現~

 パリ協定の目標達成をエネルギー政策の中心に位置付け、2050年に温室効果ガスを少なくとも80%削減する目標をエネルギー基本計画に明記し、2030年の削減目標の引き上げを前提とするべきである。

(3)石炭政策の見直し ~2030年までの石炭火力ゼロを目指す~

 石炭火力発電は2030年までに全廃することをエネルギー基本計画に位置づけるべきである。

(4)カーボンプライシングの導入 ~電力コストの再検証と価格インセンティブ~

 エネルギー起源CO2排出に対するコストを上げ、環境に優しいエネルギーの普及に価格インセンティブをつける「カーボン・プライシング」政策の強化を盛り込むべきである。

(5)再生可能エネルギーを基幹電源に~「ベースロード電源」中心の概念からの脱却~

 再生可能エネルギーの系統接続と給配電を優先する方針を明記し、2030年以降、将来的に再生可能エネルギー100%の社会を目指すことを明記すべきである。

(6)水素の利用は化石燃料起源水素ではない可能性の模索を

 水素社会の構築は化石燃料を原料とするのではなく、再生可能エネルギーからの余剰電力を利用してつくる水素に限定して開発を進めるべきである。

(7)省エネと徹底した排熱利用や再生可能エネルギー熱の利用の促進を

 機器や製品、設備等の省エネを拡大させるとともに、排熱を有効に活用するとともに、再生可能エネルギー熱の普及を促進する政策を導入すべきである。

(8)エネルギー政策の検討及び策定プロセスの大幅な見直し

 エネルギー政策の検討プロセスにおいては、国民の意見を広く反映させることのできるプロセスへと大幅に見直すべきである。

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意見書(PDF)

【意見書】エネルギー基本計画改訂にあたっての提案~脱炭素社会と脱原発の実現、エネルギーシフトに向けた大転換へ~

 

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