<プレスリリース>

2018年3月16日

神戸市・兵庫県の神戸製鉄所火力発電所(仮称)新設計画への意見

データ改ざん、気候変動対策に逆行する石炭火発を許してはならない

特定非営利活動法人 気候ネットワーク
代表 浅岡 美恵

 2017年10月に発覚した神戸製鋼所(以下、神鋼)の製品データの改ざんを受けて、兵庫県と神戸市において、神鋼が神戸市灘区において進めている神戸製鉄所火力発電所(仮称)設置計画環境影響評価準備書の検証を行ってきた。同計画は、住宅密集地に隣接する神鋼の高炉設備等を撤去した跡地に、既設の140万kW大規模石炭火発の隣接地に、新たに出力130万kWの石炭火発を建設するという計画である。3月1日、神戸市長は、兵庫県知事に意見を提出し、これを受けて、兵庫県知事は3月16日に経済産業大臣に意見を提出した。いずれも、「温室効果ガス、大気汚染物質等による環境への大きな影響が懸念される」としながら、具体的措置を示さず、設置そのものを容認するものである。
しかしながら、本計画は以下の重大な課題を含むもので、設置は是認されえないものである。

1. 神鋼の情報に信頼性がなく、アセスメント手続きのやり直しが必要

 環境影響評価において市民参加は重要であり、環境アセスメント図書における信頼性が十分に確保されている必要がある。本件には製品データ改ざんが確認された神鋼子会社のコベルコ科研が関わっていた。また、県・市の審査会において、市民参加プロセスの終了後に、委員からの指摘を受けて「大気汚染物質の総排出量の変化」等、多数の追加・補足資料が提出された。これらは、住民説明会において再三にわたって求めてきたものであり、準備書の記載が数百カ所にわたって修正されてきた。神戸市長意見においても、神鋼の情報提供の姿勢には「問題があると言わざるを得ない」と指摘しているところであり、神鋼による環境アセスメント手続き自体のやり直しを指示すべきである。

2. 具体的な温室効果ガスの削減方策が示されていない

 本件石炭火発は関西電力と電力受給契約を締結したもので、2020年から2050年まで30年間にわたって稼働することが予定されており、年間692万トンに及ぶ莫大なCO2を排出し続けることになる。また、神鋼が地元審査会へ提出をした温暖化対策に関する説明(下図)は、関西電力が保有する石油・LNG火力の稼働の抑制や他の再生可能エネルギーによる削減効果を身勝手に充当したものである。こうした計画は、21世紀下半期の早期に脱炭素を目指すパリ協定に逆行し、温室効果ガスの排出を2050年80%削減する国の目標達成を危うくするものである

 

3. 汚染物質対策も不十分
 また、本計画は住宅密集地近くに予定されており、最新で最良の汚染対策を行ったとしてもNOx、SOx、PM2.5、水銀などの汚染物質の影響は重大であるが、他と比べても優れ、最良とはいえないものである。当該計画地は、1970年代から工場、周辺道路からの大気汚染公害に長年にわたって悩まされてきた地域であり、多くの公害患者を生み出すこととなった。環境改善の取り組みが、行政、企業、市民によって重ねられ、回復の途上にある。しかし、現在も周辺地域のPM2.5、光化学オキシダントの環境基準は未達成の箇所があり、より一層の対策が求められる。このような地域に大規模な固定発生源となる石炭火力発電所を建設することは、不適当である。

 本計画を含め、国内には41基にも及ぶ新規の石炭火力の計画が進められている。神戸の他、計画がある地域では、市民から懸念の声が相次いでいる。神戸においても、地元住民は神戸市主催の公聴会において39名が、兵庫県主催の公聴会では、12人が環境悪化を懸念し、計画に反対の意見を表明している。環境大臣においては、環境影響評価の趣旨を忘却することなく、地元住民の意見を受け止め、「本計画は是認できない」との意見表明することを強く求める。

プレスリリース(全文)

神戸市・兵庫県の神戸製鉄所火力発電所(仮称)新設計画への意見データ改ざん、気候変動対策に逆行する石炭火発を許してはならない

参考

「神戸製鉄所火力発電所(仮称)設置計画 環境影響評価準備書」 についての意見書(神戸市長)

株式会社神戸製鋼所神戸製鉄所火力発電所(仮称)設置計画に係る環境影響評価方法書に関する環境の保全の見地からの意見について(兵庫県知事)

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