パリ協定のルール:ボンからバンコク、COP24カトヴィツェへ

「タラノア対話」で2050年長期戦略・2030年目標のステップ・アップを

2018年5月10日・ボン
特定非営利活動法人気候ネットワーク
                         代表 浅岡美恵

 

現地時間5月10日夜、ドイツのボンで開催されていた国連気候変 動会議SB48・APA1-5( 気候変動枠組条約に基づく第48回補助機関会合、パリ協定特別作 業部会第1回第5部)が閉幕した。今年12月に開催されるCOP 24(ポーランド・カトヴィツェ)でのパリ協定実施指針、 いわゆるルールブック採択に向けて、9月上旬にタイのバンコクで 準備会合が追加開催されることになった。

今回のハイライトは、COP23議長国フィジー伝統の「タラノア 対話」準備フェーズが開催され、大きな成果をあげたことだ。「 我々はどこにいるのか(問題の現状認識)」、「 どこをめざすのか」、「どうやってそこに到達するのか」 について、700人の世界各地の各界・各層が自分の言葉で語り、 その総体として、COP24でのルールブックの採択、さらには脱 炭素に向けた2050年長期戦略の策定、2020年が期限の2030年目標の引き上げといった行動のステップアップへ、 気運を高めた。COP24では政治レベルでのタラノア対話が予定 されている。各国の排出削減目標引き上げの意思を引き出す役割が 期待される。

ルールブック交渉では、COP23終了時には合計266頁もあっ た非公式文書のセットが幾分スリムになった。削減目標と行動、 適応、透明性、グローバル・ストックテイク、これらに関連する資 金問題など多くの重要な論点で、選択肢の整理が一定進み、 バンコクでの議論の基礎がつくられた。バンコク会議前にもさらに 工夫がなされ、バンコクではCOP24での焦点を絞り込み、政治 レベルでの結論を得ていくことが期待される。さらなる交渉の加速 が必要だ。

COP24まで、9月に米カリフォルニアで開催される世界気候行 動サミット(GCAS)、10月の「1.5℃の地球温暖化」IP CC特別報告の公表と、重要なイベントが続く。この間にも、ボン でのタラノア対話がもたらしたタラノアスピリットがさらに拡大し 、ルールブック採択を促し、パリ協定の実質的作動を加速させ、 1.5~2℃未満のため野心引き上げの実現へと、国際社会のうね りを高めるだろう。

日本国内に目を転じれば、削減目標の低さだけでなく、政治・経済 ・社会のどのレベルでもこうした認識やダイナミックな改革への国 際潮流との間に隔世的なギャップの存在は否めない。この日本と世 界のギャップを埋めていく責任と役割は、私たちすべてが負ってい る。2030年排出削減目標の引き上げ、2050年に向けた脱炭 素の長期戦略、再生可能エネルギーの系統への優先接続、 脱石炭への転換、カーボン・ プライシング等の新たな政策措置の導入・実施に向けて、市民、 ビジネス、行政、自治体などによる、国・地域版のタラノア対話を 直ちに始めるべきだ。その上にこそ、基本政策分科会で議論されて いる2030年、2050年に向けたエネルギー基本計画は、パリ 協定に合致するものとなる。タラノアスピリットで、2018年を 、原発も温暖化もない未来に向けたステップアップの一年にしよう 。

以上