【要請書】山口県知事へ石炭火力発電所問題に関する要請書を送付しました

2019年3月25日

電源開発、大阪ガス、宇部興産が関わる「山口宇部パワー」が山口県宇部市で計画中の石炭火力発電所「西沖の山発電所(仮称)」について、気候ネットワークは、下記の要請書を村岡嗣政山口県知事に送付しました。

 

山口県知事
村岡嗣政様

山口県の西沖の山・石炭火力発電所に関する要望書

2019年3月25日
特定非営利活動法人気候ネットワーク
代表 浅岡美恵

 

 日頃からの貴県の環境行政の取り組みに敬意を表します。

 私たちは、気候変動問題に地域・国・国際レベルで取り組むNPO/NGOです。昨年「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が発表した「1.5度の地球温暖化」特別報告書によれば、気候変動は深刻なレベルで進行しており、対策を大胆に加速させなければ、今後十年余で気温上昇が1.5度に到達してしまうということです。

 気候変動に取り組む上で、最も問題視されているのが、石炭火力発電です。石炭火力発電所は、最大のCO2排出源であるためです。IPCCは、長期の低炭素化を困難にする石炭火力発電について、早期対策が重要であると指摘しています。

 先進国で日本のように多数の新規の石炭火力発電を新設する国はなく、世界では、2018年12月時点で、80の国や自治体、企業が石炭火力発電所を全廃する方針を定めています。

 

 そのような中、現在、山口県宇部市で計画が進んでいる山口宇部パワー株式会社の「西沖の山発電所(仮称)」は、総出力120万kWの大規模な石炭火力発電所であり、稼働すれば、年間720万トンものCO2排出増加が見込まれます。これは一刻の猶予もない気候変動対策に真っ向から逆行する計画です。また、石炭火力発電から離れ、再生可能エネルギーを中心としたクリーンなエネルギーシステムに転換しようとしている世界の潮流からも大きく逸脱しています。PM2.5などを排出し、周辺地域の大気汚染を悪化させ、住民の健康を損ない、地域経済の持続的な発展に逆行する懸念もあります。

環境省は、去る2015年6月に、「西沖の山発電所(仮称)」の計画段階環境配慮書に対する環境大臣意見を公表し、この事業全体について、「現時点で是認できない」という厳しい意見を表明しました。2030年の26%削減の温室効果ガス削減目標案及び2030年のエネルギーミックスとの整合性が認められないことがその理由でした。本計画は、将来の地球温暖化対策に大きな支障となることが明白であり、社会的正当性を欠く事業と言わざるを得ません。加えて、今後の気候変動対策の強化と再生可能エネルギーの普及とコスト低下とを踏まえれば、今から数十年にわたって稼働する石炭火力発電所が経済合理性を喪失し、座礁資産となることは明らかです。

 折しも、本事業について、宇部市長と山陽小野田市長は、大気汚染と温暖化を中心に事業者に対して追加的な説明や対策を求めています。とりわけ、宇部市長は、温暖化においては、国内外で急速に石炭火力発電への批判が強まっていることを強調し、省エネ法ベンチマーク指標の目標を達成できないなら、事業そのものを見直す必要性にも言及しています。石炭火力発電を多く所有する電源開発は、省エネ法の目標の達成が危ういため、この指摘は重要です。

 

 以上を踏まえ、宇部市ご出身の山口県知事として、気候変動を加速させる石炭火力発電所「西沖の山発電所(仮称)」の新設を認めないという明確な立場の下、厳しい意見を発表いただくことを求めます。

 

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