住友商事の石炭方針に対するNGO共同声明発出
脱石炭への明確な方針なしには気候変動対策として不十分

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
気候ネットワーク
国際環境NGO FoE Japan
メコン・ウォッチ
国際環境NGO 350.org Japan

 住友商事が「統合報告書2019」を8月に発行し、今後、石炭火力発電事業と炭鉱事業の新規開発を行わない方針を発表しました 。それに対し国内環境団体5団体から「住友商事の石炭方針に対するNGO共同声明 気候変動対策のためには石炭ゼロを目指すべき」と題する声明を発表しました。

同報告書では、 2035年を目途に持分発電容量ベースで、石炭の比率を50%から30%に、ガスを30%から40%に、再エネを20%から30%にし、「石炭火力発電事業については、新規の開発は行わない」としています。しかし、「地域社会における経済や産業の発展に不可欠で、国際的な気候変動緩和の取り組みや動向を踏まえた、日本国およびホスト国の政策に整合する案件は、個別に判断する」とし、注釈において「ベトナム国におけるバンフォン石炭火力発電事業は、この方針に基づき取り組んでいる案件」という、看過できない例外規定を設けています。また、2035年までに石炭の割合を30%にするという目標は気候変動対策の観点からも不十分です。

詳しくは以下の共同声明 全文をご覧ください。

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〒173-0037 東京都板橋区小茂根1-21-9
Tel: 03-6909-5983

共同声明 全文

住友商事の石炭方針に対するNGO共同声明
気候変動対策のためには石炭ゼロを目指すべき

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
気候ネットワーク
国際環境NGO FoE Japan
メコン・ウォッチ
国際環境NGO 350.org Japan

 住友商事が「統合報告書2019」を8月に発行し、今後、石炭火力発電事業と炭鉱事業の新規開発を行わない方針を発表しました [1]。

同報告書では、 2035年を目途に持分発電容量ベースで、石炭の比率を50%から30%に、ガスを30%から40%に、再エネを20%から30%にし、「石炭火力発電事業については、新規の開発は行わない」としています。しかし、「地域社会における経済や産業の発展に不可欠で、国際的な気候変動緩和の取り組みや動向を踏まえた、日本国およびホスト国の政策に整合する案件は、個別に判断する」とし、注釈において「ベトナム国におけるバンフォン石炭火力発電事業は、この方針に基づき取り組んでいる案件」と述べています。

1.新規石炭案件からの撤退のみならず、計画中案件・建設中案件の中止、運転中案件からの早期撤退が必要
私たちは、これまで住友商事に対して石炭火力発電事業からの撤退を求めてきました。今般、住友商事が、脱炭素化への世界の潮流に沿い、その方向に一歩踏み出す方針を策定したことを歓迎します。しかし、石炭火力発電所の新規建設は、パリ協定との整合性が確保できないことが国連機関や国際エネルギー機関(IEA)等から指摘されており、2018年10月に発表されたIPCCの1.5℃特別報告書では、さらに迅速な脱炭素化が急務であると指摘されています。したがって、パリ協定と整合する実質的な気候変動対策としては、新規案件のみならず、現時点で計画中案件および建設中案件の中止、運転中案件からの早期撤退が必要です。特に、建設工事が始まっていないバンフォン石炭火力発電事業(1,320 MW)については、早急な中止に踏み切るべきです。また、建設中のインドネシア・タンジュンジャティB再拡張(2,000 MW)についても、中止の決断を下すには遅くありません。
なお、住友商事は発電事業ではなく、EPC事業として他社から石炭火力発電所の建設を請け負っています。例えば、現在建設を進めているインドネシア・バンテン州ロンタール拡張(315 MW)やバングラデシュ・マタバリ(1,200 MW)での事業があげられます。このように石炭火力発電所の建設を続けることは、各現地国が取り組むべき温暖化対策へのマイナス要因となることも看過されてはなりません。

2.発電容量の割合での目標を掲げるのではなく、絶対値での削減を掲げ、2035年より早い時点での石炭ゼロを目指すべき
住友商事が打ち出した方針にしたがい2035年までに石炭の割合を50%から30%へ引き下げるには、石炭への出資から撤退する、あるいは、全体の発電容量を拡大させるという選択肢があることになりますが、どのように割合を減らすのかは明確にされていません。後者であれば、対策としての実効性には大きな疑問が残ることになります。したがって、発電容量の割合での目標を掲げるのではなく、絶対値での削減を掲げ、2035年より早い時点での石炭ゼロを目指すべきです。

3.バンフォン石炭火力発電事業における環境破壊と人権侵害を回避するべき
前述のベトナム・バンフォン石炭火力発電事業に関しては、国内外のNGOや市民団体から住友商事に対し、撤退を求める要請書が提出されてきました[2] 。バンフォンは、超臨界圧という効率の劣る技術を用いており、さらに、国際環境 NGO グリーンピースのレポートによれば、2012年以降日本で建設が計画された最新の石炭火力発電所に比べ、約9倍の粉塵とSO2(二酸化硫黄)、約6倍のNOx(窒素酸化物)を排出します[3] 。また、現地では事業開発に係る適切な住民協議が行われていないなどの問題もみられ、現在も建設予定地からの立ち退きには応じられないとする世帯が存在しています[4] 。
住友商事は同統合報告書の中で、「当社グループの事業活動の影響について、地域住民や NGOなど、ステークホルダーから問題の指摘を受けた場合 は、実態を踏まえて、改善施策を検討・実施します」としていますが、少なくともバンフォンに関しては、これまで国内外のNGOからの指摘にもかかわらず、改善は図られていません。住友商事は、住民への人権侵害を回避し、住民との適切な対話を行うべきです。また、NGO等から指摘された環境破壊などの問題についても対応すべきです。

<脚注>

  1. 住友商事「統合報告書2019」https://www.sumitomocorp.com/ja/jp/ir/financial/investors-guide/2019
  2. FoE Japan他「地域住民や国際社会の声を無視し、新規石炭火力に支援を続ける日本JBIC、NEXIはバンフォン1石炭火力発電への支援撤回を!」http://www.foejapan.org/aid/jbic02/vp/190426.html, 2019年4月26日
  3. Greenpeace South East Asia, Greenpeace Japan “A deadly double standard how Japan’s financing of highly polluting overseas coal plants endangers public health” https://www.greenpeace.org/japan/nature/story/2019/08/20/9932/ 2019年8月
  4. Grandma Ca: the 99-year-old standing up to Vietnam's coal rush https://www.bangkokpost.com/world/1682072/grandma-ca-the-99-year-old-standing-up-to-vietnams-coal-rush, 2019年5月22日

共同声明のダウンロード

住友商事の石炭方針に対するNGO共同声明 気候変動対策のためには石炭ゼロを目指すべき(PDF)

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