新聞報道により、北海道釧路市で建設中の石炭火力発電所「釧路火力発電所」は、稼働開始時期を当初予定の2019年12月から2020年11月に後倒しすることが明らかになっています。これを受け、7月10日、気候ネットワークは、釧路火力発電所に出資している株式会社IDIインフラストラクチャーズ、買電する株式会社F-Power、燃料となる石炭を販売する釧路コールマイン株式会社、発電所が所有地内に立地する太平洋興発株式会社の計4社に宛てて、石炭火力発電の環境影響や釧路火力発電所の事業性など下記の見解を問う質問書を送付していました。

質問1.石炭火力発電の環境影響について
質問2.海外及び国内における石炭火力新設廃止の動きについて
質問3.釧路火力発電所の売電先について
質問4.釧路火力発電の稼働開始時期延長の理由について
質問5.釧路火力発電所運転期間中の採炭について
質問6.釧路火力発電所の事業性・採算性について
質問7.地元の市民からの反対の声について
質問8.仙台市、神戸市および横須賀市の石炭火力発電所に対する訴訟について

 これに対し、IDIインフラストラクチャーズを除く3社から返信がありましたので報告します(2019/11/22現在)。なお、質問8の各地の石炭火力発電に対する訴訟については本ページ末の「参考ページ」をご参照ください。

■各社の回答■

株式会社IDIインフラストラクチャーズ
 回答は無かった。

株式会社F-Power
 電話で、回答する立場にないとの返答があった。

釧路コールマイン株式会社
 メールで以下の旨の返答があった(カギカッコ内は引用)。
「本質問書は、釧路火力発電所の事業主体に対して」「世界の気候変動に与える影響面から考え方を聴取するものと理解」しているが、同発電所の事業主体は株式会社釧路火力発電所であり、出資母体は株式会社IDIインフラストラクチャーズである。釧路コールマインや太平洋興発は出資者や事業主体ではなく、「『地元の地域資源である石炭を使った地産地消の火力発電所』の誘致と協力企業として、地元釧路市の協力の元に地域活性化のプロジェクトの一つとして関わり、事業を進めている」ことを理解してほしい。そのため、「本来北海道では『環境アセスメント』の必要がない小規模火力発電所にもかかわらず、本プロジェクトは事業者と共に時間のかかるアセスを行うことを決定し、私共も地元企業(協力企業)として住民説明会等では、前面に出て丁寧な説明を続けて」きた。
上記のような関係から、「いただいたご質問に弊社が直接回答することは適当ではない」との回答があった。

太平洋興発株式会社
 書面にて下記の通り回答があった(下線部は引用)。

質問1 本プロジェクトを含めて、石炭火力発電所は国の定める環境基準に適合していると理解している。気候変動への影響については科学的な見識が必要な問題であり、回答することは難しい
質問2 脱石炭火力発電の動きがあることを承知しており、今後とも世の中の動向に適切に対応していく
質問3-6 株式会社釧路火力発電所殿および釧路コールマイン株式会社殿の経営に関わる問題であるので本プロジェクトの事業主体ではない弊社がお答えすることはできない」。
質問7 反対の方、賛成の方、色々なご意見があることは承知している。
質問8 ご指摘の状況については、詳しく存じておりません。
事業者は脱石炭の潮流を見極め、決断を下すべき

 今回、事業主体であるIDIインフラストラクチャーズからの返答がなかったことは大変遺憾です。同社は福岡県北九州市にある石炭火力発電所「響灘火力発電所」(11.2万kW)にも出資しています。また、F-Powerからは、事業主体ではないことを理由に回答を得ることはできませんでした。
IDIインフラストラクチャーズはF-Powerの株主でもあり、両社とも埼玉浩史氏が社長を務めています。両社には石炭火力発電に対する姿勢と責任が問われ、石炭火力に対してどのような見解をもっているか、市民に開示することを求めます。
地元企業である釧路コールマイン並びに太平洋興発からは一定の回答やコメントを得られましたが、一刻も早く脱石炭を実現することが求められる現状に対して、危機感は希薄であると言わざるを得ません。
関連する4社においては、事業主体であるか如何にかかわらず、石炭火力発電事業は再考することを求めます。 

参考ページ

釧路火力発電所の概要・関連情報はこちら 

釧路で小規模石炭火力建設中 炭鉱の町にも石炭反対の声はこちら

仙台石炭訴訟はこちら

神戸石炭訴訟はこちら

横須賀石炭訴訟はこちら