<共同プレスリリース>

日本の金融機関・投資家が石炭投融資リストのトップを独占 - COP25で判明

2019年12月6日 マドリード・スペイン - 本日、石炭産業に投融資する世界の金融機関に関する最新調査報告書が、ドイツの環境NGOウルゲワルド(Urgewald)およびオランダのバンクトラック(Banktrack)により、マドリードで開催されている国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)において発表されました。

  • 日本の民間銀行であるみずほフィナンシャルグループ(みずほFG)、三菱UFJフィナンシャルグループ(MUFG)、そして三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)が、石炭火力発電開発企業への融資者として融資額ランクの世界第1位から3位までを占めています。
  • 日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、石炭火力発電開発企業への投資家として世界第2位にランクインしました。
  • 石炭開発企業に対する引受業務は、中国の大手金融機関によって大部分が占められていました。

調査報告書 は、「Global Coal Exit List(脱石炭リスト)」に掲載されてる世界の石炭関連企業トップ258社に対する融資、引受業務、債権および株式保有を分析。驚くべきことに、2017年から2019年の間に行われた金融機関による石炭火力発電開発企業への投融資額は7450億米ドル(81兆1,505億円:1ドル109円換算)におよび、日本の民間銀行と機関投資家が上位を占めています。
Urgewaldのダイレクター、ヘファ・シュウキングは、「日本企業は、アジアでの石炭火力発電の拡大に2つの役割を果たしています。金融機関による投融資および直接投資によるものです。J-Power(電源開発株式会社)や関西電力などの電力会社だけでなく、丸紅、三菱商事、住友商事などの大手商社によっても、オーストラリアからバングラデシュに到るまで新しい石炭火力発電所が開発されているのを見るのは遺憾です」とコメントしました。

日本政府は、地球の気温上昇を産業革命前に比べ2度未満に抑えることを目標としているパリ協定に批准しています。しかし、日本の民間銀行であるみずほFG、MUFG、SMBCグループは、石炭火力発電開発企業に対する最大の融資者です。日本の三大メガバンクは、2017年から2019年の間に、393億米ドル(4兆2,837億円:1ドル109円換算)もの融資を石炭火力発電開発企業に行なっています。石炭産業による温室効果ガス排出量は世界の3分の1にも及びます。 [1]

みずほFG(168億米ドル)、MUFG(146億米ドル)、SMBCグループ(79億米ドル)による融資の総額は、CitiグループやBNPパリバ、インドステイト銀行(SBI)、バークレイズを含む世界のトップ30行による融資額の40パーセントにあたります。

最新報告書を受け、350.org Japanのキャンペーナーである渡辺瑛莉は、「日本のメガバンクは、今年9月、国連の「責任銀行原則(PRB)」に署名し、銀行の投融資行動をパリ協定に沿ったものにすることをコミットしたばかりです。石炭への融資は、これに矛盾するだけではありません。銀行が脱炭素経済への移行に貢献するために、これまで石炭関連事業に融資することで積み上げてきた「気候債務」を一刻も早く減らしていかなくてはいけません」とコメント。

日本の三大メガバンクは、気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の気候リスク報告に関する提言にも賛同しており、石炭火力発電事業への融資を制限するセクターポリシーを導入しています[2]。 しかし、これら3大メガバンクはいまだに国内外で新規石炭火力発電事業への融資を続けており、同金融グループが海外でのさらなる事業展開を目指す際に、国際的なブランドに対する大きな評判リスクになります。

日本のメガバンクすべてが融資に関わる案件として注目すべきは、インドネシアで進められているチレボン2石炭火力発電事業です。同案件に関連しては、贈収賄事件が報じられている[3]他、赤道原則などの国際規範66項目に違反しているとの報告書が出されたばかりです[4]。またベトナムのバンフォン1石炭火力発電事業も、強制移住を強いられた近隣住民や健康被害への懸念などが報告されており、赤道原則などの国際的な投融資基準違反も疑われます[5]。さらに、現在ベトナムで計画中のブンアン2石炭火力発電事業に対しても、日本の民間金融機関が融資を検討していると報道されており[6] 、同案件に融資を決定するとすれば、これらの銀行に対する国際的な批判は免れ得ないでしょう。

日本の年金基金であるGPIFは、石炭関連企業に対し、世界第2位の投資を行っています。
調査報告書によると、GPIFは174億米ドルに相当する株式と債権を保有しています。世界最大級のアセットマネージャーであるブラックロックは、石炭産業関連企業に対し176億米ドルに相当する投資を行っており、世界1位でした。また、124億米ドル相当の投資を行うバンガードが3位につけました。その他の日本の主要な資産運用会社としては、三井住友信託が7位、野村證券が8位、MUFGが9位、みずほFGが12位でした。石炭産業への投資額全体でみると、日本の投資額は米国に次いで2位になります。

石炭関連企業への日本の巨額の投資をうけ、350.org 日本支部代表である横山隆美は、「日本の年金基金は、投資ポートフォリオが3度上昇の世界につながると認めています。気温が3度も上昇すれば、それは地球や金融に破壊的影響を及ぼすでしょう。世界最大の年金基金で、かつ国連責任投資原則(PRI)のボードメンバーとして、Global Coal Exit List(脱石炭リスト)掲載企業をはじめ、GPIFの投資ポートフォリオを脱炭素化するためにいかに行動に落とし込むのか、GPIFは国際的な監視の目に晒されています。日本の投資家は情報開示から一歩先へ進み、パリ協定の1.5度目標との整合性あるビジネス戦略を持たない企業からの投資撤退を積極的に進めるべきです」とコメントしました。

石炭への引受業務では中国の金融機関がトップ10を占め、その後にみずほFGが続きました。
石炭開発企業への引受業務は、大部分が中国工商銀行(ICBC)や、中国平安保険グループ、CITIC、中国銀行(バンク・オブ・チャイナ)など、中国の金融機関によって行われています。これら4つの金融機関だけで、2017年から2019年の間に1100億米ドルもの引受業務を行っています。石炭関連企業への引受業務においては、中国の金融機関がトップ10全てを占め、11位にみずほFGがランクインしました。日本に加え、中国が石炭開発に与える並外れた影響は否定できず、また、中国の一帯一路政策が途上国でのさらなる石炭開発加速に深刻な影響を与えることが懸念されます。

COP25で高まる日本の石炭推進に対する批判
気候ネットワーク理事の平田仁子は、「今回のUrgewaldの調査報告書で、 日本が石炭火力発電所の新設および海外への石炭火力発電事業に巨額の支援を継続していることが改めて明らかになっています。日本に対する批判が高まる中、COP開幕早々の12月3日に梶山経済産業大臣が『石炭火力発電所は選択肢として残していきたい』と述べるなど、日本政府が気候変動の緊急性に対応せず、米国のように民間銀行・企業が率先して脱石炭に舵を切ることをしなければ、国際社会での競争力は早々に失われるでしょう」とコメントしました。

注釈

  1. https://www.iea.org/geco/emissions/
  2. https://world.350.org/ja/press-release/190828-eng/
  3. http://www.nocoaljapan.org/bribery-case-and-japanese-mega-bank-loans/ (英語)
    http://www.nocoaljapan.org/ja/bribery-case-and-japanese-mega-bank-loans/ (日本語)
  4. http://fairfinance.jp (日本語)
  5. http://www.foejapan.org/en/aid/jbic02/vp/190426.html (英語)
    http://www.foejapan.org/aid/jbic02/vp/190426.html (日本語)
  6. https://350.org/press-release/350-launches-petition-urging-japanese-banks-to-rule-out-funding-vung-ang-2-coal-fired-power-plant/ (英語)
    https://world.350.org/ja/press-release/191101/(日本語)

本件に関する問い合わせ先

国際環境NGO350.org:古野真  メール:shin@350.org 電話: +81(0)70-2793-3648
気候ネットワーク:平田仁子 メール:khirata@kikonet.org 電話:+81-90-8430-7453

PDF

プレスリリース(表含む):日本の金融機関・投資家が石炭投融資リストのトップを独占 - COP25で判明(PDF)
Banks and Investors Against Future: NGO Research Reveals Top Financiers of New Coal Power Development(英語PDF)