【緊急声明】
韓国政府系機関の調査でブンアン2石炭火力発電事業はマイナス収益と判明
~損失が明らかな事業の推進には日本企業・銀行への訴訟リスクも~

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
国際環境 NGO FoE Japan
メコン・ウォッチ
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国際環境NGO 350.org Japan

日本の官民が連携して推進中のベトナム・ブンアン2石炭火力発電事業(ブンアン2)について、韓国政府系機関による予備妥当性評価が行われた結果、事業が1億5,800万ドル(約170億円)の損失になると評価されていたことが判明しました*1 。事業の収益性指標は0.96で、投資実行の判断ライン(>1)を割り込んでいます。この結果を受け、私たち環境NGOは、日本の関係者に対して改めて事業中止を求めます。

ブンアン2の現在の出資者は、三菱商事(40%)、中国電力(20%)、香港の電力会社CLP(40%)となっていますが、CLPは昨年末、脱炭素方針を掲げ事業からの撤退を表明しました。そのCLP分の株取得の検討を韓国電力公社(KEPCO)が三菱商事からの提案を受けて行っています。

韓国では、公的機関が行う投資事業について事業費が500億ウォンを超える場合、予備妥当性評価を行い、事業を推進すべきかの判断を経なければならないことになっています。公的機関の一つであるKEPCOが参入を検討しているブンアン2についても、政府系シンクタンク韓国開発研究院(KDI)による予備妥当性評価が行われました。

その結果、KEPCOが関与することになる事業期間中(2020年~2048年)*2 に発生する支出と収益の現在価値を比較した場合、KEPCOの損失分は7,900万ドル(958億ウォン)、つまり日本円にして約86億円になることが判明しました*3 。KDIはこの結果をすでに3月に出していましたが、昨日、韓国国会議員による一部資料の公開により公になったものです。

KDIは「KEPCOが提示した事業費は詳細項目が提示されておらず、まだ事業全体のデューデリジェンスを実行していない状況」としていることが報じられており*4 、実際のところ、さらなる費用が加わってくる可能性もあることが示唆されています。

再生可能エネルギーのコストは年々安くなり、石炭火力発電所の収益が下がることも予想されます。示されたマイナス収益の幅は、今後、拡大することはあっても縮小することはありません。

同事業には三菱商事や中国電力が出資し、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行、三井住友信託銀行による融資が想定されていますが、このような分析が明らかであるにもかかわらず事業を進めた場合、経営陣は株主代表訴訟を受ける可能性があります。また、日本政府の政策金融機関である国際協力銀行(JBIC)、日本貿易保険(NEXI)が融資・付保を現在検討中ですが、損失が予測される事業に公的支援を行なうべきではありません。ベトナムは太陽光・風力・洋上風力などの再生可能エネルギーのポテンシャルが非常に高い国です。事業予定地の近隣でも、多数の再生可能エネルギー事業が実施・計画されています。日本の官民も、ブンアン2からは撤退し、ベトナムの脱炭素を後押しすべきです。

脚注

  1. The Korea Times 2020年6月11日
    KEPCO Vietnam investment 'feasible' despite expected losses (リンク英語
  2. 注1参照
  3. asiatoday 2020年6月11日 キム・ソンファン議員「韓電、収益性ない海外石炭事業 撤回せねば」(リンク韓国語
  4. 京郷新聞 2020年6月11日 KDI 「韓電のベトナムの石炭火力事業、マイナスの収益予想」(リンク韓国語

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