<プレスリリース>

IPCC第6次評価報告書(AR6)第1作業部会報告書を受け、
エネルギー基本計画と地球温暖化対策計画の抜本的見直しが必要

2021年8月11日
NPO法人 気候ネットワーク
代表 浅岡美恵

 8月9日、IPCC第54回総会及び同パネルWG1第14回会合において、第6次評価報告書(AR6)第1作業部会(WG1)報告書が受諾された。AR5以来8年ぶりの改定である。

 今夏、日本でも熱波や豪雨災害が多発しているが、ドイツや中国の大洪水、カナダの熱波、ギリシャやトルコの山火事など甚大な気候災害が相次いでいる。今回の報告書は、「人為的な影響が温暖化の原因になっていることに疑う余地はない」と地球温暖化が人間活動によることを断定した。地球の平均気温1.5℃の上昇でも50年に一度の熱波の発生頻度が現状の約2倍になるなど影響が激甚化し、1.5℃の上昇に抑えるための残余のカーボンバジェット(炭素予算)は4000億tに過ぎず、最も低い排出シナリオでも、2040年までに1.5℃上昇する可能性があるとしたもので、あらためて私たちに気候危機の厳しい現実と早期の排出削減の必要性を突きつけた。日本も1.5℃目標の達成に向けて2050年脱炭素を宣言したところである。AR6の報告を受け、直ちにエネルギーシステムや産業構造の転換に取り組み、現在改定作業が進められているエネルギー基本計画や地球温暖化対策計画(温対計画)に反映しなければならない。

 しかし、政府が現在検討している両計画案における2030年の削減目標は2013年度比46%削減にとどまり、1.5℃の削減経路から大きくかけ離れている。8月4日に示された第六次エネルギー基本計画の素案2は、2030年の需要減を殆ど見込まず、その電源構成は実現可能性の極めて乏しいものである。原発を20~22%としたうえ、石炭を19%などとする長期エネルギー需給見通しの下、脱石炭に言及しないばかりか、再生可能エネルギーの引き上げは2030年に36~38%にとどまり、電力システム改革の意欲も乏しい。S+3Eを大前提とし、原発、石炭をベースロード電源とする現行のエネルギー基本計画の枠組みをほぼ踏襲し、現状で確立していない水素・アンモニア、CCUSなどを並べて「火力の脱炭素化」の名の下に、2050年までも火力発電を継続しようとするものである。

 温対計画案の対策は、GHGの85%を占めるエネルギー起源の二酸化炭素を2013年度比約45%削減することを目指すとしながらも、その中身はエネルギー基本計画案に委ね、建築物対策を除けばこれまでの業界の自主的取組みの継続であり、カーボンプライシングも「検討」「議論」から脱却できていない。電熱配分後の部門別割振りでも産業部門に甘く、民生・家庭部門の積み上げを大きく見積もるというこれまでの構造と何ら変わっていない。代替フロン等4ガスの削減を具体策のないまま過大に見積もり、吸収源を過大に積み上げ、大きくカーボンオフセット・クレジットでの目標達成を見込むなど、実効性に課題を残し、50%の高みを目指すものとなっていない。

 AR6に示されたように、2030年半減、2050年脱炭素は不可避である。それは、日本の持続可能な発展・産業競争力の再構築にも不可欠である。パリ協定のもと、1.5℃目標と整合するエネルギー・地球温暖化対策計画に向けて、エネルギー政策を抜本的に転換すべきである。まず、2030年までに石炭火力から脱却し、再エネ主力電源化に本気で取り組むべきである。

参考:

第六次エネルギー基本計画原案は見直しを~パリ協定の目標達成に乖離するエネルギーミックス案~(2021/7/21)
https://www.kikonet.org/info/press-release/2021-07-21/basic-energy-plan-draft

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【プレスリリース】IPCC第6次評価報告書(AR6)第1作業部会報告書を受け、エネルギー基本計画と地球温暖化対策計画の抜本的見直しが必要(2021年8月11日)