【声明】

「第6次エネルギー基本計画」「地球温暖化対策計画」など閣議決定
化石燃料と原子力から脱却できない気候・エネルギー政策

認定NPO法人 気候ネットワーク
代表 浅岡 美恵

 本日10月22日、「第6次エネルギー基本計画」、「地球温暖化対策計画」、「日本のNDC(国が決定する貢献)」、「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」など気候変動・エネルギー政策に関連する一連の計画が閣議決定された。異常気象が世界中で災害をもたらし、気候危機が身近に迫りつつある今、これらの計画で日本の気候変動エネルギー政策を抜本的に見直すことが求められていたが、9月に示された政府案に対するパブコメの結果とその反映が示されないままほぼ原案どおり決定されたものである。気候変動を「人類の危機」としてとらえておらず、産業革命前からの地球平均気温の上昇を1.5℃未満に抑える努力が急務であることや、パリ協定との整合性や1.5℃を目指すことも全く位置付けてられていない。さらに、化石燃料、とりわけ石炭火力及び原発を2050年にも維持し続けるとするもので、到底、容認しがたい。

◆実用化の目途が立たない技術革新に依存した原発・石炭温存のエネ政策
今回改定された第6次エネルギー基本計画は、2050年のカーボンニュートラルを目指すとしながらも、これまでのエネルギー基本計画の方向性及び内容を踏襲し、将来世代に大きなつけを回すものとなった。2030年度の電源構成では、再エネ36~38%程度と低く、2050年における主力電源として最優先の原則のもと最大限の導入に取り組むとするものの、2030年の導入拡大に向けて、従来の先着優先ルールを残したままであり、その優先接続・優先給電を確保する方策は確保されていない。石炭19%、原子力20~22%と原案が維持された。石炭火力は、科学が要請する気候危機への対応として遅くとも2030年の全廃が求められているにもかかわらず、非効率石炭火力に容量市場をあてがい、既存・新設石炭火力設備を脱炭素型に置き換えるために、アンモニア・水素を脱炭素燃料と位置付け、排出削減とは言い難いそのいくばくかの混焼等を「火力発電からCO2排出を削減する措置(アベイトメント措置)」としてエネルギー基本計画に書き込み、これを促進するとしている。石炭火力からの脱却の方向性すら示さされていないだけでなく、技術的経済的課題を多く抱えるアンモニア等の混焼等を掲げることで、なお石炭火力の建設を進め、維持・利用し続けようとするものである。途上国への石炭火力輸出支援においても、「排出削減対策が講じられている」として、同様の推進を図ることがありうる記述もある。COP26を前に、日本は脱石炭を推進する世界の流れに真っ向から逆行すると宣言するに等しい。実現可能性のない原子力の位置付けもあいまって再生可能エネルギーへのシフトを一層、阻害し、脱炭素社会の実現を困難にさせる計画だと言わざるを得ない。これでは、脱炭素経済に向けて加速する世界の趨勢にますます取り残されることになるであろう。

◆気候危機を憂う市民の声に耳を傾け、脱炭素への取り組みを
今回のエネルギー基本計画改定にあたっては、若者や環境団体など、気候危機や原子力リスクを憂う多くの市民たちが約1年に渡って声を上げ続け、原発ゼロ、石炭ゼロで気候危機に対応するエネルギー政策の転換を求めてきた。
市民から届いた意見は数千件にのぼると言われるが、その意見が反映されることなく、先行して閣議決定されたことは極めて問題である。一部の既得権者だけの声を取り入れた政策決定プロセスではなく、国民への十分な情報開示と討議を経て国民が参加した民主的なプロセスによって、エネルギー政策を決定すべきである。

参考

第6次エネルギー基本計画
https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/
地球温暖化対策推進本部(第48回)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/ondanka/kaisai/dai48/gijisidai.html

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【声明】「第6次エネルギー基本計画」「地球温暖化対策計画」など閣議決定 化石燃料と原子力から脱却できない気候・エネルギー政策(2021年10月22日)

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