「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
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メコン・ウォッチ

ベトナム・ブンアン2石炭火力発電事業(※1)について、以前より関与が報道されていた中国電力および四国電力が12月24日にプレスリリース(※2,3)を出し、同事業への参画を公表しました。気候変動を加速させ、地元にさらなる公害をもたらしうるなど、多岐にわたる問題を抱える同事業から両社は撤退すべきです。

気候危機が深刻になる中、発電時の温室効果ガス排出がもっとも大きい石炭火力からの、早急な脱却が求められています。いま世界は、先進国による国内での脱石炭の加速だけでなく、途上国を含む各国での脱石炭、そして途上国のエネルギー転換を支援していく必要性があります。日本の官民による、ブンアン2への支援は気候変動対策とまったく逆行するものです。

また、ブンアン2は、経済合理性のない事業であることが、韓国政府系機関KDIの事前評価で判明しています。再生可能エネルギーのコストがすでに安価になっているベトナムで、この事業を続けることの合理性がないことを、両社は認識すべきです。安価でクリーンな再エネという選択肢をベトナムの人びとから奪い、コストを押し付けることはあってはならないことです。

ベトナム政府は国連気候変動枠組条約第26回締約国会合(COP26)においてスピーチを行い、温室効果ガスの排出を2050年までにネットゼロにすると宣言しました。また、Global Coal to Clean Power Transition Statement にも署名しています。国として、石炭火力から脱却することを掲げたのです。このベトナムにおいて、これから約4年間かけて建設を進め、25年間もの長期にわたり稼働を予定するようなブンアン2を進めることは、この脱却の妨げとなることに他なりません。

中国電力と四国電力は、石炭火力発電が売上または発電量の30%以上を占める企業として、ノルウェー年金基金の運用ポートフォリオから除外(※4)されています。また、中国電力は石炭火力の発電容量が2890MWであるとして「脱石炭リスト(Global Coal Exit List: GCEL)」に掲載(※5)されており、幅広い投資家からダイベストメントの対象とされています。脱石炭の流れに反して石炭火力発電の持ち分容量を拡大することは、両社にとって国際的な評価を下げるだけでなく、座礁資産リスクをさらに高め、企業価値を棄損させることになります。

中国電力と四国電力は、ブンアン2が引き起こす環境・人権・経済など、様々な問題と向き合い、事業から撤退すべきです。電力会社として進むべき道は、石炭火力ではありません。

脚注
  1. ブンアン2への出資参画は、十数年前から同事業を推進してきた三菱商事が25%、香港の電力会社CLPが脱石炭を掲げて撤退したのち2020年に参画を決めた韓国電力公社(KEPCO)が40%、中国電力が20%、四国電力が15%。
  2. 中国電力「ベトナム社会主義共和国 ブンアン2火力発電事業について~本格工事に伴う現地事務所の体制整備~」
    https://www.energia.co.jp/press/2021/13605.html
  3. 四国電力「ベトナム国ブンアン2石炭火力発電事業への参画について」
    https://www.yonden.co.jp/press/2021/__icsFiles/afieldfile/2021/12/24/pr011.pdf
  4. https://www.nbim.no/en/the-fund/responsible-investment/exclusion-of-companies/
  5. https://sekitan.jp/jbic/2021/11/05/5204

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