プレスリリース

旧式石炭火力の延命策「GENESIS松島計画」配慮書について

~環境大臣は「是認できない」と意見表明をするべき~

2021年12月9日
特定非営利活動法人気候ネットワーク
代表 浅岡美恵

2021年9月29日、電源開発株式会社は、GENESIS松島計画の環境影響評価手続を開始した。現在、計画段階配慮手続が進行中であり、間もなく環境大臣が環境保全の見地から意見を述べる予定である。

本計画は、稼働から40年が経過した電源開発・松島火力発電所2号機(50万kW→40万kW)に付加するガス化設備に対する環境影響評価であり、カーボンニュートラル宣言、2030年の温室効果ガス削減目標の引き上げ及びグラスゴー気候合意の採択後、初めて出される環境大臣意見となる。国内における石炭火力問題にどのように対処するのか注目されるが、過去の環境大臣意見を踏まえると、GENESIS松島計画に対しては、環境保全の見地から「是認できない」と意見表明するべきである。その理由を以下に述べる。

(1)西沖の山発電所(仮称)新設計画に係る計画段階環境配慮書に対する環境大臣意見時と状況が酷似

2015年、当時の環境大臣は、西沖の山発電所(仮称)(総出力120万kW)の建設計画について、①国の目標・計画との整合性を図るための電力業界全体の「枠組」が未構築であること、②「枠組」構築までの環境保全措置(天然ガス火力超過分に相当する純増分二酸化炭素に係る自主的取組)がされていないことをあげ、計画に対して「是認しがたい」との意見を表明した。その後、パリ協定や国の削減目標との整合性について適正な調査、予測、評価されないまま、多数の石炭火力発電所を容認してきた。このことが今、世界から厳しく批判されているところである。国の削減目標を引き上げ、COP26における1.5℃目標の追求と、そのために排出削減対策がとられていない石炭火力発電所の段階的削減の合意に基づき、これらとの整合性について、既設及び建設中の石炭火力発電所からの排出量を含めて、根本的に検討されなければならない。ここに排出削減対策が取られている石炭火力発電所とは、CCSを付帯した発電所であることは、既に指摘してきたとおりである。

(2)電力業界の自主的枠組み、非効率石炭火力フェードアウト施策は現行削減目標と不整合

日本政府は、2020年10月に2050年までの「カーボンニュートラル宣言」をし、2021年4月には、2013年度比26%削減であった2030年目標を46%削減、さらに50%の高みに向けて挑戦すると引き上げた。2021年10月には、エネルギー基本計画が改定され2030年度の電源構成が示された。石炭火力の割合は26%から19%に下方修正されたが、それらと整合する電力業界の自主的枠組みの構築は行われていない。それだけでなく、パリ協定が発効し、さらに、COP26で1.5℃目標の追求と石炭火力発電所に関するグラスゴー気候合意の採択された今日、2013年の石炭火力発電所の環境影響評価における二酸化炭素の取り扱いに関する局長級会議とりまとめや2016年の大臣合意は、およそ正当性を失ったというべきである。西沖の山の計画に対する環境大臣意見に増して、GENESIS松島計画に対する計画段階環境配慮書に対する環境大臣意見は「是認できない」となるはずである。

(3)水素・アンモニア混焼による石炭火力の延命策である

本事業は、現時点で全く見込みが立っていない“カーボンフリー燃料の導入、CCUS/カーボンリサイクルの導入”といった構想を口実に、非効率石炭火力発電所を温存させようとするものである。グラスゴー気候合意の採択された今、このような計画は直ちに撤回すべきである。

以上のことから、GENESIS松島計画に対する環境大臣意見は、「是認できない」とし、石炭火力発電事業者に対して、石炭火力の早期廃止に向けた実効的な施策の構築を急ぐよう要請すべきである。

 

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【プレスリリース】旧式石炭火力の延命策「GENESIS松島計画」配慮書について ~環境大臣は「是認できない」と意見表明をするべき~(2021/12/9)

 

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