【共同声明】
日本の金融機関初、SOMPOが「石炭関連企業」への保険引受・投融資を一定条件下で停止する方針を発表

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
気候ネットワーク
国際環境NGO FoE Japan
国際環境NGO 350.org Japan
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6月28日、日本の大手損害保険会社の1つであるSOMPOホールディングス株式会社(以下、SOMPO)は、「ESGに関する保険引受・投融資等に関する方針(※1)」を発表し、2025年1月までに温室効果ガス(GHG)削減計画の策定がない「石炭事業を主業にする企業」等の保険引受および投融資の停止を発表しました。気候変動の観点から保険引受および投融資対象を企業単位で制限する方針を掲げたのは、日本の金融機関として初であり(事業単位では各社が停止表明済)、私たちはSOMPOの日本における先駆的な取り組みを歓迎するとともに、他の大手金融機関に対しても、同水準以上の方針を早急に策定するよう要請します。

しかし、今回SOMPOが発表した新しい方針では、「石炭事業を主業とする企業」等に求められているGHG削減計画の内容について、特に要件が設定されておらず、大きな課題を残したままです。対象企業に対してScience Based Targets(SBT)に準拠した移行計画を掲げること等、パリ協定の長期目標と整合的な移行計画を求める必要があります。

また、SOMPOは「石炭事業を主業にする企業」について、「収入の30%以上を石炭火力、一般炭鉱山、オイルサンドの採掘から得ている企業、または30%以上のエネルギーを石炭で発電している企業」と定義しました。しかし、ドイツの環境NGOウルゲバルトは、30%のしきい値では実際に石炭事業を拡大している企業の半数程度しかカバーしないため、石炭事業に関与する企業のデータベース『Global Coal Exit List(GCEL)』の対象企業になるしきい値を30%から20%に厳格化しています(※2)。同団体の同データベースは、国際金融公社(IFC)をはじめ多数の金融機関が石炭関連企業のスクリーニング時に参照していますが、SOMPOも同データベースを参照するのであれば、しきい値を20%に設定するべきです。

さらに、1)パリ協定の目標達成に整合しない可能性の高いアンモニア混焼等の革新的技術を用いる石炭火力発電所についても将来的に保険を引き受ける余地を残していること、2)オイルサンドや北極野生生物国家保護区以外の石油・ガス事業についての停止方針がないこと、3)石炭事業の既存契約に関するフェーズアウト目標がないこと、4)引受ポートフォリオ排出量の中期目標がないこと、については引き続き課題となっています。詳細は5月27日付のNGO共同声明(※3)で述べている通りです。

上記の方針改訂に加えて、本日、SOMPOは、Net-Zero Insurance Alliance(NZIA)への加盟についても発表しました。国連が支援する気候変動対策キャンペーン「Race to Zero」が新しく発表した基準(※4)によると、企業や投資家は、排出削減対策が講じられていない全ての化石燃料事業を段階的削減あるいは撤廃する必要があり、この基準は6月15日以降にNZIAなどのパートナーイニシアチブに加盟した金融機関には即時適用されます。現時点において化石燃料事業の保険引受・投融資の段階的削減・撤退を表明していないSOMPOは、「Race to Zero」の新基準に整合していません。

したがって、SOMPOに対して、化石燃料への保険引受および投融資に関する、今後のより一層の方針強化を求めます。また、東京海上とMS&ADなど他の大手金融機関に対しても、同様の方針・目標を策定するよう強く求めます。

脚注
  1. https://www.sompo-hd.com/-/media/hd/files/news/2022/20220628_1.pdf?la=ja-JP
  2. https://www.coalexit.org/methodology
  3. http://jacses.org/1738/
  4. https://climatechampions.unfccc.int/criteria-consultation-3-0/

本件に関する問い合わせ先:

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、田辺有輝、tanabe@jacses.org