2022年7月8日

東京都の太陽光発電設備の設置義務化条例に対する推定対象ハウスメーカー意向調査報告

 国際環境NGO グリーンピース・ジャパン、FoE Japan、気候ネットワークの3団体は、東京都が「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(環境確保条例)」の改正により検討している、都内のハウスメーカーへの太陽光発電設備の設置義務化に対する見解を尋ねるため、設置義務が課されると見込まれるハウスメーカーなど50事業者にアンケートを行いました。その結果、気候変動対策としては概ね肯定的な意見が寄せられる一方、施主と事業者双方がより納得できる十分な説明や負担緩和等を望む声があることがわかりました。住宅への太陽光パネル設置義務化は全国に先駆けるものです。全国に広げていくためにも、こうした声を反映させ、確実に実現させる必要があると考えます。

【調査の背景】

 記録的な猛暑や台風の頻発化等、気候変動による脅威がより身近になる中、東京都は「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(環境確保条例)」の改正により、さらなるエネルギー効率の向上と再生可能エネルギーの利用拡大を推進しようとしています。

 都の省エネ、再エネ政策はこれまで、主に大規模建物が対象となっていましたが、2030年カーボンハーフ(2030年までの二酸化炭素排出半減)の達成に向け、棟数ベースで 95%以上を占める 2,000 m2未満の中小の新築建物への対策強化も今後ますます重要となります。中でも屋根置き太陽光パネルなどの発電設備はポテンシャルが高く、新築の機会を捉えた設置誘導が重要視されています。

 こうした文脈から、条例改正に向けて都知事の附属機関である東京都環境審議会による中間とりまとめが公表されました。それによると改正案では、都内で戸建住宅などを一定規模以上新築しているハウスメーカーなど(※)に対し、住宅などの中小新築建物(延床面積2,000m2未満)への太陽光発電設備の設置を総量単位で義務付ける内容が新たに盛り込まれる見込みです。

(※)都内に供給する中小規模の新築建物(1棟の延床面積が 2,000 m2未満)の総延床面積が年間2万m2以上の事業者

【アンケート内容】

 制度の対象となるハウスメーカーなどにとっては、劇的な事業環境の変化が予想され、改正条例案に対して各方面から賛否の議論が活発化しています。そこで、国際環境NGO グリーンピース・ジャパン、FoE Japan、気候ネットワークの3団体は、対象となることが見込まれる50社を対象に、グーグルフォームなどによるアンケートを通じ、以下の項目を尋ねました。

  • 今回の条例改正で追加される一定規模以上のハウスメーカーへの新築に対する太陽光発電設置義務についてどのようにお考えですか。もっとも近いものをお選びください。:

      (賛成/条件付き賛成/反対から選択)

  • 上記のように回答した理由を教えてください。

      (自由記述)

【アンケートの方法】

種別:オンラインアンケート

期間:2022年6月20日~7月6日

実施団体:国際環境NGO グリーンピース・ジャパン、FoE Japanジャパン、気候ネットワーク

対象:ハウスメーカー等50社(都内に供給する中小規模の新築建物(1棟の延床面積が 2,000 m2未満)の総延床面積が年間2万m2以上の事業者を推定し抽出)(注1)

【調査結果】(7月6日時点)

アンケート回答率:22%(11/50)

  グーグルフォームで回答:8社

  グーグルフォーム以外(メール、電話)での回答:3社

  回答なし:39社

賛否回答比率と内訳

 賛成37.5%(賛成:1社、条件付き賛成:5社) 

 反対25%(4社)

 賛否不表明6%(1社)

賛否の理由などは以下の通りです(社名の公表に同意いただいた社については社名とともに掲載)。

賛成(1社)

  • まだまだ課題は多いと思っているが、基本的には賛成。脱炭素へ向けた行政主導の取り組みとして都がリーダーシップをとるのは自然な時流と考える。(大東建託株式会社)

条件付き賛成(5社)

  • 都としても建築主等の理解が得られるような十分な説明と、太陽光設置に係る諸手続き負担軽減などの十分なサポートを望む。(積水ハウス株式会社)
  • 現在、世界が直面している気候危機は国や行政だけで解決できるものではなく、2050年カーボンニュートラル、2030年カーボンハーフに向け、企業もそして市民社会も一緒になって取り組むべき地球環境問題の中でも最重要課題であると認識している。再生可能エネルギーとしての太陽光発電活用の重要性は論を待たないが、一方で太陽光発電の設置は、建築コスト増加につながる。「アフォーダブル住宅」の重要性の観点からも、住宅取得の過度の負担増とならない財政措置に期待。
  • 都内狭小住宅において、高度斜線制限が厳しいことにより、南向きの屋根面がほぼ無いような物件も多く存在し、それに対して太陽光パネルを設置したとしても発電など期待出来ない物件が多々出てくると思うため。
  • できるエリアとできないエリアがあったり、顧客のニーズと乖離があったりする場合がある。また、法規制の緩和や支援の拡充も必要。
  • 都民に対し事前の周知説明が必要であり時期尚早である。義務化の対象を住宅事業者とするのであれば、全ての事業者が等しく義務を負う公平な制度とすべきである。十分な補助金とセットで行うべきである。

反対(4社)

  • 住宅の価格上昇を招くほか、点検・メンテナンス義務が発生し、都民の負担となる。また、建物の耐震性について議論がなされず安全性が担保されないまま実行することには反対せざるを得ない。住宅購入を検討する人が納得できる説明や補助金制度が必要と考える。
  • 環境改善の方法は多様であるべき。太陽光の設置自体は推奨しているが、義務化の対象について疑問符。
  • 太陽光パネル設置を標準として建築してきていないので、義務化になると事業計画に載っていない経費や人件費の増加が生じる。ただでさえ原価が上昇している中、太陽光パネルの設置は事業者としての負担をさらに増大させる。環境的には良いものの、電気代が高騰しており、住民が自己消費の形で4~5kW程度設置していくのがベストだと思うが、義務化はよくないと思う。居住者と事業者側双方にとって適切な補助金制度を検討してほしい。
  • 投資用のアパートが主力商品のハウスメーカーとしてはメリットが感じられない

賛否不表明(1社)

  • カーボンニュートラルを推進する取り組みは非常に重要と考えるが、個別の自治体の取り組みについてコメントできない。

*(注1) 回答を依頼した都内に供給する中小規模の新築建物(1棟の延床面積が 2,000 m2未満)の総延床面積が年間2万m2以上の事業者と推定される事業者50社リスト(あいうえお順:調査実施主体による推定であり、かならずしも対象事業者とは限らない)

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