<プレスリリース>

GX実行会議の原発石炭回帰の方針に断固反対
気候変動対策に逆行、国費の浪費、経済衰退への道を進むべきではない

2022年12月23日
特定非営利活動法人気候ネットワーク
代表 浅岡美恵

 

昨日12月22日、岸田政権はグリーン・トランスフォーメーション(GX)実行会議において「GX実現に向けた基本方針~今後10年を見据えたロードマップ~(GX基本方針)」をまとめた。気候危機が深刻化するとともに、ロシアのウクライナ侵攻などによる世界的なエネルギー危機のなか、世界は安全保障の観点からもロシアへの化石燃料依存から再生可能エネルギーへの転換を加速させている。化石燃料やウランを海外に依存している日本も、省エネや再エネの拡大普及に向けた本来の「グリーンイノベーション」が求められている。しかし、岸田政権が経済産業省主導で進めてきた政策方針を追認する形でまとめたGX基本方針は、原発や石炭依存から抜け出せないばかりか、150兆円の官民投融資を財源に、より依存を深める内容である。とうてい容認できない。以下の点から断固反対する。

1.原発60年超の稼働と新規建設を含むさらなる原発推進

原子力をカーボンニュートラルに貢献する電源として位置づけ、原発再稼働の加速、運転期間の根拠なき延長、「新型革新炉」の開発に方針転換し、「第6次エネルギー基本計画」をも踏み越えた政策を打ち出した。

2011年3月11日の東京電力福島第一原子力発電所の事故により受けた甚大な被害や事故後の処理はいまだに解決のめどすら立たず、被災者への賠償はおざなりにされ、汚染水や廃棄物対策など事故対応も混迷し、巨額の負担もさらに膨れ上がっている。原子力発電の過酷事故を引き起こした責任を果たすことなく、原発回帰に走ることは許されない。

また、原子力発電はこれまでもしばしばトラブルなどで稼働停止してきた。そのバックアップとして火力発電所の廃止を遅らせ、また、休停止している石油・石炭火力発電所を再稼働させ、さらに天然ガス火力を新設しようとしている。結局、CO2の大規模排出につながるもので、脱炭素に貢献しない。新型炉の開発は、この10年の排出削減が決定的に重要とされている気候危機への対応におよそ間に合わず、気候危機は原発推進の口実に過ぎない。

2.石炭延命となるアンモニア・CCSへの巨額支援

GXの中心は「脱炭素電源」や「ゼロエミッション火力」と称する水素やアンモニアの火力発電所での混焼やCCSの加速、経済的支援である。アンモニアは燃焼時にはCO2を排出しないが、製造時に大量のCO2を排出する。輸送時のCO2排出も小さくない。政府は2030年には石炭火力へのアンモニア20%混焼を目指すとするが、対象は既存・計画中の石炭火力の一部に過ぎず、アンモニアの製造から燃焼までのライフサイクル全体でのCO2排出量は、現在の石炭専焼とほとんど変わらない。石炭火力は天然ガスの約2倍のCO2排出があり、早期のフェーズアウトが求められているとき、アンモニアへの過大な期待が脱石炭を遅らせ、CO2削減対策がとられていない石炭火力を今後も数十年に渡って稼働させ続けようというものである。

また、CCSについては、2030年中の事業開始を目指すとしているが、そもそも、このタイムスケジュールは1.5℃目標とおよそ整合しない。さらにCCS事業のコストは非常に高く、適地が乏しい日本では今後も低減要素がないばかりか、長期貯留におけるCO2の漏洩リスクも懸念されている。海外でもコストの高さから、石炭火力に設置することを予定した多くのCCS事業が撤退している。CCSは他に排出削減の代替対策のない限られた分野で、どうしても排出されてしまうCO2を処分する最後の手段であり、再生可能エネルギーなどの代替策がある電力分野において利用すべき対策ではない。

3.原発・石炭推進の既得権益関係者による国民不在の政策決定プロセス

今回のGX基本方針は、国民不在のもと、経済産業省主導で既存の原子力や石炭火力に関わる既得権益企業などあからさまな官民癒着構造のもとで大企業の排出削減に実効性がない事業に資金が流れる仕組みを短期間につくりあげたもので、政府の暴走でしかない。

GX基本方針には気候変動の影響を最も受ける若者をはじめとする市民の意見は全く反映されていない。エネルギー政策は今後の国の進む方向性を規定するもので、国民的熟議と協力が不可欠である。今回の決定は日本の経済社会に大きな禍根を残すものであり、これを白紙に戻し、市民に情報が共有され、市民に開かれた議論の場で熟議を重ね、原発やエネルギー多消費産業に依存した地域や労働者の公正な移行の計画も含め、気候変動対策となるCO2の排出削減とエネルギー安全保障・エネルギー自立へと、方向を転換した内容に再構築すべきである。

 

プレスリリース(PDF)

【プレスリリース】GX実行会議の原発石炭回帰の方針に断固反対 気候変動対策に逆行、国費の浪費、経済衰退への道を進むべきではない(2022年12月23日)

 

参考)GX実行会議(第5回)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/GX_jikkou_kaigi/dai5/index.html

 

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