<プレスリリース>

新聞意見広告を掲載
―GXは気候変動対策に逆行している―

2022年12月23日
特定非営利活動法人気候ネットワーク
代表 淺岡 美恵

 

この度、政府が決定したGX基本方針で示されたアンモニア・CCSの問題に対して、12月24日の中日新聞・東京新聞の朝刊および、12月25日の朝日新聞の朝刊に意見広告を掲載するはこびとなりました。この意見広告は、気候ネットワークが運営する「Japan Beyond Coal(JBC)」キャンペーンの一環として行うものです。

先進国の多くはこれまで、パリ協定のもと、世界の平均気温の上昇を1.5℃に抑えるために、2050年のカーボンニュートラルはもとより、2030年までに排出を少なくとも半減させ、石炭火力発電所を全廃すると宣言しています。日本は、2050年カーボンニュートラルを宣言してはいますが、石炭火力の段階的廃止の時期も、また、その方向性すら明言していません。昨日(12月22日)、GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議で示された「GX実現に向けた基本方針~今後の10年間を見据えたロードマップ~」は、高コストで排出削減にならないアンモニア混焼による石炭火力の温存のための多額の資金を供与するなど、気候変動対策に逆行するものです。さらに、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格高騰を口実に、福島原発事故の教訓からの原子力依存低減との方針も転換するものです。今回のこうした基本方針は、一部の既得権益関係者によって短期間に、国民不在のもとで進められてきました。その決定プロセスにも重大な問題があります。

現在、日本では169基もの石炭火力発電所が稼働しています。にもかかわらず、今も、石炭火力の新設工事が続いています。アンモニアはその製造から輸送、利用までのライフサイクル全体で、石炭を燃焼させるのと変わらないCO2を排出します。このようなアンモニアを石炭火力と混焼してもCO2の排出削減には殆どならず、多大の追加的費用を必要とし、結局はこれらの負担が電力料金に転嫁されることになります。また、GXでは削減しきれないCO2は回収・貯留(CCS)するとしていますが、CCSには技術的・地政学的・コスト的に多くの問題があり、貯留量の限界や大気漏洩のリスクもあります。「アンモニアは燃焼時にCO2を排出しない」といった詭弁を弄してアンモニア混焼やCCSに多大の公的資金を供与するGXは、石炭火力の延命を図るもので、パリ協定が求める気候変動対策に逆行するものです。

世界は今、パリ協定とグラスゴー気候合意のもと、地球の平均気温の上昇を産業革命前から1.5℃に抑えることを目指しています。そのためには、CO2などの排出を2050年に実質ゼロにするだけでなく、2030年までに半減させなければなりません。残余のカーボンバジェットは限られており、残された時間はわずかです。排出削減効果の乏しい不確実な技術に時間や資金を費やしている余裕はありません。経済合理性の観点からも、気候危機の回避とエネルギー安全保障のために世界が進めているように、日本も早期に石炭火力をフェーズアウトし、再生可能エネルギーに転換しなければなりません。

1.5℃の約束は、今を生きる私たちから未来世代への約束でもあります。2022年を締めくくり、新しい年を迎えるこのタイミングは、多くの人が大切な誰かの幸福を願うシーズンです。未来世代に持続可能な社会を残すために、多くの人たちに私たちのエネルギーの在り方、国家予算の使い方、政府が進める方針の問題を一緒に考えていただけたらと、今回の意見広告を発表しました。

まやかしの「脱炭素火力」に対してではなく、暮らしを快適にする省エネ技術や、自然環境や地域と共生する再エネへの投資の拡大に貴重な予算を振り向けることが、今こそ求められています。

 

プレスリリース(PDF)

【プレスリリース】新聞意見広告を掲載 ―GXは気候変動対策に逆行している―(2022年12月23日)

お問い合わせ

特定非営利活動法人 気候ネットワーク(https://www.kikonet.org)

【東京事務所】〒102-0093 東京都千代田区平河町2丁目12番2号 藤森ビル6B
TEL: 03-3263-9210、FAX:03-3263-9463、E-mail:tokyo@kikonet.org

【京都事務所】〒604-8124 京都府京都市中京区帯屋町574番地高倉ビル305
TEL: 075-254-1011、FAX:075-254-1012、E-mail:kyoto@kikonet.org