【プレスリリース】

改正省エネ法等法案は石炭火力温存へのミスリード

~水素・アンモニアを非化石エネルギーと位置づけ推進すべきではない~

2022年3月1日
特定非営利活動法人気候ネットワーク
代表 浅岡美恵

 本日3月1日、「安定的なエネルギー需給構造の確立を図るためのエネルギーの使用の合理化等に関する法律等の一部を改正する法律案(通称:省エネ法等改正案)」が閣議決定された。この法改正は、エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)、エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律(エネルギー供給構造高度化法)、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構法(JOGMEC法)、鉱業法、電気事業法の5つの法律の部分改正をまとめて行うもので、第208回通常国会で審議される予定である。

 今回の改正法案は、省エネ法及びエネルギー供給構造高度化法の目的を改正して、第6次エネルギー基本計画で推進するとしたアンモニア・水素混焼・専焼による「石炭火力の脱炭素化」を推進することを主たる目的とするものである。すなわち、化石由来のグレーアンモニア・水素を再生可能エネルギーなどとあわせて非化石エネルギーとしたうえで、省エネ法の目的に「非化石エネルギーへの転換」(比率の拡大)を追加し、定期報告制度を活用して中長期的にもこれを推進し、エネルギー供給構造高度化法でもグレーアンモニア・水素を非化石エネルギーに位置づけ、CCSをエネルギーの環境適合利用として推進し、JOGMEC法の名称を変更のうえ、海外及び国内周辺の海域での二酸化炭素の貯蔵に必要な資金に係る債務を保証するなどとするものである。

 現状で火力発電に用いるとするアンモニア等は化石由来であり、高圧・高温状態でのハーバーボッシュ法による製造では大量の二酸化炭素を発生し、このようなグレーアンモニアを20%混焼しても二酸化炭素削減効果は4%しかないことなどを指摘してきた(注1)。水素及びアンモニア製造にかかるコストも非常に高く、CCSも高コストであり、経済性も著しく劣る(注2)。本来の再生可能エネルギーの拡大のためには、省エネ法などの改正ではなく、そのための法整備こそ急ぐべきである。今回の省エネ法による非化石エネルギーへの転換の推進と高度化法、JOGMEG法での資金支援は、国家予算を投じて石炭火力を延命する措置にほかならない。

 グラスゴー気候合意で世界は1.5℃を目指すとし、そのための残余のカーボンバジェットが急速に減少していることを警告し、この10年の排出削減の取り組みが決定的に重要であると確認した。2月28日に公表されたIPCC第6次評価報告書第2作業部会も、適応の限界を指摘し、削減の遅れは住みやすく持続可能な未来を確保するための機会を失うことになると警告した。1.5℃に止めるために、一刻の猶予もない。国際協調で気候危機に立ち向かうことがこれまで以上に求められており、日本も確実に応分の排出削減を実行しなければならない。2030年に石炭火力を19%も残し、かかる法改正をもって削減効果のないグレーアンモニア等の混焼・専焼や実現可能性のないCCSを掲げて石炭火力発電を利用し続けるのではなく、速やかに再生可能エネルギーへの転換の道筋を世界に示すべきである。

注1) 気候ネットワーク「水素・アンモニア発電の課題:化石燃料採掘を拡大させ、石炭・L N G 火力を温存させる選択肢」(2021年10月27日)
注2) Transition Zero「日本の石炭新発電技術」(2022年2月14日)

 

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【プレスリリース】改正省エネ法等法案は石炭火力温存へのミスリード~水素・アンモニアを非化石エネルギーと位置づけ推進すべきではない~(2022年3月1日)

 

参考

経済産業省プレスリリース「安定的なエネルギー需給構造の確立を図るためのエネルギーの使用の合理化等に関する法律等の一部を改正する法律案」が閣議決定されました(https://www.meti.go.jp/press/2021/03/20220301002/20220301002.html

 

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