「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
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メコン・ウォッチ

2月28日、住友商事が「気候変動問題に対する方針」(※1)の見直しを行い、バングラデシュのマタバリ2石炭火力発電所の建設請負に参画しない方針を発表しました。私たち環境NGOは、同社の決定を歓迎すると同時に、本事業の融資を準備している日本政府・国際協力機構(JICA)に対して、融資契約を行わないよう強く求めます。

マタバリ1石炭火力発電事業(1・2号機)では、住友商事が建設工事の請負業者として参画しており、その拡張案件としてマタバリ2の準備が進められています。住友商事は、2021年5月に「気候変動問題に対する方針」を発表し、新規の石炭火力発電に参画しない旨を表明しつつも、マタバリ2を例外としていました。この度、同社は方針の見直しを行い、この例外規定を取り除いてマタバリ2の建設工事入札への不参加を決定しました。しかし、日本政府・JICAは依然として本計画への融資を準備しています。

欧州の研究機関であるクライメート・アナリティクスによれば、気候変動対策の国際的な枠組みであるパリ協定の1.5度目標を達成するためには、先進国では2030年までに、バングラデシュのような途上国も2040年までに石炭火力発電所の運転を完全に停止する必要があります(※2)。日本政府・JICAによる石炭火力発電所の建設支援は、運転開始後、数十年にわたって運転が想定される計画であり、パリ協定の長期目標との整合性がないことは明らかです。また、日本政府はG7コーンウォール・サミットの首脳宣言を受けて石炭火力発電の対外支援方針を2021年6月に改訂し、「排出削減対策が講じられていない石炭火力発電への政府による新規の国際的な直接支援を2021年末までに終了する」としました。マタバリ2の支援は、G7での約束に反しています。

バングラデシュではすでに発電設備が過剰状態にあることが指摘されており、化石燃料による発電所の増設は、将来の再生可能エネルギー拡大の大きな足かせになりかねません。バングラデシュの電力エネルギー資源鉱物省の報告書「Revisiting PSMP 2016 (2018年11月発表)」(※3)によれば、同国の電力供給予備率は2026年に最大で69%に達すると想定されており、今後想定される供給予備率は、2041年まで目標供給予備率を一貫して上回ると予測されています。

さらに、化石燃料による発電所の新規建設は、バングラデシュの財政悪化や電力コストに深刻な影響を及ぼすリスクがあります。米国シンクタンクであるエネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA)は、未着工の発電所の建設計画を中止する必要があると提言しており、マタバリ石炭火力発電事業をはじめとするあらゆる新規の石炭火力発電計画もその例外ではないと指摘しています(※4)。

したがって、日本政府およびJICAに対して、バングラデシュのマタバリ2石炭火力発電事業への融資契約を行わないよう要請します。

脚注
  1. https://www.sumitomocorp.com/ja/jp/news/release/2022/group/15490
  2. https://climateanalytics.org/briefings/coal-phase-out/
  3. https://powerdivision.portal.gov.bd/sites/default/files/files/powerdivision.portal.gov.bd/page/4f81bf4d_1180_4c53_b27c_8fa0eb11e2c1/Revisiting%20PSMP2016%20%28full%20report%29_signed.pdf
  4. http://jacses.org/1593/

本件に関する問い合わせ先

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、田辺有輝
tanabe@jacses.org