8月31日(水)、長崎県西海市の松島火力発電所における「GENESIS松島計画」の環境影響評価方法書(以下方法書)が公開され、10月17日(月)を締め切りとした意見募集がJ-Powerによって開始されました。

GENESIS松島計画の方法書については大きく3つの問題点があります。またこの意見募集の実施のあり方についても問題があります。これらの問題点やその他の皆さまからの疑問や問題点の指摘をJ-Powerに送って私たちの声を届けましょう。

以下のページにご自身で郵送で送られる方のための郵送に際しての注意点や送付期限を記載しています。またご自身で郵送することが難しい方のために、同じページにおいてオンラインの意見投稿フォームを設置し、郵送を代行する取り組みを行っておりますのでぜひご活用ください。

https://act-matsushima.jp/eia/

GENESIS松島計画の環境影響評価方法書の問題点

1.気候危機への対応として脱石炭に向かう国際合意を踏まえていない

現在日本は2030年に温室効果ガス46%削減(2013年度比)を目指すこと、さらに50%の高みに向けて挑戦を続けること、2050年カーボンニュートラルを達成することを国の目標として掲げている。また、GENESIS松島計画の公表後、石炭火力に関してCOP26では石炭フェーズダウンの合意、G7では石炭火力のフェーズアウト、2035年の電源脱炭素化など、1.5℃目標の実現に向けて、数々の国際合意も重ねられている。

これらの国の目標や国際合意を踏まえた対応が必要で、石炭火力発電所は2030年までに廃止する必要がある。しかし、方法書において定量的に示されているのは単位電力量当たりの二酸化炭素排出量の約10%削減、発電効率ではSC(超臨界圧)からUSC(超々臨界圧)相当で、天然ガス発電の排出係数や効率にも遠く及ばない。GENESIS松島計画は、単なる石炭火力の延命計画に過ぎず、国の目標、世界合意と整合しているとは考えられない。

2.CCS、水素、アンモニア混焼等の実施時期が不透明

計画段階環境配慮書への経済産業大臣意見の(3)には以下のように記されている。

今後の電気事業分野における地球温暖化対策に関連する施策の検討を注視し、2030年度及び2050年に向けた本事業に係る二酸化炭素排出削減の取組への対応の道筋が描けない場合には事業実施を再検討することを含め、あらゆる選択肢を勘案して検討するとともに、その取組内容について、可能な限り、準備書に記載すること。

しかし、経産大臣意見において言及されている「本事業に係る二酸化炭素排出削減の取組への対応の道筋」に対して、計画実施時期、削減効果等について明確に回答が示されていない。とりわけ、J-Powerが温室効果ガスの削減方法として強調しているCCS(二酸化炭素回収・貯留)、水素、アンモニア混焼等の実施時期は不透明なままである。

経済産業大臣意見の温室効果ガス、大気環境等を指摘する各論部分においても「検討の経緯及び内容については、方法書以降の図書に適切に記載すること」とあるが、事業主体であるJ-POWERは、少なくとも、方法書作成時点で示されている国のロードマップや、自社と他企業との連携状況を明示し、それらに基づいてどのような実施時期を想定しているかを示すべきである。特にJ-Power自身が発表しているCCS関連事業の想定実施時期(最終投資判断の時期、試掘開始時期)すら反映していないのは怠慢と言わざるを得ない。

3.温室効果ガス、大気汚染物質の排出に対する説明、根拠が不十分

GENESIS松島計画についてはJ-Powerは「CO2削減及び電力の安定供給への寄与、並びに目指すCO2フリー水素発電及びCO2フリー水素の製造・供給の実現に向けた第一歩」としているが、新しい取り組みであることが石炭火力の延命を正当化するものであってはならない。GENESIS松島計画において、温室効果ガス排出削減策とされている、CCS、水素、アンモニア混焼等については、実施時期を明示するだけでなく、具体的な根拠を元に現時点で算定した削減効果について、方法書で示すべきである。

また、IGCCなど石炭ガス化設備を有する同種の設備が導入された発電所では、設備の不具合や点検、その他公表されていない理由によって稼働停止することが多くあった。現在の計画では、ガス化設備が稼働停止している際には、旧来の施設を稼働させるものとなっている。その場合は、従来通りの温室効果ガスや大気汚染物質を排出することとなる。ガス化設備の稼働状況と、それに応じた旧来の施設の稼働状況を複数ケース想定して、それぞれの場合の温室効果ガスや大気汚染物質の排出量を示すべきである。

意見募集のあり方について

・アセス図書の縦覧形式、住民説明会の開催回数・場所、質問募集の形式が適切ではない

前回の配慮書では、800通以上の意見が国内外から寄せられた。しかし、意見する際に参照するアセス図書の縦覧方法について、利便性、情報公開のあり方で問題がある。まず、利便性の面では、600ページ弱の膨大なページであるにも関わらず、ダウンロードや印刷することも出来ない。さらに、情報公開の面では、縦覧期間終了後は、一部事項だけをとりまとめた、あらまししか見ることができない。これでは、市民の意見提出の妨げになるだけでなく、事業実施後の第三者による検証の妨げにもつながる。著作権や希少種の有無などの問題がないページについては、少なくとも発電所の稼働期間中は、公開の状態を維持すべきである。

住民説明会も、発電所という長期に環境影響を与える事業特性に応じたものとなっていない。説明会は、西海市において1回しか開催されていない。また、開催日時も平日の夜、18時30分~20時30分という時間帯で、参加し難い時間帯に開催された。多くの市民に参加の機会を提供しようという意欲にかけていると言わざるを得ない。さらに質問の募集手法も、質問者の理解を深める形式になっていなかった。会場に集まった参加者からの質問は、質問用紙のみに限定し、J-Powerの担当者の返答を受けて、再度質問することができなかった。そのため、質問者が事業に対する理解を深めるには不十分であると感じられた。環境アセスメントにおいて住民参加は重要とされているにもかかわらず、事業者であるJ-POWERは、形式的な参加で手続きを前に進めようとしていると言わざるを得ない。これでは経済産業大臣意見、長崎県知事意見における、「住民関与についても十全を期すこと」、「疑問や要望に対しては誠実に対応」との意見に十分に対応しているとは言えない。