COP27シャルム・エル・シェイク会議の結果と評価

―気候危機回避のため、排出削減の強化がより重要に

2023年1月31日

特定非営利活動法人気候ネットワーク

2022年11月6日から11月20日にかけて、エジプトのシャルム・エル・シェイクで国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)が開催され、気候ネットワークのメンバーもオブザーバー参加しました。

本ペーパーは、COP27シャルム・エル・シェイク会議を取り巻く情勢、交渉の内容や合意のポイントと評価、今後の気候交渉の見通し、COP27後の日本課題についてとりまとめたものです。

目次

  1. COP26後の世界情勢
  2. COP27交渉とその結果
  3. 交渉外の動き
  4. COP27での日本の動き
  5. 今後の気候変動交渉と日本の課題

要約 Executive Summary

国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)は、2022年11月6日~20日にエジプトのシャルム・エル・シェイクで開催された。COP26で大枠が完成したパリ協定の実施方針のもとで、どのように気候変動対策を実施していくかにフェーズが移り、ロシアによるウクライナ侵攻に端を発した世界的なエネルギー危機や、頻発する気候災害による損失と損害の拡大といった厳しい世界情勢のもとで各議題の交渉が行われた。
COP27で合意された「シャルム・エル・シェイク実施計画」では、COP26合意の内容を再確認し、1.5℃を目指す決意をあらためて示すとともに、この世界情勢において再生可能エネルギーの拡大や公正な移行の重要性が確認された。一方、現状の各国NDCでは1.5℃目標の達成には届かないなか、排出削減強化を促す合意が期待されたが、最終的にはCOP26の合意内容を踏襲するにとどまった。同様に、2030年までの排出削減強化をねらいとした「緩和作業計画」も実質的な強化につながる内容とはならなかった。ただし、化石燃料や2℃への揺り戻しがあったなかで、COP26合意を維持したことは強調したい。
歴史的な成果となったのが、「損失と損害の新基金設立」である。気候災害が世界各国で頻発するなか、議長国エジプトの強い意欲や、市民社会からの後押しもあり、気候変動の悪影響に特に脆弱な国々を支援するための新しい基金を設立することが決定された。その他、気候資金、6条、適応、グローバル・ストックテイクなどの議題は、今後も引き続き詳細な議論が続けられることとなる。
非国家アクターについて注目された動きの一つは、国連のハイレベル専門家グループによる、非国家アクターがネットゼロ宣言をする際の提言レポートが発表されたことである。提言には、ネットゼロ宣言にあたって化石燃料の利用/支援をやめる具体的な目標を立てることなどが盛り込まれている。また、COP27では市民に対する人権侵害、市民社会スペースの縮小への懸念が示されたように、これまでのCOPより制限が多かったものの、市民社会によって気候正義と人権を求めるアクションが数多く行われた。
COP27では再生可能エネルギーへの移行を促進する合意がなされたが、日本政府はそれとは逆方向の施策を強化している。COP27でも、世界最大の化石燃料の公的資金提供国であることや、国内外で石炭のアンモニア混焼を推進していることについて市民社会から厳しい批判を受けた。2022年12月に取りまとめられたGX基本方針(案)の内容は、原発や石炭依存から抜け出せていない。2023年のG7議長国である日本は、COP27でなされた世界の合意と逆行する石炭火力維持の政策を見直し、1.5℃目標と整合する2030年目標とカーボンプライシングなどの対策を強化することが急務である。

【ペーパー】COP27シャルム・エル・シェイク会議の結果と評価(全12ページ・PDF版・1.94MB)

【ペーパー】COP27シャルム・エル・シェイク会議の結果と評価(2023年1月31日)

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