<プレスリリース>

原発推進の「GX脱炭素電源法案」の閣議決定への抗議声明

2023年3月1日
特定非営利活動法人気候ネットワーク
代表 浅岡 美恵

 2月28日、政府は、「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案(GX脱炭素電源法案)」を閣議決定した。これは、原子力基本法、電気事業法、原子炉等規制法(炉規法)、再エネ特措法、使用済み核燃料再処理法の5つの原子力発電関連法の改正案を一本化した束ね法案である。原子力発電による電気の供給体制の確立を目的としたもので、再生可能エネルギー(再エネ)の導入促進にも極めて不十分であり、以下のとおり重大な問題がある。原発関連法の改正案には断固反対し抗議する。

1. 原子力は温暖化対策にならない
原子力基本法を改正して、原子力発電の開発及び利用の目的に「地球温暖化の防止」を加え、技術の維持・開発を含めこれを推進するとしている。しかしながら、東日本大震災による福島第一原発の過酷事故やバックエンド対策の困難さをみるまでもなく、原子力発電は地球温暖化対策とはなりえない。さらに地震国日本において大規模な地震による事故が生じた場合は原子力発電所の運転を停止させてバックアップ(主に火力発電)電源に依存することになり、根本的なCO2排出削減策にはならない。原子力発電は段階的に廃止し、地域分散型の再エネの拡大を加速させ、調整のための蓄電池の増強や送電網整備等への支援、企業の自主参加ではなく適正なキャップ&トレード型排出量取引や炭素税といった適正なカーボンプライシングこそが急務である。

2. 原発運転期間の上限撤廃と規制と利用の分離は福島事故前への逆戻り
改正法案では、原子炉等規制法にあった原発の運転期間延長規制を電気事業法(経済産業省所管)に移管するとともに、現行炉規制法で運転期間を 原則40年とし、1回に限り最大20年間の運転延長を認める(最大60年)としたものから、安全審査や裁判所の仮処分命令等による停止期間を除外し、60年を超える運転を認める内容である。現行法は、福島第一原子力発電所事故を踏まえて、原発の安全性を高めるために導入された安全基準であるが、本法案はこの安全基準を骨抜きにし、老朽原発の運転延長を認めて経年劣化のリスクを高めるもので、容認できない。そもそも福島第一原発事故後、原子力発電所の規制組織が経済産業省から分離され、三条委員会として安全規制に特化した原子力規制委員会が設立されたのであり、規制と推進の分離は、福島第一原子力発電所事故を踏まえた極めて重要な改正である。本法案はこの規制と推進の分離を福島第一原発事故前に逆戻りさせるもので、原発事故後の安全規制の根幹を覆すものである。さらに、原発依存度の低減にも逆行するものであり、老朽原発は安全確保のために莫大なコストがかかるため、経済性の面からも問題である。

3.2030年、2050年の電源構成を改め、再エネシフトすることこそ重要施策
本法案は、2030年電源構成で原子力比率を20~22%にするとの無理な目標を掲げた第6次エネルギー基本計画を土台とし、ウクライナ戦争によるエネルギー危機とエネルギー価格高騰を口実に、電源構成目標の実現のために原発運転期間の延長に舵を切ったもので、本末転倒である。「次世代原子炉」の開発と建設を検討するとしているが、2030年代にも実用化の見通しはなく、国民の理解と年数、資金が必要で現実からかけ離れた想定である。気温上昇を1.5℃に抑えることに貢献し、2050年カーボンニュートラルの実現を目指すのであれば、より安全かつ持続可能で、コストも下がりつつある再エネへのシフトを急ぐべきであり、2030年の再エネ目標こそ高い目標に変え、再エネ導入を加速させる政策を進めるべきである。原発と石炭火力の維持、継続で、再エネの導入を妨げることは国際社会の趨勢に逆行するものである。

以上のとおり、「GX脱炭素電源法案」の閣議決定に抗議するとともに、気候危機とエネルギー危機に立ち向かうために真に求められている再エネ及び蓄電池の拡大、再エネのための送電網整備等に向けた措置及び適正なカーボンプライシングの推進を求めるものである。

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参考

経済産業省「「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案」が閣議決定されました(リンク

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