「1.5℃目標」の達成に向けて待ったなし!~最新の科学動向より~

京都事務所の有木です。

11月27日、国連環境計画(UNEP)より「排出ギャップ報告(Emissions Gap Report) 2018」が発行されました。これは、将来予想される温室効果ガスの排出量とパリ協定の目標を達成するために削減すべき排出量との差である「Emissions Gap」についてまとめたレポートです。

本レポートは、各国政府に対策強化を促す強いメッセージを送るとともに、COP24での議論にも影響を与えました。

今回は本レポートで明確になった「人類の課題」を紹介するとともに、その解決に向けて世界がどのようなアクションをとればよいのかを考えたいと思います。

明らかになった膨大な「Emissions Gap」

本レポートによって、私達が向かっている将来と目指すべき目標との間に大きな差があることが改めて明らかになりました。それが一目にしてわかるのが図1です。

図1 各シナリオの温室効果ガス排出経路と「Emission Gap」

最初に確認しておきたいのが現在の排出量です。レポートによると、2017年の全世界の温室効果ガスの排出量は53.5GtCO2e(注1となり、過去最高を更新しました。

そして、現在のパリ協定の下での国別約束(NDCs)が条件付きのものも含めてすべて達成されたとしても、2030年の排出量は53GtCO2 e程度になると予想されました(図1の「Conditional NDC scenario」に相当)。すなわち、現在からほぼ横ばいの排出経路をたどることになり、排出量実質ゼロを目指すパリ協定の「軌道」に全く乗っていないことがわかります。ちなみに、この排出経路をたどった場合、2100年頃までに産業革命前と比較して世界の気温が3.0℃程度上昇すると予想されました。

一方で、パリ協定の努力目標である、気温の上昇を「1.5℃」までに抑えるためには、2030年には温室効果ガスの排出量を24GtCO2 e程度に抑えなければならないとの結果が出ました。

上述のNDCsがすべて達成された場合と比較すると29GtCO2 eの「Emissions Gap」が生じることになります。同様に「2.0℃」の場合は2030年の排出量を40Gt CO2 e程度に抑える必要があり、13Gt CO2 eの「Emissions Gap」が生じる結果になりました。

二酸化炭素除去技術(CDR)を使えば問題は解決する?

世界の気温上昇にCO2排出量の積算値が関係していることは科学的に証明されています(つまり、ざっくりと言えば、CO2をたくさん出せば出すほど気温が上がる、ということです)。例えば、気温の上昇を1.5℃までに抑えるためには、排出できるCO2は420Gt 程度であると報告されています(注2

この場合420Gtに相当するCO2排出量を「炭素予算(カーボン・バジェット:carbon budget)」と呼びます。この考えを応用すれば、仮に「carbon budget」をオーバーしてしまった場合でも、二酸化炭素除去技術(CDR)を用いて大気中からCO2を吸収することで埋め合わせすれば良いのではないかと考える人もいます。

彼らによれば、CDRを用いてCO2を吸収し、一度オーバーシュートしてしまった気温を目標値まで下げることは理論的には可能といいます。実際に、10月に公表されたIPCC「1.5℃特別報告書」でもCDRについて言及があります(注2

図2はそのCDRの一種です。例えば、バイオマスCCS(BECCS)は植物に大気中のCO2を吸収させた後、それを燃焼させてバイオエネルギーとして活用し、その際に発生したCO2を地下深くに貯蔵することで、トータルでCO2を削減させる技術です。このBECCSは現在実証段階にあります(注3

図2 様々な炭素除去技術

しかし、CDRをあてにすることはできません。なぜなら、CDRは確立された技術でないだけではなく、様々な副作用を伴い、それが持続可能な社会を実現する方向とは逆向きに作用する可能性があるからです。

例えば、BECCSを大規模に用いる場合、植物を育てるための大量の土地が必要になり、食用作物のための土地利用が制限されたり、生物多様性が失われたりする可能性に繋がります。また、(特に地震の多い日本などで)地中に安定的にCO2を貯蔵することができるのかといった疑問も発生します。そもそも、技術開発が間に合い、うまくいく保障はありません。

「1.5/2℃」目標を達成するシナリオは多数存在しますが、本レポートで参照されたシナリオのほとんどはCDRのポテンシャルを低く見積もっています。結果として、「1.5/2℃」を達成させるために必要なCO2削減量は比較的大きな値となりました。排出削減が遅れれば遅れるほど、副作用のある、未完成の技術に頼らざるを得ない状況になり、持続可能な社会の実現を困難にすることが予想されます。

NDCsの引き上げなど、早急な対応が必要!

UNEPが繰り返し警告しているように、各国が現在掲げている目標と目指すべき目標との間に大きな差があることが明らかになっています。したがって、各国のNDCsの引き上げが当然必要となります。本レポートでは「『前例のない』『早急な』行動がすべての国々に求められる」と警告してします。

現時点ではまだ「1.5~2℃」目標を達成できる可能性は残されているそうですが、2030年までにNDCsの引き上げがされなければ「1.5℃」目標の超過は避けられないとしています。

現在日本政府が掲げている温室効果ガスの削減目標は「2030年までに2013年比で26%の削減」です。一方、本レポートでは2030年までに2017年比で「1.5℃目標」の場合55%(「2℃目標」の場合25%)の削減が必要であるとしています。日本の持っている技術力や、これまでに大量の温室効果ガスを排出してきた経緯を踏まえれば、現在の目標は「低すぎる」と言わざるを得ません。国際的な科学者グループも、日本の目標が、パリ協定の目標に不足していると指摘しています。

https://climateactiontracker.org/countries/japan/

実効性のある目標にするために

パリ協定の目標を達成するためには、各国政府の排出削減目標を野心的なものに変えるだけでなく、それを着実に実行しなければなりません。特に脱石炭を早急に実現することが不可欠です。ところが、2030年エネルギーミックスでは、2030年度の発電電力量のうち石炭火力の割合が26%程度となっていて、2010年以前と変わらず最もCO2排出の多い石炭火力発電が継続されることになります。さらに、2012年以降に、国内で新規に計画されている石炭火力発電は50基にもなっています(内8基は既に稼働中、8基が中止)。これらが建設・稼働されれば、その26%も大きく超えてしまい、大幅削減の実現には逆行している状況です。

目標を実効性のあるものにしないといけないということは、日本に限ったことではありません。図1の排出経路を見れば分かるように、2020年以降にこれまで増加してきたCO2の排出量を急激に削減するシナリオを世界は選択しなければなりません。従来の社会構造のままでは、急変したシナリオを実現できないことは想像に難くありません。

IPCC「1.5℃特別報告書」では、「1.5℃」目標を達成するために「世界全体でエネルギーや土地、都市、インフラ、産業等のシステムの大転換が必要であり、そのための投資の大幅な拡大が必要である(注4と述べられています。描かれたシナリオを「絵に描いた餅」にしないためにも、化石燃料の大量生産・大量消費を前提とした20世紀型の社会構造を見直し、持続可能な新たな社会構造に切り替えるタイミングに来ているのではないでしょうか。

参考:Emissions Gap Report 2018

注1:温室効果ガスの排出量を(温暖化への影響を考慮して)CO2換算したもの

注2:IPCC「1.5℃特別報告書」第2章 要約

注3:IPCC「1.5℃特別報告書」第4章 FAQ 4.2

注4:IPCC「1.5℃特別報告書」政策決定者向け要約(SPM)の概要

化石燃料にお金を流すな「Fossil Banks, No Thanks!」キャンペーン

2018年12月、ポーランドのカトヴィツェで国連気候変動枠組条約第24回締約国会議(COP24)が進行する間に、BankTrackが主導する『Fossil Banks, No Thanks! 』キャンペーンのアクションの一貫が行われました。

今回は、簡単にこの報告を。

Fossil Banks, No Thanks!キャンペーン

これは、大手民間銀行に対し、遅くとも2019年の国連気候サミットが開催されるまでに、すべての新規の化石燃料に対する計画への資金提供を中止し、かつ既存の化石燃料への支援も段階的にやめるようにに呼びかけるキャンペーンです。主なターゲットは、2015-2017年の間に、少なくとも3450億USドルもの石炭・石油・ガス関連企業のプロジェクトの資金に関わったとされる大手民間38行。ここには、中国工商銀行(ICBC)、JPモルガン・チェース、サンタンデール銀行などが含まれていますが、日本からも3行-三菱UFJフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほ銀行-がリスト入しています。

中には、特定の石炭火力発電所や炭鉱、あるいは環境への影響の大きなタールサンドや北極圏での掘削への投融資を制限する基準を設けた銀行もありますが、多くの銀行は、気候変動を抑えるためにはこれ以上の化石燃料を燃焼させるべきではないこと、迅速にその使用を止めるべきであること、新規の化石燃料の採掘・利用は目標達成を阻むものであること、という認識が欠けているのです。

Letter & Photo Action

そこでBankTrackは、今回のCOP24開催前(10月16日)に対象である38行に対してレターを送付し、1.5℃目標の重要性を訴えました。さらに、COP真っ只中の12月13日に、賛同団体らに呼びかけて世界各地で敢行したPhoto Actionをネット公開したのです。日本でも銀行前で写真を撮り、それを世界と共有しました。

Photo Actionに参加したのは、9ヶ国から12のグループ(恐竜1匹を含む)。ターゲットとする銀行のうち17行の写真が集まりました。他の国でのアクションの写真は、Facebookを見てください。

「Fossil Banks, No Thanks!」キャンペーン全体としてはBankTrackを中心に、Friends of the Earthフランス、Oil Change International、 レインフォレスト・アクションネットワーク(RAN)、シエラ・クラブなどをはじめ、34ヶ国から120の市民団体が参加しています。

我らの預金はどう使われているのか

日本の銀行は、巨額の資金を石炭火力発電事業に投融資しており、世界の石炭火力への投融資の上位4位までに日本の三つのメガバンクが入っているとされています。脱石炭を進めるためにも、各国の銀行は化石燃料への支援を止めるときべきなのですが、預金者である我々が自分たちの預金がどこで、どのように使われているのかにもっと関心を持つべきですね。

Fossil Banks, No Thanks!

化石燃料を支援する銀行なんていらない!と声をあげていきましょう。

COP24カトヴィツェ会議の注目点

12月2日から14日にかけて、ポーランドのカトヴィツェで国連気候変動会議(COP24・CMP14・CMA1.3等)が開催されます。

注目しているポイントを3つに分けてまとめました。

1)タラノア閣僚級セッション開催!
気候災害の危機や最新の科学的知見を受け止め、目標引き上げにコミットできるか?

2018年は、世界各地で深刻な気候関連災害が発生しました。今年10月に国連国際防災戦略事務局(UNISDR)がまとめた報告によれば、世界の気候関連災害による経済損失は増大しています(下図)。

産業革命前からの地球平均気温上昇が約1℃という現在でもこの被害額です(世界各国が掲げる現行の温室効果ガス排出削減目標が全て達成されたとしても「約3℃上昇」という予測があります)。

また、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が今年10月に発表した特別報告では、1.5℃目標は達成可能だが、そのためには大幅な対策強化が必要とされています。

このような気候危機の現実や最新の科学的知見をどう受け止めるかが決定的に重要です。「気候変動は大変だ」と繰り返すだけでは不十分です。

COP24で開催されるタラノア対話閣僚級セッションにおいて日本を含む主要国が温室効果ガス排出削減目標を見直し、強化して2019年に国連に再提出することをコミットすること(すでにフィジーやマーシャル諸島は、目標引き上げ・再提出の意思を公に示しています)が求められますし、国際社会の総意としてCOP合意にてその政治的意思を示すことが望まれます。

 

2)COP24が合意期限!パリ協定の詳細な実施指針に合意できるか?

COP24は、パリ協定を実施していくにあたって必要となる詳細なルールブックの合意期限です。国別貢献(排出削減目標等)、協力的アプローチ(市場メカニズム等)、適応に係る報告、透明性、5年に1度の進捗確認であるグローバル・ストックテイク等、非常に膨大な論点を含む包括的なパッケージ合意がめざされています。

今年9月に行われたバンコク会合の結果、共同議長らがテキストの提案を含む新たな非公式文書を用意することになり、会議に先立って公開されています(https://unfccc.int/node/28798)。

交渉の現状がまとめられ、案文も以前の文書に比べると読みやすくなりましたが、各項目や文言が仮のものであることを示す選択肢や括弧が多数残され、作業の進み具合は論点毎にまちまちです。残された作業は依然膨大であり、COP24の成否は予断できません。

カトヴィツェ会議では、議長国ポーランドの采配のもと、 公平で実効性あるルールブック合意に向けて、大胆かつ繊細な政治的妥協が求められます。日本も、排出削減目標の引き上げ、気候資金の拠出、2020年までの対策強化 といった難題への準備が必要です。

3)非国家アクターの脱炭素のイニシアティブは国の目標引き上げを後押しできるか?

現在、パリ協定の締約国数は184か国・地域。1.5℃目標の達成に第一義的に責任を持っているのは各国政府ですが、その対策は不十分であり、非国家アクターによるイニシアティブが広がっています。

自然エネルギー100%宣言を掲げる自治体、ビジネス等も増えていますし(RE100go100re)、石炭火力発電ゼロをめざす国・自治体・企業の連合「脱石炭をめざすグローバル連合(PPCA)」には、韓国でも有数の石炭火力発電所密集地域である忠清南道政府が、10月初旬に新たに参加。

日本でも非国家主体による気候変動イニシアティブ(JCI)が立ち上がっています。

COP24でも、非国家アクターによるイニシアティブがさらに発表され、気候アクションの気運を盛り上げ、政府による対策強化を促すでしょう。そこで日本の非国家アクターがいかに存在感を発揮できるかも注目されます。

(気候ネットワーク通信123号掲載記事を加筆修正)

豪雨・台風に備えるには:防災士がおすすめする水害対策

こんにちは。京都事務所の広瀬(防災士)です。

現在台風25号が日本海を北東に進んでいます。進路が予想通りの場合、西日本や東日本では季節外れの暑さになる可能性も出てきました。今日は、水害対策について、記事を書いてみました。

気候災害!強い台風・豪雨が日常化

今年は9月までに24個の台風が発生しました。9月上旬に日本に上陸した台風21号は、中心気圧955ヘクトパスカル、最大風速45メートル、最大瞬間風速60メートル(鉄塔が曲がるくらいの風)と、25年ぶりの最強レベル台風となりました。

台風21号の影響で折れた木 京都府南丹市 2018年9月(撮影:広瀬)

その爪痕が残る中、9月末には台風24号が上陸し、またしても多大なる被害をもたらしました。心配された通り、秋雨前線が刺激され、大雨の被害も深刻でした。

台風25号 2018年10月5日 正午 気象庁HPより

身近でできる豪雨・台風・水害対策のポイント

今回の記事では、地球温暖化の進行に伴ってますます増えると思われる「万が一」に備え、身近でできる豪雨・台風・水害の対策の要点を以下にまとめてみました。

台風・豪雨前の備え

普段の備え

1,ハザードマップの確認(浸水が想定されている区域を確認)

2,避難場所の下見をする。避難場所を家族で確認する。

3,家族がそれぞれ違う場所にいる場合、連絡手段を決めておく。

災害伝言ダイヤル(171)

https://www.ntt-west.co.jp/dengon/

4,雨水排水溝を手入れする。ベランダ、玄関前など外部の雨水の排水溝は、一旦詰まると雨水が流れずどんどん溜まっていくため、常に手入れを行う。

5,持ち出し用防災グッズを準備する(例:水は1人1日あたり3リットルを2〜3日分)

非常用持ち出し袋は2,3日分。背中にしょえるくらいに。

 

台風直前の備え

1,正しい情報の入手 地域の自治体による広報を聞く(自治体のHPなど)

2,持ち物の確認

3,近所の人への声かけ   (特に高齢者には早めに)

4,避難場所の最終確認(災害の種類によって違う場合あり)

5,避難前には必ず電気のブレーカーを落とす

 

台風・豪雨時の備え

1,気象情報に注意する

次の国土交通省のウェブサイト等が参考になる。

川の防災情報(国土交通省)

2,迅速に避難する

避難は浸水する前が原則!避難勧告や避難指示(緊急)がでたら、ためらわず避難する。「避難指示(緊急)」は、「避難勧告」に比べ事態がより切迫していることを示している。避難が空振りになれば幸いという意識を持つ。

避難準備・高齢者等避難開始いつでも避難を始められるように準備することや、危険を感じる人や避難に時間を要する人は避難を開始することを呼びかけるもの。

2009年 7月 22日 7名が犠牲になった山口県防府市真尾地区・特別養護老人ホーム「ライフケア高砂」付近

3,屋外での危険を避ける

水深が膝下を超えると、安全な避難は困難であり、無理をせず、屋内の高い場所に移動する。

4,運転での危険を避ける

豪雨時、水かさが増してきたときは、車を放置する。緊急車両の妨げにならないよう、キーはつけたままにする。高架道路・鉄道の下のアンダーパスは浸水している危険性が極めて高いので回避する。

日頃から、自分にあてはめて、備える

先月の台風21号は甚大な被害をもたらしましたが、その後、関西空港の連絡橋は驚くべきスピードで修繕されました。復旧は途上のところもありますが、多くの人の日常生活が元通りになりつつあることは、本当に良かったと感じています。

しかし、一方で、このことで喉もとすぎれば・・ということにならないかが心配です。

どうかみなさん、自分にあてはめて、備えてください。

 

地球温暖化と気候災害

このまま地球温暖化が進むと、命に関わるようなひどい豪雨、猛暑、勢力の強い台風などの災害がますます深刻化すると考えられています。

日頃からできる災害への備えに加えて、気候変動の緩和(つまり、温室効果ガス排出削減)と適応を日常的にとりいれていく工夫が必要です。地球温暖化問題を一人ひとりが自分にあてはめて考えていかなければ、これから先、災害に立ち向かうことはできないと私は考えます。

いくつもの災害を経験し、乗り越えてきた日本人のポテンシャルを活かすときではないでしょうか。

 

参考文献

教育現場の防災読本

地球温暖化と防災〜防災士、災害復興ボランティアに参加する〜

こんにちは、京都事務所スタッフの広瀬です。防災士としても活動しています。

今年、猛暑、豪雨、台風、地震によって被災された皆様に心よりお見舞い申し上げるとともに、被災地の1日も早い復旧をお祈りしています。

猛暑・豪雨・最強レベル台風:災害の年

今年は猛暑、豪雨、最強レベル台風に見舞われ、まるで「温暖化が進んでしまった2100年の予報」を思い起こさせるような被害が頻発。防災への関心は非常に高まることとなりました。

2002年にヨーロッパで広大な範囲で大洪水が起きたのを覚えていますか?このとき、日本の専門家は、同様の大洪水が日本で起きたら、狭い範囲で多くの人が生活しているために、日本ではもっと多くの被害が出るだろうと指摘していました。今年の気候災害とその被害を考えれば、当時の専門家の警告が、その後の日本の防災対策にどれくらい活かされただろうかと考えさせられます。

少しでも多くの方に、地球温暖化と防災について考えていただきたいと思い、今回、記事にまとめてみました。

「防災」ってなに?

「防災」というのは、皆さんご存知の通り、災害を未然に防ぐために行われる取り組みのことです。命を守ることはもちろん、特に最近では人びとが築き上げた生活の質を守っていくために、被害を最小限に抑えることが重要と考えられています。

温暖化が進むことで、これからますます深刻化する気象災害に対し、これまでの経験をどのように活かせるか、今年7月に発生した西日本豪雨によって被災地となった岡山県真備町での災害復興ボランティアの経験から考えてみました。

大きな被害をもたらした、西日本豪雨災害

7月に台風7号が日本に接近すると、梅雨前線を刺激して、大雨を長期間降らせる筋状の雨雲(線状降水帯)が発生し、広島や岡山付近に停滞。この影響で、西日本から東海地方にかけて雨量は観測史上最大値を更新しました。

屋根まで浸水してしまった家

 

気象庁が、「今回の豪雨が過去の豪雨災害と比べて、極めて大きなものだった」とコメントしたのが印象的でした。この豪雨により、北海道から鹿児島まで広範囲に及び、死者227人、行方不明10人、家屋の全壊6,296棟と、甚大な被害をもたらしました。

京都市災害ボランティアセンターを通じて、災害復興ボランティアに参加

西日本豪雨災害では、多くの地域で水が引いた後、迅速にボランティアセンターが設置されました。しかし、広範囲に及ぶ災害だったため、ボランティアを希望する多くの人が、どこへ行くべきか、頭を抱えたと聞いています。

防災士として活動を始めたばかりの私は、たまたま、京都市災害ボランティアセンターが、被害が大きかった岡山県真備町への災害復興ボランティアバスを出すことになっていたので、それを利用することにしました。

移動中のバスの中では、自己紹介をし、グループ活動がスムーズに行くよう配慮もあり、到着する頃には、周りの人たちとすっかり仲良くなれました。26回もボランティアに参加されている人からは、雰囲気作りの大切さを教えてもらいました。

ボランティアセンターからは、長靴、ゴム手袋、ゴーグル、防塵マスク、水2リットルなど、感染症予防や、土埃から身を護るための対策をしっかりするように注意喚起がなされ、また、単独で参加すると、時間をようする手続きも、前もって倉敷市災害復興ボランティアセンターへ手続きをしてくれているため、到着してから活動するまで、非常にスムーズでした。

災害復興ボランティア:現地の活動とは

道路沿いにはあちこちに瓦礫置き場とは別に土砂置き場が設置されている。(撮影:広瀬)
民家の床下の泥を出す作業

私が担当したのは、15人で活動する1軒のお家。台所のシンク、お風呂などを取り外し、床をめくって、床下のドロ出しをする作業でした。

水害から1ヶ月経つのに、まだ壁は乾ききっておらず、一方で床下では、乾燥した泥が浮き上がっていました。バスタブを外しているとき、製造年月日から、築10年のお家だったことがわかりました。

必死で作業を進めているつもりなのに、水回りの作業は難しくてなかなか思うように捗りません。一体何ができるのか、無力さを感じながらも、無心で作業を続けました。

猛暑の影響で、10分ごとに水分補給の声がかかります。熱中症予防のため、こういった作業は、2時間で終了と決まっています。ひとまず、取り外したものを外に出し、バスに戻る時間ギリギリまで活動しました。

 

荷物を置くためのブルーシートを設置(撮影:広瀬)
家主さんからの言葉

帰り際に家主さん夫婦とお話ができました(この地区の町内会長さんだそうです)。

「今日は遠くから有難うございました。暑い中本当に助けていただいてありがとうございました。まだまだ復興には時間が必要です。こうなってしまって何もお礼する事はできませんが、出荷できなくなった桃をみなさん持って帰ってください。」

という挨拶。何とも胸がいっぱいになりながら、みんなで桃を大切に持ってバスに乗りました。

現地で頂いた桃。
「もっと活動したい」ボランティアの強い思い

京都へ帰るバスの中では、アンケートを書く時間があり、京都につく頃に共有されました。お手伝いの経験も大事でしたが、受け入れてくださった現地の方の姿勢にも大きなものを頂いたと思います。

多くの人は、「もっと長く作業時間があればよかった」と書いていたそうです。今年の猛暑や、現地の状況を考えると時間に制限があるのも、よくわかります。しかし、もっと活動したいというボランティアさんの強い気持ちもよくわかる結果でした。

豪雨被害の爪痕を残す、岡山県真備町のようす(撮影:広瀬)

9月25日現在、真備町の避難所で生活している人は、244人となりました。当初の2600人からすると、随分減りましたが、まだまだ復興には時間がかかりそうです。

 

豆知識 災害ボランティア活動の変遷

阪神淡路大震災と「ボランティア元年」

1995年に阪神淡路大震災が起きました。その時全国から救援のため駆けつけたボランティアは、兵庫県の推計では震災から1年間で延べ約138万人だったそうです。この年の12月、「ボランティア」という言葉が初めて法律に明記され、「ボランティア元年」とも言われるようになりました。

被災者のニーズとボランティアを調整する「災害ボランティアセンター」

阪神淡路大震災では、ボランティアが果たした役割は非常に大きかったのですが、その一方で、被災者のニーズとボランティアをつなぐコーディネート機能の不在が課題となりました。このことをきっかけに「災害ボランティアセンター」と言うしくみが作られるようになり、最近では発災からすぐに設置されるようになっています。

 

防災・環境教育のこれから
〜過去から学び、未来に活かす〜

各地に伝わる先人の「防災の知恵」に学ぶ

現地の新聞記事から、真備町の倉敷市立川辺小学校には、昭和51年の記録的な大雨による水害を受けて設置された石碑が立っていることを知りました(大人の膝下くらいの水位を刻んでいるそうです)。

この地域で使われている小学校の副読本には、今回決壊した小田川の主流である高梁川の改修工事の歴史が書かれていて、先人の知恵で安心して暮らせるようになったとの内容が記されているそうです。

この地域に限らず、日本のさまざまな地域でこのような副読本はあるのでしょう。学びの中で、「だからこれからは大丈夫」とするのか、「過去の経験から、この場所は水害のリスクが高いところ」と考えるのかでは、命を守るための行動は変わってきます。

これから深刻になる地球温暖化のリスクも

他方で、過去の経験からは考えられないような気候災害も起きるようになってきています。科学者は、猛暑、豪雨、台風などといった極端な気象現象と地球温暖化との関連を指摘してきました。今すぐCO2を全く出さない生活をみんなが実践したとしても、地球温暖化はすぐには止まりませんし、深刻な気候災害のリスクもしばらく続くことになります。

先人の苦労や功績とともに、気候変動がもたらす自然災害のリスクを知ることが大切です。地球温暖化の緩和・適応を考えていく環境教育・防災教育を積極的に取り入れていく必要があると私は考えます。

 

豆知識 地球温暖化の緩和と適応

緩和 省エネルギー、化石エネルギーから再生可能エネルギーへの転換などによって、地球温暖化の原因物質である温室効果ガスの排出量を削減し、地球温暖化の進行を防ぐこと。

適応 進行する地球温暖化に対して自然生態系や社会・経済システムを調整することにより温暖化の悪影響を軽減すること。例えば、温暖化の影響による海面上昇に対応するため、沿岸に高い堤防を設置したり、作物の作付時期の変更などの対症療法的対策など。クールビズも適応の一種だが、同時にエアコンの設定温度を低くしすぎないようにすることで緩和(ここでは省エネ)の効果も同時に得られる。

 

自然エネルギー100%宣言事例 〜自治体〜

皆さんこんにちは!

気候ネットワークインターン生の塚本です!

自然エネルギー100%プラットフォーム発足に際して、すでに100%宣言をした団体を、インタビュー内容を基に連続コラム形式で掲載していきます。

第一弾として、宝塚市の事例を取り挙げていきます。

自然エネルギーの街、宝塚市

皆さんは宝塚市と聞くと、どのようなイメージを抱きますか?(手塚治虫博物館)

宝塚歌劇、温泉、手塚治虫が育った街、高級住宅街などなど様々な名所や有名どころで溢れる宝塚市ですが、実は、自然エネルギーの導入に大きく力を入れている自治体でもあるんです!

宝塚エネルギー2050ビジョンにおける自然エネルギー活用目標

宝塚市は、太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入を進めていくための道筋として「宝塚エネルギー2050ビジョン」を策定しています。

詳しくはHPを見ていただければなと思いますが、簡潔に説明すると、省エネを進め、エネルギー消費量を減らした上で、再生可能エネルギーの自給率を上げることなどを長期目標として掲げています。

(宝塚市エネルギー長期目標値、宝塚エネルギ−2050ビジョンより)

上図の通り、宝塚市はエネルギー政策目標として2050年までに家庭部門・業務部門・産業部門において自然エネルギー電力及・熱活用率100%という野心的な目標を掲げています!

本当に100%を達成できる?

2050年までに電力・熱活用率100%を家庭・業務・産業部門において達成するというのは、他の自治体と比べてかなり進んだ目標であると言えます。

この高い目標をどのように達成していくのか、宝塚市地域エネルギー課職員の方に教えていただきました。

熱活用率100%の見通しは現状としては厳しい、、

宝塚エネルギ−2050ビジョン進捗状況によると、2015年度の数値は0.3%で、基準年度の2011年0.3%と比べると横ばいであることがわかります。

2015年の数値が0.3%であるのに対して、2050年の数値は100%となっています。

上記の目標をどのような施策の元に進めていくのか、担当者によると、「市内の家庭・業務・産業部門における太陽熱利用機器(集熱器や蓄熱槽を用いて、太陽エネルギーを冷暖房や給湯システムなどに活用する。)を大幅に導入していくことを施策の一つとして考えている。ただ現在抱えている問題として、公共建築物での導入には幾つもの制度が絡み合っていることに加えて、施設管理者への説明など様々な障壁が立ちふさがっています。現状としては熱利用100%達成に向けた先行きは不透明ですが、引き続き100%達成に向けて取り組んでいく次第です。」とのことです。

電力活用率100%に向けた方策

宝塚エネルギ−2050ビジョン進捗状況によると、2015年度の数値は13.2%で、基準年度の2011年10.6%と比べると2.6%増加したことがわかります。

また、2015年の数値が13.2%であるのに対して、2050年の数値は100%となっています。

熱利用よりは現状の数値が高いものの、それでも短期間での急激な数値上昇が見込まれることに変わりはありません。

100%達成に向けた施策としては、補助金制度を活用した市民・市内の事業者による太陽光発電設備導入(下写真がその一例)、市役所本庁舎の100%再エネ化、避難所を含めた公共施設での再エネ利用率の増大などなど多岐に渡ります。

上記の施策を効率的に行うための具体的な取り組みとして、再エネ相談窓口の設置、地元金融機関との連携による再エネ導入への支援、公共建築物における屋根貸しと税優遇の実施など、様々なアクターを巻き込んでの取り組みを行っていく見通しです。

(宝塚市すみれ発電3号機写真)←「宝塚市市民発電所設置モデル事業」により実施!

チャレンジ20目標!

100%という目標値の実現は長期にわたるため、その中間段階での進捗状況を図る目安となる「チャレンジ目標」を宝塚市は設定しています。チャレンジ20目標は、2020年までに達成する目標であり、その一例として1万kWの太陽光発電を新たに導入することが掲げられています。

またチャレンジ20目標の進捗確認が、2020年に宝塚市議会にて行われる予定です。

現状では、目標達成に向けて「すべきこと」は上記に示してきたように明確化されていますが、「どのように誰が具体性を持って進めていくのか」ということは曖昧なままでした。こう言った現状を是正するため、2020年という一つの契機に議論を活発化していくことが求められます。

市民が活用しやすい制度環境づくりを

インタビューの最後に、担当者の方から今後の課題についてお話ししていただきました。

「自然エネルギー100%という壮大な目標を達成するためには、市民の方々との協働が不可欠です。しかし、現状としては市民の方々が自然エネルギー拡充に資する環境として、優れているとは言い難いです。太陽光発電設備に対する補助金制度を整えても、そもそもそのことを知らない市民の方がたくさんいらっしゃる。自然エネルギー拡充に向けた講演会を何度か市内で行っても、人数が少ない事はおろか、参加者の八割ほどが毎回同じ市民の方々というのが現状です。

それでは市民の方々に協力してもらう事は出来ません。行政が抱く思いをいくら伝えたところで、市民の方々に理解していただく事は難しい。大切なのは伝え方で、分かりやすく説明し、市民の方々にとってのメリットを提示することが求められています。また、仕事や時間の関係でアクセスしづらい労働者層の方々や学生の方々といった様々なセクターを巻き込んでいくことも重要であると感じています。

壮大な目標であることは重々承知しています、その上で目標を達成するためには地道な取り組みが求められます。分かりやすい情報開示を行い、より多くの方々を巻き込み、初めは小さなうねりでも、徐々に大きな流れを作っていくことを意識していきたいと思います。」

自治体は今後の日本のエネルギー問題を支える大切なセクター

自然エネルギー割合の増大に取り組んでいる自治体は、宝塚市だけではありません。福島県、長野県など、少しづつですが野心的な目標を掲げる自治体が増えてきています。

福島原発事故後、分散型電力システムの必要性が高まってきています。それらを支えるのは大手の電力会社ではなく、地元の企業が地元のエネルギー資源を使って電力を作り、地元に電力を供給することが望ましいのではないでしょうか。

また、地方分権が進み、自治体がそれぞれのエネルギー政策を持ち、それぞれの実態に合った取り組みが進められてきています。市民、自治体、企業等の多様なステークホルダーが一丸となって地域のエネルギー問題について議論し、全体が納得できるようなエネルギー社会を作っていきたいものです。

そのためにも、自治体が市民とともに透明性のある制度づくりを行い、全セクターが地域の自然エネルギー拡充に資するような環境づくりをすることが期待されます。

参考文献:

・宝塚市地球温暖化対策実行計画概要版(区域施策編)、宝塚市環境部地域エネルギー課発行

・宝塚エネルギー2050ビジョンhttp://www.city.takarazuka.hyogo.jp/kankyo/energy/1014261/1010471.html

インターンを通して〜気候変動対策の何が問題か

こんにちは。

東京事務所インターンの愛琳です。

2017年3月から気候ネットワークでお世話になっていましたが、2018年7月いっぱいでインターンを終了しました。9月からはドイツのフライブルク大学で修士課程にすすみ、環境ガバナンスについて勉強します。1年半弱の活動を通して、わたしたちをとりまく気候変動問題について個人的に感じたことお話しします。

まずは自分の国のことを知る

 そもそも気候ネットワークでインターンをしようと思ったのは、私自身があまりにも日本の気候変動対策をめぐる動きについて疎すぎると感じてことにあります。

 当時インターンを始めた頃は、大学4年生になる直前で、周りには少しずつ内定をもらう子が出てきている頃でした。私は、海外の大学院に進学し、気候変動問題に関わる仕事をしたいと決めていたのですが、ふと「そういえば私って日本のことをどれくらい知ってるだろうか」と感じました。専攻が国際関係論だったこともあり、私も周りの友人たちも常に世界情勢ばかりに目を向けてきたものの、じっくり自分の足元について考えたことはなかったなと、焦り混じりの気持ちで始めたインターンでした。

 半蔵門に通うようになってすぐの頃に、早速「日本の石炭火力問題についてわかりやすくプレゼンする」というタスクがありました。はじめは「自分もまだ何も知らないのに人に伝えるなんてできない!」と思い焦りましたが、まさに「働きながら学ぶ」スタイルで、自分自身も問題について認識を深めるいい機会になりました。

 これまでの活動を通して、私が個人的に「ここが問題だよなあ」と感じたことが三つありました。それについて少し紹介します。

何が問題か:「流行」としての気候変動問題

 気候ネットワークでインターンをするようになってから、あらゆる場面で「若い人の関心が…」という話を伺いました。自分にもできることはないかと思い、まずは友人たちと話してみようと思いました。すると、ほとんどの友人が口をそろえて「気候変動?まあ小学生くらいの頃は授業なんかでもやったけど、そのあとはほとんど、ねえ」と言いました。

 思い返してみれば、わたしも小学生の総合学習で少し習った記憶で止まっているような気がします。そのあとは「エコカー減税」とか「省エネ家電」とかのフレーズのみで、議論のテーブルに上がっていることはあまりなかったように感じます。ある一人の友人は、「むかしは公害とか京都議定書とかあったから、そういう問題って”流行ってた”けど、いまはあんまりだよね。大事なのはわかるけど。」とまで言いました。

 たしかに、今の日本社会は「経済成長」という言葉がある種のトレンドのようになっているように感じます。ただ、気候変動問題は、流行り廃りの問題ではなく、私たちの未来を脅かす危機です。人々の関心が薄れようが高まろうが、その危機は着実にこちらに迫ってきているということを深刻にとらえなくてはいけないのではないか、と痛感しました。

何が問題か:国家の役割

 気候ネットワークでの活動の中で、とてもCO2排出量の多い石炭火力発電所の建設を推進する電力会社や国の政策のなかには、いわゆる成長戦略の一環、燃料費が”安い”ため経済的である、といった文言がいたるところにちりばめられていました。もちろん、正しく分析すれば石炭が経済的ではないことは明らかです。ただ、石炭の問題に限らず、人間にとって、長期的な価値を考えて目の前の利益をあきらめるのは難しいことです。地中に埋もれている石炭が現時点で安ければ、使ってしまえとなってしまいます。

 しかし、それではいずれ自分たちの首を絞めることになります。それを防ぎ、より理性的な判断を下すために、集団で行動するのではないでしょうか。とくに国家はそのためにあるといっても過言ではありません。

であるにもかかわらず、日本において石炭火力を推進する主体は、国家なのです。エネルギー基本計画のなかで堂々と石炭火力をベースロード電源として位置づけ、本来は歯止めになるべき環境アセスメントは形式上にとどまり、さらには国外にも石炭利用技術を輸出しようとしています。これは国としての機能を果たしていないといえるでしょう。

 石炭の利用による利益は、利用しないことによるメリットの比ではありません。目先の利益だけを考えて行動するようでは、この国にとって価値のある成長は見込めないのではないかと感じました。

 

何が問題か:無気力

 気候ネットワークに入るまで、欧米や数十年前までの日本と比べて、今の日本は市民社会の力がとても衰弱しているものだと思っていました。

 たしかに、データだけで見れば相対的に弱いような感があります。友人たちとの会話の中でもよく「たとえばわたしが石炭に反対、って表明したところでさ、それくらいじゃ何も変わらないんじゃないの?」「たとえばわたしがエアコンを使わないようにしたところで、どれくらいの変化があるかわからないよね」と何度も言われました。気候変動問題・エネルギー問題は、「規模が大きすぎるから個人でできることはない」という無気力感が蔓延していると感じました。 

 少なからず私もその点にはフラストレーションを抱いてた時期がありました。ただ、反対運動によって石炭火力発電所の新設計画が中止になった、あるいは大きく注目を集めているケースを間近でみさせていただいたことにより、そのようなモヤモヤは払しょくされました。

 わたしは主に東京湾周辺の石炭火力発電所の計画に対する反対運動の会(考える会)の活動をサポートしてきました。東京湾周辺では、千葉県市原市の計画が中止になったものの、依然として袖ヶ浦・横須賀・蘇我に大きな計画があります。考える会のメンバーは、少ない人数でも精力的にそして組織的に活動を続けています。それをしのぐような勢いで計画が推し進められていることは大きな問題です。

 しかし、私の友人や、きっと多くの人が思っているような「個人でできることがない」という無気力は正直お門違いなように思います。問題は、「共に行動してくれる人が少ないから」という点にあると感じました。「どうせかわらない」といった言い訳まがいのことをこぼす前に、まずは行動を始めている人たちに賛同する、自分の意思を表明するといった簡単なことでも、大きな力になるのだと思います。

これから

 さきほども書いたように、わたしはこれからドイツのフライブルク大学で修士課程にすすみます。ずっと関心のあったアフリカ諸国の都市における気候変動問題とエネルギー政策について学ぶ予定です。これだけ日本のことを言っておいて海外のことをやるの?と言われそうですが、気候変動問題は地球規模の問題です。わたしが最大限貢献できる場所は、いまは日本国内ではないと思っています。

 それでも、気候ネットワークでの活動を通して学んだことはこれからとても大切になると感じています。世界中から集まる学生たちと議論をするうえで、日本における現状とその問題を自信を持って話せるでしょう。また問題点だけでなく、日本にはこのように活動する人々がいるという紹介もできます。外から自分の国を見つめなおすことで、これまで見えてこなかったことも分かるかもしれません。

 日本の石炭問題の深刻さにため息をつくようなことも何度かありましたが、それに圧倒されずに忍耐強く取り組むスタッフ、考える会のみなさんの姿はこれからわたしが目指すべき姿だと感じました。皆さんに負けずに私もドイツでがんばります。

大阪ガス・東京ガスは原発推進!?“脱石炭”も同時にすすめよう!

京都事務所の山本です。この間、京都は猛暑に襲われており、連続猛暑日は、12日間を記録しました。祇園祭・花傘巡行も暑さで中止となるほどです。温暖化の深刻さを実感します。

電力小売全面自由化。大阪ガス・東京ガスは脱原発か?

2016年4月に電力小売全面自由化がスタートしました。その際、脱原発のためにはまず「脱・東京電力」「脱・関西電力」をしようとの訴えが多くありました。あれから2年が経過しましたが、現状はどうでしょうか。

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自然エネルギー100%をめぐる世界の動向と日本

京都事務所の伊与田です。

2018年6月にパシフィコ横浜で開催された太陽光発電の展示市「PV Japan 2018」にて、セミナー「自然エネルギー100%をめぐる世界の動向と日本」が行われました。

このセミナーでは、環境エネルギー政策研究所(ISEP)自然エネルギー100%プラットフォームの古屋将太さんが「自然エネルギー100%をめぐる世界の動向と日本」と題して講演。その後、質疑応答が行われました。太陽光ビジネスの関係者が多いPV Japanとあって、立ち見も出るほどの盛況でした。この記事では、そのセミナーの様子を紹介します。

当日発表資料(PDF)

パリ協定の合意と自然エネルギーの急拡大

2015年12月、国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で、気候変動に関するパリ協定という国際条約が合意されました。もともと、COP21での合意は難しいとの声もありましたが、実際には実現したのです。その原動力のひとつが自然エネルギー100%でした。

気候変動枠組条約事務局長(当時)のクリスティアナ・フィゲレスさんに「自然エネルギー100%に賛成しますか?」と尋ねたところ、彼女は「賛成する」と答えています。

Photo: Global 100% RE

国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の報告によると、近年、再生可能エネルギーのコストが急激に低下しています。固定価格買取制度などの支援政策によって急速に自然エネルギーの普及が進み、普及が進むことでコストが下がり、コストが下がることでさらに普及が進むというサイクルがまわりはじめたためです。

例えば、太陽光発電のコストは、2010年から2017年にかけて、73%も価格が低減しています。風力発電や蓄電池などでもこのようなコスト低減の傾向が進んでいます。

出典:IRENA(2018)Renewable Power Generation Cost in 2017

自然エネルギー100%を後押しするマルチステークホルダーキャンペーン

このような動きを作り出すために活動してきた団体がたくさんあります。そのひとつが、2014年にISEPなどが始めたグローバル自然エネルギー100%キャンペーン(Global 100% RE)です。具体的には、自然エネルギー100%に関する会議を開催したり、政策決定者に情報提供したり、自治体による100%の実現可能性の検討などを行いました。ニューヨークで行われた大規模な街頭のマーチやデモでも、自然エネルギー100%のロゴを掲げて、自然エネルギー100%をめざそうという声をあげました。先ほど紹介したフィゲレス条約事務局長など、さまざまな著名人も賛同しています。日本では、菅直人元総理も、自然エネルギー100%に賛同しています。

世界で広がる「自然エネルギー100%目標」

世界では、国として、都市として、自然エネルギー100%を次々と掲げるようになってきています。デンマークのコペンハーゲン市やスウェーデンのマルメ市、ドイツのミュンヒェン市、カナダのバンクーバー市、米国のハワイ州、オーストラリアのシドニー市などです。各国の首都のような大きな都市でも、自然エネルギー100%宣言をするところが増えています。中には、電力だけでなく、熱、輸送のすべてを自然エネルギ100%にする目標を掲げているところもでてきています。

デンマークがめざす脱化石燃料と自然エネルギー100%

デンマークでは、超党派で、2050年までに国として脱化石燃料=自然エネルギー100%への転換をめざすことが合意されています。2020年までに電力の50%を風力発電で賄うという目標を持っていますが、すでに2017年は約44%になっています。方向性を国がはっきり出すことで、さまざまなセクターがリスクをとって、自然エネルギー導入に取り組みやすくなることを表しています。デンマークの首都のコペンハーゲンでは、2025年までに、つまり国よりも早く、電力、熱、輸送を自然エネルギー100%で賄うという目標を持っています。自転車で移動しやすいまちづくりなど、都市計画と100%自然エネルギーの取り組みを上手く統合しています。

カナダやスペインでも自然エネルギー100%

カナダのバンクーバー市も、2050年までに電力・熱・輸送を自然エネルギー100%で賄う目標を持っています。バンクーバー市の100%に向けた取り組みの動機のひとつとして、気候変動への対応があげられます。海に面したバンクーバーの地理条件のもとでは、海面上昇はもちろん、極端な気象変化など、市民が気候変動の影響を直接受けるリスクがあることを認識した上で、都市自らがエネルギー問題に取り組むという姿勢があります。バンクーバー市は、自然エネルギー100%の目標を設定した上で、実現に向けたアクション・プランも策定しています。

スペインのバルセロナ市は、ソーラー・オブリゲーション(太陽エネルギーの導入義務づけ)などの政策で知られていました。最近、都市の新しいエネルギーモデルとして、「エネルギー主権(Energy Sovereign)」というコンセプトから、公共と市民もエネルギー生産の担い手になろうという発想も取り入れています。まさに、消費者(コンシューマー)×生産者(プロデューサー)=プロシューマー(消費しながら生産する人々)です。自治体新電力としてBarcelona Energiaという事業体を設立したり、太陽光発電の自家消費を増やすためのインセンティブを委員会で検討しています。

グローバルなビジネスのイニシアティブ「RE100」

CAN-Japanを中心に展開している「自然エネルギー100%プラットフォーム」とは別に、RE100というイニシアティブも展開されています。グローバルな、影響力のある大企業が、再エネ100%に舵を切っているのです。日本では、リコー、積水ハウス、アスクル、ダイワハウス、ワタミ、イオン、城南信用金庫が参加。それに加えて、日本の外務省、環境省もRE100参加の意思を表明しています。数年前は、日本で再エネ100%と言うと夢物語のように受け止められていましたが、日本でも多くの企業が検討をするまでになってきているのです。

自然エネルギー100%プラットフォームも宣言・賛同募集中

自然エネルギーは本質的に「エネルギーデモクラシー(エネルギー民主主義)」という考えに沿うものなので、できるだけ幅広い分野から多くの人たちが参加して進めていくことが大事です。そういったことから、日本でもマルチステークホルダーで自然エネルギー100%を推進するため、グローバルに展開している「自然エネルギー100%プラットフォーム」の日本版を2017年から展開しはじめました。

中心的な活動として、自治体、企業、NGO、教育機関等の団体による自然エネルギー100%宣言の登録を受け付け、マップ上で公表しています。2018年6月時点で、プラットフォームでは、中小企業、自治体、大学など、9主体の宣言があります。特に、千葉商科大学は、学長の原科幸彦先生が学長プロジェクトとしてリーダーシップを発揮され、国内の大学としてはじめて自然エネルギー100%宣言を打ち出されました。

企業、自治体、大学に限らず、ぜひ幅広く多様な主体が100%宣言に向けて検討をはじめてもらえればと思います。また、具体的な進め方については、自然エネルギー財団が「自然エネルギーの電力を増やす企業・自治体向け電力調達ガイドブック」を発表している他、グリーン購入ネットワークも「エコ電力特集」で紹介していますので、参考にして下さい。

今すぐ100%にはできないかもしれないけど、長い目で見て、自然エネルギー100%をめざそうという主体を増やしていきたいと考えています。

どうやってめざす? 自然エネルギー100%

古屋さんのプレゼンテーションを受けて、フロアから「どんな方法で自然エネルギー100%をめざすのが実効的ですか?」との質問があがりました。

古屋さんは、「まずは、自然エネルギー比率の高い電力会社を選ぶことが効果的です。また、電力分野での自然エネルギー100%をめざす場合は、グリーン電力証書を購入するという方法もあります。もし『自然エネルギー100%宣言に興味があるが、どのように取り組めばいいかわからない』と悩んでいるということであれば、まずは自然エネルギー100%プラットフォームのウェブサイトから、ご相談下さい。」と答えていました。

日本でも自然エネルギー100%のうねりをつくっていくため、ぜひ自然エネルギー100%宣言・賛同を!また、自然エネルギー中心の電力会社への切り替えを進める「パワーシフト・キャンペーン」への参加も広げていきたいですね。

 

執筆:伊与田昌慶(気候ネットワーク)

自然エネルギー100%プラットフォームの記事を転載

海での温暖化現象:グレートバリアリーフの危機を救え

東京事務所の鈴木です。

2016年に、世界遺産グレートバリアリーフのサンゴ礁の白化現象が大きな話題となりました。その後も、毎年夏になると海水温の上昇などによるサンゴ礁の被害が報道されています。引き続き危機的状況にあることが調査研究によって明らかとなっています。

グレートバリアリーフの被害状況:最新の調査から

2016年はサンゴ礁群の約3割が死滅

世界的なサンゴの白化現象は、1998年と2002年にも発生していましたが、2016年の被害が突出していました。2018年4月に科学誌natureに掲載された論文には、2016年の記録的な熱波が、これまで考えられていたより広範囲に及んでいると述べられています。2016年にかつてないほどの壊滅的被害を受けたグレートバリアリーフのサンゴの白化現象は、リーフに生息していた3,863ものサンゴ礁群の29%を死滅させました。サンゴ礁の回復には時間がかかりますし、熱帯の海の生態系にどのような影響をもたらすかが懸念されています。

世界気象機関(WMO)によれば、人間による化石燃料燃焼・CO2排出等の影響で、2016年の地球平均気温は、産業革命前と比べて1.1℃高かったそうです。さらに温暖化が進み、地球の温度が2℃以上上昇した場合、熱帯の海が海洋生物を育む力が損なわれ、結果として海洋全体の生態系に大きな影響をもたらすと警告を発している研究者は少なくありません。

オーストラリアのジェームズ・クック大学(James Cook University)を拠点とするサンゴ礁研究センターのTerry Hyghes所長は、「グレートバリアリーフでは2016年3~11月の9カ月間で約30%のサンゴが死滅した」と発表しています。Hyghes氏の研究チームは、2016年に海水温が上昇してサンゴに共生する褐虫藻が抜け出してしまい、サンゴが白化する現象が観察された後、人工衛星を使って2,300キロにおよぶグレートバリアリーフの被害状況を観測しました。上空からの観測により、2016年の3月から4月の間に白化現象が広域で生じていることがわかりました。

熱波による白化現象が、サンゴの大量死につながった

また、同チームは高温による被害の詳細を見るため、同年3月と4月、さらに8ヶ月後により広範囲な海中調査も行いました。その結果、特に海水温が高かった北部での被害が大きく、約3分の1が熱波襲来から間もなく死滅。他の海域では、褐虫藻に去られたサンゴがゆっくりと死滅していたこと、サンゴの中でも枝状やテーブル状など複雑な形を形成する比較的成長の早い種の被害がひどかったことなどがわかったのです。研究チームは、熱波による白化現象が、サンゴの大量死につながったと結論付けています。

サンゴの大量死は、多様性に富んだサンゴ礁を劇的に変化させました。現在、海水温の上昇を耐え抜いたサンゴが生き残っています。多くの種が失われ、サンゴ自体の多様性が乏しくなってしまっただけでなく、そこに生息する海洋生物に多大な影響を与えているのです。

サンゴ礁の未来

グレートバリアリーフ以外の海域のサンゴ礁が同じような惨状に陥るか、海水温の上昇に適応して生き残るかは、わかりません。サンゴの適応力は固有種の生活史や熱耐性、生息する環境によって異なるからです。地球温暖化は明らかにサンゴ礁にとって「ストレス」ですが、新しい環境に順応しているサンゴがいることも立証されつつあります。一方で、海水温が極端に上昇する頻度はかつてより高くなっているだけでなく、海洋の酸性化や海面上昇といった別のストレスもサンゴの生息・回復に影響をおよぼしています。

リーフの約3分の1が白化してしまったほどの2016年に白化を免れたサンゴはわずか10%にも届きませんでした。以前の海水温上昇時に生じた大規模白化での際に40%以上が免れたのと比べても被害の大きさが明らかです。それでも、生き残ったサンゴは温度耐性が高いなど、死滅した種に比べて温暖化に強い種であるとも言えます。残ったサンゴを早急に保護し、サンゴ礁の回復を図らなければなりません。

グレートバリアリーフは、熱帯サンゴ礁での温暖化被害の象徴にすぎません。その他のさまざまな海域のサンゴは、表面的に見えない水中下で、じわじわと、しかし着実に温暖化の脅威にさらされています。だんだんと上昇する海水温からサンゴ礁を守り、最大限回復させるためには、温暖化を抑制するべく、温室効果ガスの削減に取り組むといった統括的な管理と、サンゴの植付による再生の促進のような地域の管理の両方が不可欠です。

オーストラリア政府の取り組み

最後に、オーストラリア政府のグレートバリアリーフ保護の取り組みを紹介しておきます。研究結果を受け、2018年4月28日、オーストラリア政府は、気候変動の影響からグレートバリアリーフを守るために新たに5億豪ドル(約413億円)を拠出すると発表しました。この予算案はグレートバリアリーフの保護に対する支出としては過去最大です。その後の5月9日、情報サイトCNETが、オーストラリア政府の2018年度予算にグレートバリアリーフ研究基金(GBRRF)への4億4380万豪ドルと、グレートバリアリーフ海洋公園局(GBRMPA)への5600万豪ドルが割り振られたと報じています、この資金は、白化現象への対策とともに、サンゴを食い荒らすオニヒトデへの対策も含めたグレートバリアリーフの保護活動に使われます。貴重な生態系であり、ユネスコの世界自然遺産でもあり、観光資源でもあるグレートバリアリーフがオーストラリアにもたらす経済効果を考えれば、まだ少ないのかもしれませんが、これでサンゴの研究・保護・再生が進むことを期待します。

しかし、局地的な保護活動を行ったとしても、地球全体で温暖化が進めば、根本的な解決にはならないのではないでしょうか。現在、各国政府が掲げる温室効果ガス排出削減目標がすべて達成されたとしても、今世紀末までの平均気温上昇は3℃ほどになってしまうと言われています。繰り返しになりますが、サンゴという種の多様性を次世代に伝えるためには、サンゴの適応策だけでなく、温室効果ガスの大幅削減が必要でしょう。

市民のチカラで、気候変動を止める。