東京事務所の桃井です。

アイスバケツチャレンジがブーム

この夏、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の撲滅と寄付を訴え、有名人が次々と氷水をかぶるパフォーマンス「アイスバケツチャレンジ」がネットでの映像などを通じて話題になりました。いろいろな賛否が出る中で、そろそろブームも収束しつつありますが、このキャンペーンでALSという難病について世界中に知れ渡り、多額の寄付が集まったという点で成功だったと言えるのではないでしょうか。そんなキャンペーンのブームに乗じて、今回は書き留めておきたいことがあります。

ALSと須田さん

実は、気候ネットワーク副理事長の須田春海さんが、2009年にこのALSを発症し、現在、東京都内のご自宅でこの病気と闘っています。私は須田さんがこの病気にかかるまで、ほとんど病気のことは知りませんでした(ホーキング博士と同じ病気と言われて、「ああ、あの筋肉が固まってしまう病気か」とわかる程度でした)。ALSは筋肉が萎縮してだんだんと体の自由がきかなくなっていく神経系の難病で、治療法が確立していません。今、須田さんはすでに体のほとんどの部分を自分の意志で動かすことができず、喉を切開して人工呼吸器をとりつけ、筋肉が硬直していく恐怖と戦いながら毎日を過ごしておられます。

そのような中で、須田さんは、ほぼ毎日、共通のMLやブログなどでご家族やヘルパーさんの介助のもとにメッセージを発信されていますが、その内容は現政権に対しての危機感を中心に、中には気候変動問題などを憂うものもあります。体の自由がまったくきかない中で、一言発信することがどれほど大変なことか私たちの想像をはるかに超えるものだと思いますが、逆にその言葉に込められたメッセージの重さにも感じるのです。

気候ネットワークと須田春海さん

もともと、京都が本拠地である気候ネットワークに東京の事務所があるのは須田さんが主宰されていた市民運動全国センター(センター)に、気候ネットワーク前身の気候フォーラムの時代から東京オフィスを構えたのがきっかけです。センターには、今も10数団体にもわたる様々な市民団体がオフィスを構えており、そのほとんどの団体は設立で須田さんが関わった団体です。

私自身、気候ネットワークのスタッフになったのは2008年からですが、それ以前から(大学生の頃から)様々な団体に関わる中で、いずれの活動においても須田さんは重要なアドバイザーでした。様々な政治の情勢などを分析し、今何をすべきかを実に的確なアドバイスを投げてくれます。

”気候災害被害者のネットワークを”

 須田さんが数年前から気候ネットワークに投げかけられていたことの一つに、気候災害による被害者の全国ネットワークを作ったらどうかということがありました。

確かに今、夏の高温化による熱中症患者の増加、集中豪雨やゲリラ豪雨、大型台風などによる暴風・暴雨による災害、突風や雹など極端現象による被害、つい最近ではデング熱の感染など、かつてから温暖化のリスクとして呼びかけられていたことが現実のものになってきています。すでに多くの人が気候変動のリスクにさらされ、そのリスクは今後ますます高まってくるでしょう。単なる自然災害ということではなく、人間が排出した温室効果ガスが原因でこうした災害が巨大化しているわけで、気候変動の被害を受けているということの認識を持つためにも、”被害者”のネットワークを構築することは必要かもしれません。

つい先日の広島での土砂崩れで大きな被害があったときにも、須田さんは「異常気象、広島だけではない」と打ち込まれていました。気候変動の被害が具体的に顕在化してくることで、ダム・堤防・防波堤などの土木工事など含む適応策への要求が高まってくるのではないかと思いますが、一方で、温室効果ガスの排出を削減するという根本的な対策がままならないことについて国民的な議論をしていく必要があるでしょう。須田さんのご示唆を頭におきつつ、気候ネットワークとして何ができるのかを改めて考えていきたいと思っています。