こんにちは。京都事務所インターンのマーヴィンです。
気候変動の影響と途上国
社会的にも、技術的にも、資金的にも、気候変動に適応するための資源に乏しい途上国は、気候変動に対して最も脆弱な国々だとされています。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新の報告書によると、気候変動の影響は特に途上国において、貧困を悪化させ、人間開発(human development)*1を妨げると予測されています。
*1訳注:「人間開発が扱うのは国民所得の増減に留まりません。人間開発とは、人々が各自の可能性を十全に開花させ、それぞれの必要と関心に応じて生産的かつ創造的な人生を開拓できるような環境を創出することです」(出典:UNDP「人間開発とは」)
IPCCは国連機関によって設置された政府間機関であり、
IPCCの予測では、気候変動は、経済成長の鈍化、貧困削減の困難化、食料安全保障に脅威をもたらすばかりか、すでにある貧困を長引かせるとともに、新たな貧困を生み出しさえします。気温上昇は農作物の生産量減少や、特に農業経済に対する飢餓のリスクの増大、水不足といった深刻な影響を引き起こすでしょう。それはまた、食や水が安全でないために健康リスクの増加や、マラリアといった気候の変化の影響を受けやすい病気が広まるリスクをも増大させます。
このように、このように、気候変動は、農家や、
レジリエンス(回復力)の構築
~気候脆弱性フォーラム~
気候変動の脅威が増し、行動が必要になったことに応じて、気候変動に対して非常に脆弱な国々は、「気候脆弱性フォーラム(CVF)」を結成しました。CVFは、地球規模の気候変動に対処するために共に行動する、南南協力のためのプラットフォームとして提供される国際パートナーシップです。CVFは専門知識や経験を共有することを目的に、アジアやアフリカ、ラテンアメリカの途上国から構成されています。
2009年モルディブでの気候脆弱性フォーラムの第一宣言では、参加する21カ国が「我々の国々は気候変動の最前線におり、温暖化の影響を他地域より顕著に受ける」という声明を出しました。
CVFには、アフガニスタンやバングラディッシュ、バルバドス、ブータン、コスタリカ、エチオピア、ガーナ、キリバス、マダガスカル、モルディブ、ネパール、フィリピン、ルワンダ、セントルシア、タンザニア、東ティモール、ツバル、バヌアツ、ベトナムといった国が参加しています。
もし気候変動が3~4℃の地球温暖化への経路をたどるのであれば、これらの地域は人為起源の気候変動による最悪の影響に苦しむことになるでしょう。
気温の上昇と海水温上昇によって、年間の降水量がより極端になります。
降水量にむらが出ることで、東アフリカでは亜熱帯の乾燥地や半乾燥地が干上がると予測され、また極端に降水量が多くなることで南アジア(たとえばネパールやバングラディッシュ、インド)や東南アジア(たとえばミャンマーやタイ、フィリピン)でより強力なサイクロンが発生し、東アジアではモンスーンがより強くなる可能性があります。
実際、このような現象はもはやニュースではなく、我々や他の多くの途上国にとって厳しい現実なのです。
前代未聞の災害~台風ハイエン~
2013年11月、観測史上最も強力な台風ハイエンが上陸し、フィリピンで猛威をふるいました。台風による集中豪雨や暴風や大波は壊滅的な被害をもたらしました。それは街を壊滅させ、
台風ハイエンの生存者から成る団体であるピープル・サージは、自分たちが辛くも生き延びた話を語り伝えようとしています。台風の生存者の多くは全てを失い、家族はたがいに離れ離れになり、もはや家と呼べるものが何もありません。農民や漁師、労働者や都市の貧困者、低賃金労働者は、気候災害によってさらなる貧困へと追いやられていくのです。
ピープル・サージによると、多くの人々にはいまだに土地がなく、仕事がなく、公共サービスを受けることができず、布で作った住処や掘っ立て小屋に住んでいるといいます。台風の襲来から1年経ちましたが、復興・再生は遅々として進んでいません。救援活動が包括的に行われていないため、雇用や生活の手段がないことは、今でも大きな問題です。
フィリピン政府はすでに多大な努力を費やしていますが、
アフリカにおける不安定な食糧供給
アフリカでは、
国際農業研究協議グループ(CGIAR)によると、少し気候が変わるだけで、農家は深刻な影響を受けてきました。予想外の異常な豪雨が発生すれば、十分な計画が立てられなくなり、農作物生産量の減少につながります。
農業に依存した経済において、
小さな気候の変動もこれらの国々では人々と社会の発展に甚大な影響を及ぼすのです。
食料供給が不安定になるせいで、
南アジアへの影響
CGIARは、高い人口増加率と貧困のため、南アジアは気候変動に脆弱な状況に陥るだろうと指摘しています。
南アジアの経済は農業に強く依存しています。気候変動が進めば、干ばつの増加や、かつてないほどの洪水、熱波、そして農業生産量の減少に直面することになりかねません。
一方、低地は洪水で浸水する可能性がより高くなります。カルカッタやムンバイ、ダッカといったインドの都市部には4600万人が生活していますが、大規模な浸水の危険性があります。
バングラデシュは低地に位置しており、洪水やインド洋のサイクロンに対して非常に脆弱です。1991年には6メートルの高さの津波により約14万人の人が亡
気候変動対策を広く普及して社会的な優先順位を引き上げるため、
気候変動への大規模な適応
国連気候変動枠組条約(UNFCCC)は、
現在の資金支援は十分ではありません。裕福な国も貧しい国も気候変動に適応する必要があり、それには多くの費用がかかるでしょう。しかしながら、
技術移転や能力開発、リスク共有といった、
しかし、合意や国際協力が実現しなければ、気候変動と闘うための歩みが止まってしまうでしょう。
本記事の執筆者のマーヴィン・トレス・ラゴネラは、気候ネットワークのインターンです。フィリピンのアテネオ・デ・マニラ大学で修士を取得し、ASEAN大学ネットワークと京都大学間の交流プログラムのもと京都大学でエネルギー管理と持続可能性の転換に関する研究に従事しました。
(訳:インターン津田・井上)
*本記事の原文(英語)は、続きをご覧ください。