京都事務所の伊与田です。

猛暑や熱波、豪雨や水不足など、異常気象が日本でも世界でも大変な事になっています。そろそろ、これはマジでヤバいと思います。たくさんの人が言っていることですが、異常な気候はもう新たな日常になったといっていいのかもしれません。なんといっても、ここ最近、「観測史上●●記録」を量産し続けているのです。

日本、「観測史上●●記録」を量産!極端化する気候

最近の「記録破り」なできごと

最近のニュースから、気候の記録破りだったできごとをいくつか拾い集めてみました(本当はもっとたくさんありますが、一部抜粋です)。

  • 8月22日、鹿児島市で、37.4℃という観測史上最高気温を記録。他にも鹿児島の3地点で観測史上最高を記録
  • 8月22日、東京の青梅市で1時間雨量107.5mm、埼玉県所沢市でも1時間雨量76.5mmでそれぞれ観測史上最大
  • 8月23日、栃木県の真岡市で、1時間に90.5ミリの雨が降り、観測史上の最大記録を更新
  • 8月30日、台風10号が東北地方太平洋側に上陸したのは観測史上初
  • 8月、北海道に年間で3つの台風が上陸したのは観測史上初
  • 8月、北日本太平洋側の月降水量は平年比231%となり、観測史上1位の多雨
  • 8月の1ヶ月の間、日本に上陸した台風は4個で、平年の上陸数 0.9個を 大きく上回り、ひと月の上陸数の多さの記録で1位タイ

先月はかなりの頻度で記録が破られていることになります。市民生活や農業漁業などに被害もでていますし、怪我をされた方、避難中の方、亡くなった方もおられます。大変深刻な状況です。

「記録破り」が頻発するようになったのは比較的最近のこと

日本の最高気温のランキング 「記録的高温」は最近に集中

気象庁のウェブページには、最高気温の高い方からのランキングが掲載されています。これによれば、日本の観測史上、最も高かった最高気温の上位24の記録のうち、20の記録が1990年以降に集中しています。現時点での国内の最高気温の観測史上最高記録は、2013年の高知県四万十市の41.0℃。ちなみに、ランキング中で最も古い記録は1927年愛媛県宇和島の40.2℃でした。

これらの「記録破り」の傾向は、長期的な気温上昇傾向を示していると思われます。都市化に伴うヒートアイランド現象の影響もありますので、高温化のすべてが地球温暖化のせいとは言い切れないでしょうが、今後も地球温暖化が進めばこのような傾向はますますひどくなるでしょう。

夏日、真夏日、猛暑日…その次は?

気象庁は天気予報などで用いる「予報用語」を定めています。予報用語では、日最高気温が25℃以上の日を「夏日」、30℃以上の日を「真夏日」、35℃以上の日を「猛暑日」と呼んでいます。もともと日最高気温が35℃以上の日をあらわす予報用語はなく、メディアでは慣例的に「酷暑日」という言葉が使われていたそうですが、2007年の予報用語の改正時、気象庁が正式に「猛暑日」を使い始めたのです。「慣例的に使われている『酷暑日』を使おう」という声もありましたが、「酷」という字は否定的なニュアンスがあるということで猛暑日を使うことになりました。

そのうち、日最高気温が40℃以上の日をあらわす言葉も必要になるのでしょうね…。あなたなら、何て呼びます?「熱暑日」とか、「超暑日」とか、「炎暑日」とか?

海外でも「観測史上●●記録」

さて、大変なことになっているのは日本だけではありません。海外でも記録破りが続発しています(こちらも、他にももっとありますが一部抜粋です)。

  • 5月、インドでは過去最高気温の50℃を観測、同国で最高記録
  • 7月、クウェートで54℃を観測、同国で最高記録
  • 8月、韓国も、ソウルなどで観測史上最高気温の記録を更新
  • 9月、北朝鮮で台風10号の豪雨によって史上最悪の洪水が発生し、川が氾濫

50℃以上なんて、もはやまともに生活できるとは考えられないレベルの気温です!私たちが「熱い」と感じる風呂の温度をはるかに超えるレベル…。これは恐ろしい話です。今後温暖化が進めば、暑すぎて人が住めない地域というのも増えていくのかもしれません。

2014年、2015年の地球平均気温は、観測史上最高を記録

さて、実は、地球平均気温も、記録更新が続いています。2014年の年間地球平均気温は過去最高記録を破り、2015年も2014年の記録をさらに上回りました。下のグラフはNASA GISSのものです。19世紀から今日まで、平均気温が上昇してきており、特にここ数年の間に急激に上昇していることがわかります。

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出典:NASA GISS

人間が化石燃料を燃やしても燃やさなくても、自然の変動で年によって暑かったり寒かったりするものです。それが、ここまで記録破りな高温な年が近年に集中していると、やはりこれは尋常ではないと思うのです。

2016年も過去最高気温の記録を更新する見込み

そんな中、科学者は、2016年の前半6ヶ月の観測データから、2016年の地球平均気温が観測史上最高になる見込みと言っています。

ここまでくると、もはや「観測史上●●」が日常的なものになりすぎて、「記録破り」と言われても「ああまたか…」と何も感じなくなっていませんか?このことこそ、ほんとうにおそろしい話だと思うのです。

「気候変動」というサバイバル

単に「記録破り」というだけではありません。気候変動の影響と思われる深刻な危機は、すでに世界各地で目撃されるようになっています。

人の命を奪う気候関連災害

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国連国際防災戦略事務局(UNISDR)は、2005~2014年の間に発生した気候関連災害は、1985~1994年のほぼ倍になったと指摘するとともに、1995年以降だけでも気候関連災害によって60万人以上が死亡したと報告しています
。特に、貧しく社会的に弱い立場におかれている人々にその影響は深刻に現れています。

UNISDRの報告書はこちら

アジア地域の台風が強大化?

ロシアの永久凍土が溶けて炭疽菌の感染拡大。将来、永久凍土が溶けて病原体が露出?

蚊が媒介するジカウィルスがさらに拡大?

気候変動によって花粉症患者が増える

すでに村全体の移住を決定したところも

あるアラスカの村は、気候変動による侵食と洪水によって住むに適さなくなったとして、コミュニティ全体の移住を投票で決定したそうです。気候変動の影響によって移転を余儀なくされる可能性のある村は他にもある、とのこと。

気候変動が進行すれば人類の生存と平和が脅かされる

今回紹介した影響について、いずれも原因の100%が気候変動のせいだと言いたいのではなく、気候変動が進めばよりこのようなリスクがますます深刻化する恐れがあるのだ、と言いたいのです。特に、現在世代による大量のCO2排出をどうすることもできない将来世代がより深刻な影響を受けることを運命づけられるということは極めて深刻な問題だと思っています。

今後対策がとられずに温暖化が進めば、地球平均気温は産業革命前と比べて今世紀末までに約4℃も上昇するとされています。恐ろしいのは、地球平均気温が産業革命前からすでに約1℃上昇した現在において、すでにこのような傾向があらわれているということです。

果たして、4℃も気温が上がったら、地球環境は、人類は、いったいどうなってしまうのでしょうか?

これまで、私たちはその本当のリスクに十分に向き合ってきたでしょうか?

そして、これからは……?

 

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