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東アジア気候変動フォーラムin天津

東京事務所の桃井です。
9月21日に中国の天津で開催された「東アジア気候変動セミナー」に出席してきましたので、今回は少しその報告をしたいと思います。

日中韓の市民交流と東アジア気候フォーラム

今回の「東アジア気候変動セミナー」は、日本の東アジア環境情報発伝所、韓国環境運動連盟(KFEM)、中国の科学技術研究センターが共同で運営する東アジア環境情報ネットワーク(ENVIROASIA)の主催イベントとして開催されたものです。

三カ国の市民のネットワークを通じて、2010年からスタートしたのが東アジア気候フォーラムです。第一回目は韓国の光州市で、翌2011年の第二回目は日本の東京で開催されました。ちょうど東日本大震災の起きた年でもあり、このときは福島原発事故の被災者の方などからの報告も含めた原子力問題もあわせた特別セッションも設けられ「脱原発」にもフォーカスしていきました。原発問題はとりわけ中国での扱いがセンシティブではあるものの、この時を境に「脱原発と気候変動対策の両立」は毎回話題となるテーマになっています。そして、2013年には第三回目を中国杭州市で、そして昨年2014年に再び韓国光州で第四回目を行いました。

今回は、中国の環境保護団体のネットワークCCANのメンバー研修も兼ねて、北京、合肥、青海省、南京、杭州、麗江からメンバーが集まり、日中韓の気候変動政策や地域の取り組みについて情報交換をし、今後の連携について議論する位置づけで開催されました。

今年は、このENVIROASIAの15歳の誕生日ということで、ホスト国の中国科学技術研究センター代表の李力さんがお祝いのケーキを用意してくれて、盛大な祝賀パーティも開かれました。なんと、15年前、このネットワークの発足を中国や韓国の市民団体に呼びかけたのが、日本の東アジア環境情報発伝所代表の廣瀬稔也さんで、気候ネットワーク東京事務所のオフィスも同じ場所においているという御縁があります。廣瀬さんは、祝賀会でこの15年を振り返り、国際社会の中で政治的・経済的な情勢が大きく変化する中にあっても、草の根レベルで日本・中国・韓国の市民が互いを尊重してつながっていることの意味や気候変動をテーマに情報を共有しつつネットワークを育んできたことへの感謝の気持ちを語りました。

ENVIROASIA 15歳の誕生祝いにて 日・中・韓の代表者によるケーキ入刀
ENVIROASIA 15歳の誕生祝いにて 日・中・韓の代表者によるケーキ入刀

 

日中韓のINDCと課題を共有

さて、今回のセミナーは、COP21の直前でもあるので、第一部に基調講演「COP21に向けた課題」、第二部で各国のINDCについて、第三部で今後のアクションという構成ですすめられました。中国は中国気候変動行動ネットワーク(CCAN)の毕欣欣さん、韓国は韓国環境運動連合(KFEM)の李志彦さん、日本から私・気候ネットワークの桃井がそれぞれINDCについて発表しました。韓国と日本の発表では、それぞれの国のINDCが「2℃目標」を達成する上でも長期的削減に向けたプロセスとしても、公平性や野心度からみても不十分であると指摘していました。一方、中国のINDCについては、質疑の中で2030年にピークアウトというよりは、すでにピークアウトしているのが現実ではないかとの指摘が出て、石炭需要などについても実態を詳しく調査分析する必要性があがりました。

また、日本から参加した東北大学教授の明日香壽川さんは各国発表の総括をし、石炭火力発電所の開発に対しての海外融資で公的資金を最も投入しているのが日本で、次いで韓国、中国とこの三カ国が世界の中で石炭支援に最も資金を拠出していることをあげ、石炭融資の問題に東アジアの市民側も連携して言及してはどうかと問題提案されました。

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進行する東アジア環境情報発伝所の山崎さんと日中韓発表の総括と石炭問題に対しての提言をする東北大学の明日香壽川さん

市民の連携アクションに向けて

前半での議論をうけて、今各国ではどんなパリ会議に向けてどのようなアクションを実施しているのかを共有し、最後は山崎求博さんの進行により、市民側で連携していくアクションとして次のことがまとまりました。

1.11月28~29日のグローバルアクションデーで共同アクションを行うこと(日本ではClimate Action Now!キャンペーンとの連携)

2.石炭の問題に言及した東アジア市民による共同声明をCOP21前に発表すること

3.東アジア気候フォーラムのホームページを立ち上げ、運用を行うこと

4.それぞれ地域で実践する省エネ・再エネ対策などの情報をWEBを通じて共有していくこと

ということで、さっそく、日本に戻ってからもこれらの実行に向けた準備対応をしています。

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エクスカーションはカニ釣り!?

22日には、天津の郊外に移動して有機農業などに取り組んでいる村におじゃましました。ここでは、田んぼにカニを放し飼いにして害虫が増えるのを防ぐ「カニ農法」をしているのです。日本だと「アイガモ農法」は聞いたことありますが、カニはきいたことがありません。どうも最近の中国はなんでも農薬漬けになっているイメージがありますが、無農薬に取り組む村があることにも驚きましたし、カニを使うというユニークな方法もまた面白いなあと思いました。

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そして、観光客用にカニ釣り場も用意されています。釣り糸に鶏肉をクリップで挟んだものを垂らし、釣り場に落とすだけです。釣り場はカニで埋まっているのではないかと思うほど、入れ食い状態です。たった10分でこのとおり大漁でした。捕まえたカニは、残念ながら今回お持ち帰りできなかったのですべてリリースでしたけど・・・。

こうして、いろんな意味で充実した天津出張となりました。

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来年は日本開催!

さて来年、第5回東アジア気候フォーラムは、ホスト国が日本になります。今回の会議で、秋ごろに開催するということで合意がとられましたが、内容や具体的な開催日は今後の状況を見て決めていくことになります。また、開催場所についても、いくつかの候補地があがったものの、まだ確定できていません。アクセスが便利で、宿泊費もほどほどで、環境先進事例を中国や韓国の方に見てもらうことができ、おもてなしの精神でお迎えできる場所はいったいどこだろうかとなかなか決定できません。京都案が濃厚なのですが、なにせ秋の京都は宿代が高すぎる点で躊躇してしまいます。良いアイディアがありましたらぜひお寄せください!

※おまけ・・・・
カニ釣りや植林活動をしている間に日中韓のスタッフミーティングをしたのですが、村の民泊レストランの会議室はオンドルで、その横には石炭専用のストーブがおいてありました。”排ガスがでなくてクリーン”だと表示がありますが・・・。まだ市民の生活でも使われているところがあるのですよね。ちなみにそのストーブの横にある竈は薪専用でした。

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アースパレード2015の特設ページもできました!

東京事務所の桃井です。

「アースパレード2015」に向けて

今日は、午前中から東京の主婦連合会の会議室で、Climate Action Now!キャンペーンの賛同団体のみなさんと、11月28日に開催する「アースパレード2015」の企画会議を行ないました。

人類の未来をかけた国際交渉とも言えるCOP21。
この会議で、気候の危機を回避し、気温上昇を2℃未満に止めるための道筋をつくれるよう会議で合意をはかることが求められています。

そこで、COP21に集う世界のリーダーたちに向けて、気候変動問題を解決するよう、世界中の市民が一丸となって行動する日があります。今年は11月28~29日が世界のアクションデーとして、世界各地で気候マーチやデモが行なわれ、数千万人が参加する規模になると言われています。

ということで、日本でも、まずは東京と京都でその準備をすすめているところなのです。今日の会議で、少し企画が具体化してきました。これから猛烈に忙しくなりそうな予感がします。本当にいろんな方のお力をお借りしたいところです。

パレード専用サイトできました!

今日の会議を経て、パレードの素敵な特設サイトも公開しました!
それがこちらです!
トップにリンクされた、昨年のニューヨークでの気候マーチの動画で、その盛り上がりがよくわかると思いますが、日本でもこれから先当日に向けてたくさんの参加者を集めていきたいとおもっています。東京は11月28日、京都は11月29日です。今から予定を入れておいてください!

現在、ClimateAction Nowの賛同団体や、パレードの企画に参加してくれる人、ボランティアなど募集しています。また、東京や京都以外の地域でもパレードをやりたいというところがあったら、ご連絡くださいね。ぜひ多くの人のご参加をお待ちしています~。

 

欧州加盟国大使、日本の気候変動対策に失望?期待?

こんにちは。東京事務所の桃井です。

日本の温室効果ガス削減目標最終調整

2020年以降の温室効果ガス削減目標案(INDCs)の国連への提出が遅れている日本ですが、先週から政府が2030年の目標案を調整しているという報道が飛び交っています。主要新聞のタイトルを並べてみると次のとおりです。

  • <朝日新聞>温室効果ガス削減、25%程度で調整 2030年の目標(2015年4月24日)
  • <産経新聞>温室効果ガス削減目標、政府が25%程度で調整(2015年4月24日)
  • <毎日新聞>温室効果ガス削減:「約25%」案 欧州水準、遠く及ばず(2015年4月25日)
  • <読売新聞>温室ガス30年度26%減目標…EU上回る水準(2015年4月25日)

朝日新聞と毎日新聞には基準年が書いていませんが、読売新聞は2013年から26%程度しています。2005年比でみると25%程度ということでしょうか。これを、読売新聞の見出しでは「EUを上回る水準」などとしていますが、1990年比で少なくとも40%削減するというEUと比べて「上回る」とするのは完全にミスリードです。90年比でみると日本のこの目標値は17~18%減に相当します。つまり、毎日新聞の「欧州水準、遠く及ばず」の方が正確な評価でしょう。

気候ネットワークでも、24 日にエネルギーミックスの割合についての問題とともに指摘するプレスリリース「意欲のない温室効果ガス削減目標は受け入れられない 原発ゼロで温暖化対策の深掘りをすべき」を発表し、エネ庁の意見箱にも提出しました。たくさんの意見を多くの人たちからどんどん出していきましょう

欧州加盟国駐日大使からの日本へのメッセージ

ところで、昨年10月には2025年の削減目標を発表し、国連にもINDCsを先行して提出したEUですが、去る4月21日に、駐日欧州連合(EU)代表部とEU加盟国大使館の主催で、COP21に向けたセミナーが開催されて、大変興味深い議論が展開されていました。

セミナーでは、EU各国が取り組んでいる気候変動政策についての紹介や「気候変動への対応が経済に悪影響を及ぼすのか」という内容で2部構成で行われました。特記しておきたいのは、出席した駐日大使(ドイツ、デンマーク、フランス、スウェーデン、英国)からは、いずれも日本が省エネ技術など削減に貢献できるポテンシャルが高いにも関わらず、気候変動対策が後退していることに対して、早期に野心的な目標を掲げるべきだという投げかけがあったことです。

 また、欧州ではビジネスに長期的な削減目標をかかげることで、ビジネス界でも温室効果ガス削減に向けて大きく変革し、経済成長とCO2削減が切り分けられていることが強調されていました。何よりも政治的な長期的ビジョンをかかげたポジティブなシグナルが重要であるということだと思います。

 気候変動の危機や原発リスクの危機を共有することなく、2030年にも原発石炭に大きく依存している今のような政府の方向性は、ビジネス界に対するシグナルとしても混乱を与えるだけではないでしょうか。

出演者など

欧州代表部による報告ページもご覧になってください。

<パネルI> EU加盟国における気候政策の実施状況

  • 駐日ドイツ連邦共和国大使 ハンス・カール・フォン・ヴェアテルン氏
  • 駐日デンマーク大使 A.カーステン・ダムスゴー氏
  • 駐日フランス大使 ティエリ-・ダナ氏
  • 駐日スウェーデン大使 マグヌス・ローバック氏
  • 駐日英国大使 T.M.ヒッチンズ氏
  • モデレーター:駐日欧州連合代表部通商部一等書記官 ウリ・ヴィエンリッヒ氏

<パネルII> 気候変動対策:業界にとっての新たなビジネスチャンス

  • 日産自動車株式会社取締役 志賀俊之氏
  • リコー株式会社サステナビリティ推進本部顧問 則武祐二氏
  • ユニリーバ ジャパンCEO兼社長 フルヴィオ・ブアルネリ氏
  • ロイヤル・ダッチ・シェル オランダ社長、ガス市場開発副社長 ディック・ベンショップ氏
  • モデレーター:共同通信社環境・開発・エネルギー問題担当・論説委員 井田徹治氏

銀座の画廊にて。絵画で石炭問題をアピール 

こんにちは。東京事務所の桃井です。久しぶりの投稿になります。

2015年は、COP21に向けて大切な年

今年の気候ネットワークは、年末のパリ会議(COP21)での意義ある合意をめざして”クライメート・アクション・ナウ!(Climate Action Now!)”のアクションをスタートしたり、石炭火力発電所を増やそうという日本国内の動きにストップをかけるためのキャンペーン”Don’t Go Back to the 石炭!”を展開したりとスタッフもめまぐるしく動いています。

石炭問題をアピール!絵画展示会

さて、そんな中で気候ネットワーク会員の余語盛男さんが銀座の画廊で絵画作品を展示するということで案内をいただいていたので、今日、移動の時間をつかって伺ってきました。案内には、なぜか「石炭問題もアピールしています」と書かれているので、興味も倍増でした。

絵画だというからには全て絵で描かれているのかと思ったら、数字まで使って石炭問題をアピールする文章が絵の中に書かれているのです。思わず読まずにはいられません。

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自画像のまわりに、天文学、料理、パリの旅行、そして石炭問題に再生可能エネルギー、とご自身の活動を描かれてるのですね。なんとも印象的な一枚です。(ここで私は自分のカメラを忘れたことに気付き、余語さんの持っていたカメラから写真をコピーしていただいてアップしています。。)

COP21が開催されるパリの町並みの絵画も

さらにこの絵の両隣には、パリの町並みや建物が描かれた絵が数枚ずつ飾られています。これらもすべて余語さんか描かれたものですが、パリの素敵な町並みなどを見ながら、まさに2015年を象徴するような作品だなあとしみじみ感じてしまいました。さすが気候ネットワークの会員さんですよね!?

DSC05536気候ネットワークとして銀座でアピールする機会はなかなかつくれませんから、いつもの私たちのイベントとは全く違う表現方法で気候変動問題・石炭問題などを伝えていただくのはとても貴重です。

余語さん、どうもありがとうございました。

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世界の”Climate March”、日本の”気候マーチ”

こんにちは!東京事務所の桃井です。

世界のClimate March

 2014年9月21日、世界中で市民が気候変動問題の解決を求めるデモが行なわれました。「Climate March(気候マーチ)」です。複数の環境NGOが呼びかけて、数ヶ月前から準備がすすめられ、その結果集まった人の数はニューヨークだけでも40万人と発表されています。

 二日後の23日に国連気候サミットに集結した各国首脳陣たちに、とても大きなインパクトを与えたに違いありません。パレードの規模はPeople’s Climate MarchのWEBサイトに掲載された写真や動画でも良くわかりますので、ぜひ1度見てみてください。

●People’s Climate Marchキャンペーンサイトhttp://peoplesclimate.org/

ニューヨークでのClimate March の様子。約40万人が参加しました。
ニューヨークでのClimate March の様子。約40万人が参加しました。

 

国連の潘基文事務総長もClimate Marchに参加。ゴア元副大統領の姿も。
国連の潘基文事務総長もClimate Marchに参加。ゴア元副大統領の姿も。
国連の平和メッセンジャー大使をつとめる俳優のレオナルド・ディカプリオ氏も参加。
国連の平和メッセンジャー大使をつとめる俳優のレオナルド・ディカプリオ氏も参加。

 

日本のアクション、「気候マーチ」

 日本でもこのタイミングに合わせてアクションが行なわれていたことをご存じでしょうか。

市民団体による共同声明「国連気候サミットに向けて-原発も気候変動危機もない世界へ」

 一つは、市民団体が共同で発表した声明「国連気候サミットに向けて-原発も気候変動危機もない世界へ」です。気候保護の団体だけではなく、開発関係や人権問題に取り組む団体が一緒に声明文をまとめあげたという意味は大きかったと思います。原子力が気候変動問題の解決にならないことを強調しました。

霞ヶ関で「気候マーチ」

 さらにもう一つのアクションは、9月19日に日比谷公園から経済産業省前、首相官邸前などを通過して国会正門までをパレードしました。金曜日は、官邸前での「脱原発・再稼働反対」の毎週恒例となった官邸前行動が行なわれています。ここに合流して、原発もない、気候変動もない世界に向けてアピールをしています。

経産省の脱原発テント前をパレードしました
経産省の脱原発テント前をパレードしました
金曜日の官邸前抗議にあわせて原発もない気候変動もない世界を訴えました
金曜日の官邸前抗議にあわせて原発もない気候変動もない世界を訴えました

  この気候マーチの様子は、ソーシャル・ビジネス・マガジン「オルタナ」さんにて取り上げられました(同記事はYahoo!ニュースにも掲載されています)。

霞ヶ関の気候マーチにかけた思い

 本当は、いずれもぎりぎりまで予定していなかったのですが、9月21日のClimate Marchに向けて世界中で気候変動解決に向けた市民の勢いが盛り上がり、ぜひ日本でも動きがあればという海外の方たちからの声があったこと、さらには気候変動対策を口実に原発再稼働の動きに繋がりかねない国内情勢に対しても、それが解決策にならないことを表明しておく必要性が高まっていたことなどが、東京で何もしないわけにいかないのではないかという空気になっていました。

 たまたま、9月16日から行なわれた韓国光州でのフォーラム出席のためにFoE Japanの吉田明子さんと私が飛行機も部屋も同じになったことで、急遽声明文作成やパレードの準備を進めて行くことになったのでした。朝早く起きて、夜も遅くまで相談し、日本にいる方たちと連絡を取り合いながら、なんとかやり遂げましたが、行き当たりばったり感は否めません。呼びかけ時間も少ない中で、パレードに参加していただいた方がいたことには、心から感謝する次第です。

市民にも盛り上がりを!

 いずれにしても、日本はまだ中期目標も示さず、気候変動対策に最も後ろ向きな国とのレッテルを貼られつつあります。来年のパリ合意に向けて市民の側にも盛り上がりをつくっていかなければならないでしょう。次はもう少し余裕を持って、多くの皆さんにも参加してもらいやすいようなパレードなど企画したいと思っていますので、ぜひそのときはご協力くださいね!

光州市での「第4回東アジア気候フォーラム」に参加して

 こんにちは。東京事務所の桃井です。

 今日は、今年9月16日から2日間にわたって韓国の光州市で開催された「第4回東アジア気候フォーラム」に参加してきましたので、少しばかり報告というか感想を書いておきたいと思います。

日本・中国・韓国が共に行なう意義

 東アジア気候フォーラムという催しが毎年行なわれていることをご存じでしたでしょうか。2010年に第一回目を今回と同じ光州市で行なって以来、日本(第二回・2011年)、中国・杭州(第三回・2013年)と各国持ち回りで行なわれ、今年、再び光州市で開催されました。

 日本の主催団体である東アジア環境情報発伝所の廣瀬稔也代表から、フォーラムの開会にあたって、日本・中国・韓国が一緒になって気候変動対策に取り組む意義が語られました。それは、日中韓三カ国あわせると世界の排出量の4分の1以上を占める巨大排出地域であり、気候変動対策の実行が求められていること、そして、とりわけ中国の排出量が非常に増加する傾向にあるが、それはその様々な中国製品を輸入し、その便益を受けている日本や韓国も共に情報を共有し、排出を減らす努力をしていくべきではないかということです。

 日本・東アジア環境情報発伝所・廣瀬代表

日本・東アジア環境情報発伝所・廣瀬代表

  お互いに責任をなすりつけ合うのではなく、それぞれが削減に向けた実効をあげていくよう、市民はそのための監視役でありつなぎ役でもなければならないでしょう。4回も続けてきた意義がそこにあります。

挨拶する光州KFEM議長
挨拶する光州KFEM議長

光州市でのフォーラム

 さて、今回ホスト地域となった光州市は、市長が市民派で、韓国の中でも再生可能エネルギーの導入に非常に熱心に取り組んでいる自治体の一つです。市民活動もさかんで韓国で最大規模の環境NGO、韓国環境運動連合(KFEM)の支部が熱心に脱原発や気候変動の活動を行なっています。今回のホスト役でもあり、このフォーラムに非常に力を入れており、地域や市民から気候変動対策を強力に進めるのだという意気込みが強く感じられました。光州市の取組みとしては、低炭素住宅に力を入れている様子なども報告されました。光州市以外にも、様々なすばらしい事例が発表されました。

 また、韓国は、脱原発活動にも非常に熱心です。今回も脱原発を一つのセッションとして、台湾での活動家の方も交えてそれぞれの活動が報告されました。

台湾の環境団体から各国代表に贈られた脱原発の活動旗
台湾の環境団体から各国代表に贈られた脱原発の活動旗

大幅削減に向けた国の政策転換は?

 市民レベル・地域レベルでの活動は活発に行なわれつつも、国の政策転換という点においては、日本も韓国も同様で、産業界の意向に沿って政治的な判断がなされているようでした。むしろ、中国の気候変動政策が非常に前向きになっていることに改めて驚かされました。NGOの方からは、まだ目標設定が原単位目標なので、総量での削減目標に切り替える必要があるという指摘はあったものの、こうした発言が出ること自体、かつてとはずいぶん違ってきているという印象を受けました。

 フォーラムの最後に、以下の共同宣言をまとめました。三カ国語それぞれにまとめられました。
 次回は、2年後、日本での開催です。そのときまでに、日本が少しでも前進したといえるような状況になってるよう、がんばりたいものです。

共同宣言「東アジア気候行動に向けたわたしたちの誓い」

 わたしたち人類の安全、平和な未来のため、産業革命前に比べ地球の平均気温が今世紀末までに2度以上超えないことについて、国連では数回にわたる合意があった。しかし、世界各国、とりわけ経済大国はこれを具体化できていない。わたしたちは9月23日からニューヨークで開催される「気候サミット」と2015年COP21で「法的拘束力のある削減合意と野心的な削減目標の設定」を引き出すことを求める。

 日本・中国・韓国は、社会、経済、歴史における差異はあるものの、飛躍的な経済成長と発展を遂げた。このような成長と発展は化石燃料の乱用を前提にした結果であり、日中韓三カ国いずれも温室効果ガス排出量が世界の上位10位に入っている。こうした化石燃料依存の構造は変えていかなければならない。わたしたちは、日中韓政府の指導者が、「法的拘束力のある削減合意と野心的な削減目標の設定」「気温上昇を摂氏2度以下におさえること」との国際的な流れに積極的に参加し、先頭に立つことを要望する。

 2011年に起きた福島原発惨事の苦痛は今も続いている。それにも関わらず、未だに東アジア日中韓及び台湾の政府からは、脱原発の方針は示されていない。逆に、原発の利用が引き続き推進されている。原発は絶対に気候危機を回避する代替案とはならず、危険であり、非経済的且つ環境と平和に害悪をもたらす。東アジア各国が「脱原発政策」を受け入れることを望む。また、東アジアでこれ以上原発が新たに建設されることなく、寿命が達した原発と稼働中の原発の廃炉を可及的速やかに決めるべきである。

 「東アジア気候ネットワーク」は、光州において第4回目の東アジア気候フォーラムを開催した。その間、韓国、日本、中国の気候変動、環境、エネルギー活動の経験を共有し、より活発な活動の必要性を共感した。「低炭素東アジアの未来」はわたしたちが必ず歩むべき道であり、東アジア市民はその道を共に歩むことになるだろう。

 今回の光州フォーラムでわたしたちは誓う。

一、気温上昇を摂氏2度以下におさえ、大幅にCO2を削減するための政策の実現をめざす。
二、気候変動・環境エネルギー運動を市民参加の草の根運動に広く発展させる。
三、太陽、風力、地熱など再生可能エネルギーの導入をより活性化し、省エネとエネルギーの効率化により安全で且つ平和な東アジアを目指す。
四、参加団体同士の情報交流、連帯を強める。五、より多くの市民社会が共に行動できるように組織を強化・拡大していく。

 わたしたちは2016年に日本で第5回東アジア気候フォーラムを開催する。2年後、わたしたち東アジア市民が、草の根から各国政府まで「低炭素東アジア」のための実践と政策を分かち合えるように、それぞれの地域で努力する。

2014年9月17日

第4回東アジア気候フォーラム参加者一同

 

アイスバケツチャレンジとALSと須田さん

東京事務所の桃井です。

アイスバケツチャレンジがブーム

この夏、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の撲滅と寄付を訴え、有名人が次々と氷水をかぶるパフォーマンス「アイスバケツチャレンジ」がネットでの映像などを通じて話題になりました。いろいろな賛否が出る中で、そろそろブームも収束しつつありますが、このキャンペーンでALSという難病について世界中に知れ渡り、多額の寄付が集まったという点で成功だったと言えるのではないでしょうか。そんなキャンペーンのブームに乗じて、今回は書き留めておきたいことがあります。

ALSと須田さん

実は、気候ネットワーク副理事長の須田春海さんが、2009年にこのALSを発症し、現在、東京都内のご自宅でこの病気と闘っています。私は須田さんがこの病気にかかるまで、ほとんど病気のことは知りませんでした(ホーキング博士と同じ病気と言われて、「ああ、あの筋肉が固まってしまう病気か」とわかる程度でした)。ALSは筋肉が萎縮してだんだんと体の自由がきかなくなっていく神経系の難病で、治療法が確立していません。今、須田さんはすでに体のほとんどの部分を自分の意志で動かすことができず、喉を切開して人工呼吸器をとりつけ、筋肉が硬直していく恐怖と戦いながら毎日を過ごしておられます。

そのような中で、須田さんは、ほぼ毎日、共通のMLやブログなどでご家族やヘルパーさんの介助のもとにメッセージを発信されていますが、その内容は現政権に対しての危機感を中心に、中には気候変動問題などを憂うものもあります。体の自由がまったくきかない中で、一言発信することがどれほど大変なことか私たちの想像をはるかに超えるものだと思いますが、逆にその言葉に込められたメッセージの重さにも感じるのです。

気候ネットワークと須田春海さん

もともと、京都が本拠地である気候ネットワークに東京の事務所があるのは須田さんが主宰されていた市民運動全国センター(センター)に、気候ネットワーク前身の気候フォーラムの時代から東京オフィスを構えたのがきっかけです。センターには、今も10数団体にもわたる様々な市民団体がオフィスを構えており、そのほとんどの団体は設立で須田さんが関わった団体です。

私自身、気候ネットワークのスタッフになったのは2008年からですが、それ以前から(大学生の頃から)様々な団体に関わる中で、いずれの活動においても須田さんは重要なアドバイザーでした。様々な政治の情勢などを分析し、今何をすべきかを実に的確なアドバイスを投げてくれます。

”気候災害被害者のネットワークを”

 須田さんが数年前から気候ネットワークに投げかけられていたことの一つに、気候災害による被害者の全国ネットワークを作ったらどうかということがありました。

確かに今、夏の高温化による熱中症患者の増加、集中豪雨やゲリラ豪雨、大型台風などによる暴風・暴雨による災害、突風や雹など極端現象による被害、つい最近ではデング熱の感染など、かつてから温暖化のリスクとして呼びかけられていたことが現実のものになってきています。すでに多くの人が気候変動のリスクにさらされ、そのリスクは今後ますます高まってくるでしょう。単なる自然災害ということではなく、人間が排出した温室効果ガスが原因でこうした災害が巨大化しているわけで、気候変動の被害を受けているということの認識を持つためにも、”被害者”のネットワークを構築することは必要かもしれません。

つい先日の広島での土砂崩れで大きな被害があったときにも、須田さんは「異常気象、広島だけではない」と打ち込まれていました。気候変動の被害が具体的に顕在化してくることで、ダム・堤防・防波堤などの土木工事など含む適応策への要求が高まってくるのではないかと思いますが、一方で、温室効果ガスの排出を削減するという根本的な対策がままならないことについて国民的な議論をしていく必要があるでしょう。須田さんのご示唆を頭におきつつ、気候ネットワークとして何ができるのかを改めて考えていきたいと思っています。

 

イベント報告「地球温暖化のために原発再稼働!?~原子力ムラのウソをあばく~」

 東京事務所の桃井です。

 まだ8月だというのに台風11号が上陸し西日本中心に猛威をふるいました。 高知では総雨量1000mmを超え、全国では最も多い時に160万人に避難勧告や指示が出たと報じられ、その規模の大きさに驚愕しています。私が住む横浜でも、台風の通り道からはずれているものの、強烈な暴風雨が夜中過ぎまで続いており、台風が直撃した地域ではその恐怖・被害がいかばかりかと案じられました。

 それにしても、夏の高温化や、ゲリラ豪雨、巨大台風など、命に危険なレベルの気象が増えてきましたね。

 

地球温暖化のために原発再稼働!?

 さて、7月末、eシフトセミナー「地球温暖化のために原発再稼働!? ~原子力ムラのウソをあばく」が開催されました。温暖化対策は大事だけど、そのために原発再稼働は違うでしょ、と思う人は多いはず。ただ、このイベントのテーマは少し視点をずらし、地球温暖化懐疑的な目を持つ人と情報を共有し、脱原発と脱温暖化の運動を共に盛り上げていこうという点にありました。ポイントは次の3つです。

(1)温暖化対策を理由にした原発推進体制の認識共有

  • 地球温暖化対策を理由にいかに原発が推進されてきたか。
  • 今も地球温暖化を口実に原発再稼働がすすめられていること。
  • 結果的に原発は温暖化対策には貢献していないという現状の共有。

(2)温暖化懐疑論に対する誤解の解消

  • 原発を推進するために温暖化問題がねつ造されてるわけではない。
  • 地球の気温の上昇など自然科学や将来の予測など気候変動の科学の確認。
  • 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)に対しての理解の共有。

(3)今後目指す持続可能な社会のあり方

  • 脱温暖化と地球温暖化対策でやるべきことは共通
  • 再生可能エネルギーの大幅普及と省エネルギー
  • 大規模集中型システムから地域分散型の電力システムへ
セミナー会場は100人の座席が満席に。
セミナー会場は100人の座席が満席に。

エネルギー基本計画における原子力の位置づけ

 2014年4月に閣議決定した「第四次エネルギー基本計画」では、原子力について次のように位置づけられました。

 燃料投入量に対するエネルギー出力が圧倒的に大きく、数年にわたって国内保有燃料だけで生産が維持できる準国産エネルギー源として、優れた安定供給性と効率性を有しており、運転コストが低廉で変動も少なく、運転時には温室効果ガスの排出もないことから、安全性の確保を大前提に、エネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源である。

 これ、福島の原発事故前の文章ではなくて、事故後、つい最近つくられた計画ですからね。つっこみたいところはたくさんありますが、論点がそれるのでここでは温暖化対策との関係に絞りたいと思います。エネルギー基本計画には、このように、「運転時に温室効果ガスの排出がない」ことが強調され、温暖化対策に貢献することがちりばめられています。

 講師の山崎さんは、原子力発電が運転時にはCO2を排出しなくても、ライフサイクルで見た場合にCO2を多く排出していることや、温排水で周辺海域の海水温を7℃も上昇させていることから周辺の環境に悪影響を与えていることなどを指摘。

 また、「重要なベースロード電源」という位置づけについても、本当にベースロード電源になるのか、という疑問を投げかけました。2011年以降の東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故とその後の全原発停止だけではなく、その前にも不祥事で原発を止め、そのたびに設備利用率を下げているためです。

原発推進に利用される温暖化 出典:山崎さん資料より
原発推進に利用される温暖化 出典:山崎さん資料より
  • 2002年 「東電不祥事」発覚に端を発した原発の定期検査等のごまかしで全電力総点検
  • 2007年 中越沖地震で柏崎刈羽停止および臨界事故隠し発覚により原発の総点検

 原発推進のために政府や産業界が「温暖化対策」を理由にしてきたという点では、4人のスピーカーに共通する点でした。

原発推進派は本当の温暖化対策をしていない

 しかし一方、“温暖化対策”を隠れ蓑に原発が推進されてきたからといって、温暖化そのものを懐疑的に見るのは短絡的です。反原発活動に長年取り組んでいる人の中には、そもそも温暖化をウソだと言ったり、IPCCに批判的な立場だったりする人がいます。しかし、こうして温暖化問題に懐疑的な目を向け、脱原発と脱温暖化の運動が分裂することは、「敵に塩を送る」だけである、と明日香さんは言います。

 いわゆる「原子力ムラ」と言われる原発利権にからむ政府、産業界、学者、メディアなどが、「温暖化対策のための原発必要論」を論じてきましたが、温暖化対策が必要だといいながら、実は本来温暖化対策として必要だとされるキャップ&トレードや炭素税の導入を阻み、石炭火力発電を推進し、再生可能エネルギーの位置づけを低く見ていました。温暖化に懐疑的な人たちを増やして化石燃料依存に向かわせるのは、「原発依存・石炭依存」グループの高等戦略だというのです。

 朝日新聞の石井さんも、いわゆる利権構造の中で、原発推進派と温暖化対策が必要だといいながら、対策に後ろ向きである産業界が同じグループであるのではないかと指摘しています。

「脱原発で温暖化に懐疑的な人々は原発依存・化石燃料依存の巨大化・強力化に結果的に加担している」 出典:明日香氏プレゼンテーション資料より
「脱原発で温暖化に懐疑的な人々は原発依存・化石燃料依存の巨大化・強力化に結果的に加担している」 出典:明日香氏プレゼンテーション資料より

原発推進のせいで、進まない温暖化対策

 気候ネットワークの平田さんは、IPCCの新レポートについて解説した上で、手遅れにならないうちに温暖化対策を進めることが必要であることを強調しました。これまでの日本の温暖化対策の問題は、原発に依存し、他の必要な対策を進めてこなかった点にあります。例えば、次のような課題は残されたままです。

  • 事業者対策は、自主的取り組みに依存している。(経団連自主行動計画では、排出量の抑制に対し、インセンティブが与えられていない)
  • 削減余地が大きいことを把握せず、省エネ対策は限定的。(機器の効率は向上するものの、製造業の効率は悪化)
  • 限定的な再生可能エネルギーの促進(ようやく離陸)
  • 京都議定書6%達成は、経済低迷と吸収源・海外クレジット購入で間に合わせ(実際の排出量は基準年1.4%増)

 このことは、今の「エネルギー基本計画」を見ても明らかです。原発も石炭も、ベースロード電源として位置づけ、「クリーンコール(きれいな石炭)」といって、温室効果ガス排出量の多い石炭火力をこれから増やしていく計画なのですから。

「これまでの大規模集中型で原発・化石燃料依存社会から、省エネ・再エネ重視の社会に切り替えていくことが必要」と平田さん
「これまでの大規模集中型で原発・化石燃料依存社会から、省エネ・再エネ重視の社会に切り替えていくことが必要」と平田さん

 日本の気候変動政策がいかに世界の動きから遅れをとっているか、いえ、むしろ逆行しているかということを共通認識として、これからの脱原発・脱温暖化対策を一体にすすめていく市民の力が試されているのではないでしょうか。

プログラム

(タイトルをクリックすると配布資料を閲覧できます)

1.再稼働に利用される「地球温暖化」  
   山崎久隆さん(たんぽぽ舎副代表)

2.原発は温暖化対策の答えではない  
   明日香壽川さん(東北大学教授)

3.温暖化を防ぐためにこそ、原発はやめるべき  
   平田仁子さん(気候ネットワーク理事)

4.メディアの立場から  <資料はありません>
   石井徹さん(朝日新聞編集委員)

NGOの期待に応えたノンフロンのダストブロワー工場を見学

東京事務所の桃井です。

先日、姫路にあるスプレー缶の工場に視察に行ったので、簡単に報告したいと思います。エヌ・ケイ・ケイ株式会社は、ダストブロワー(ほこりとばし)のノンフロン化をはじめて実現した会社です。話を聞くにつけ、ノンフロン化の実現にはいろんなドラマがあったことがわかって非常に面白かったです。

本題とは全く関係ありませんが、姫路といえば、大河ドラマの主人公・黒田官兵衛の故郷でもありますね。姫路城は現在改修作業のまっただ中で、白鷺城というより白すぎ城と言われるほど、真っ白になってました。。。

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白すぎ城…??

スプレー缶にフロンってまだ使われてる?

さて、スプレーの話題に戻しましょう。

スプレー缶にフロン類が大量に使われていたのは80年代。殺虫剤から化粧品に至るまでほとんどのスプレー缶にフロン(CFC)が噴霧剤として使われていました。オゾン層保護対策の規制がはじまるのとほぼ同時に、真っ先に消費者の目の前からなくなったのもフロン入のスプレーでした。その代替として、噴霧剤にはDME(ジメチルエーテル)に切り替えられています。DMEは、フロンのようにオゾン層破壊や地球温暖化はおこしませんが、炭化水素で可燃性であるため、多くのスプレー缶に「火気厳禁」の表示がされるようになりました。

しかし、一部のスプレーでは代替フロン(HFC)が使われるようになりました。その代表格がダストブロワー(ほこりとばし)です。精密機械などについたほこりを飛ばすための噴霧剤ですが、静電気などで火花が散って可燃性ガスに着火するリスクがあることから、HFCを使う必要があるとされてきました。ここで使われているフロンの種類はHFC134a(GWP=1300)、HFC152a(GWP=140)です。

家電量販店やホームセンターに行くとPC付属品のコーナーなどで山積みになってダストブロワーが販売されているのを見かけることがあると思います。ただ、家庭用よりは、パチンコ店、電車の改札機・券売機、銀行のATMといった機械の清掃といった用途が全体の7割を占めると言われています。

私たちが、ダストブロワーのフロン問題をとりあげはじめたのは今から10年も前のことです。2003年、気候ネットワークでは、ストップ・フロン全国連絡会と一緒に「脱フロンキャンペーン」をスタートし、そのときにまず最初のターゲットとしたのが、「代替フロンスプレーの購入・使用をやめよう」というものでした。2004年3月3日には、小池百合子環境大臣(当時)を表敬訪問し、キャンペーンについての説明をしています。小池大臣も「こんなところで未だにフロンが使われているとは知らなかった、環境省としてできることを考えたい」と述べられていました。

 ノンフロンダストブロワーへのチャレンジ

今回エヌ・ケイ・ケイ株式会社に伺い、お話を聞いてはじめてわかったことがあります。2004年当時、私たちが環境大臣を訪問し、フロンのダストブロワーを見せて「これが問題だ!」と伝えたニュースを知った彼らは、当時まだフロンのダストブロワーを作っていたため、これをきっかけにしてノンフロン製品の開発をがんばったのだそうです。ノンフロン化を求める私たちの期待に応えてくれたのだということがわかり、その心意気にも感動しました。そして、今では全体のダストブロワーの約半分くらいのシェアを持つようになったのですから、そのご尽力には敬服するばかりです。

ノンフロンのダストブロワー 2つの工夫

ノンフロンのダストブロワーは、DMEと、可燃性をおさえるためにCO2を混ぜているところがポイントです。普段私たちが目にするスプレー缶とは違う2つの工夫があります。

1)特殊吸収体の開発

これがノンフロンダストブロワーの成功の鍵をにぎっているようですが、逆さまにしても液状のDMEが吹き出さないようにパルプを使った特殊吸収体が開発されました。吹き付けた時に液状になって中身が出ると引火の原因になるからです。この特殊吸収体の開発で360℃どんな向きにしても液状にはなるのを防ぎます。

特殊吸収体
パルプでつくった特殊吸収体
2)缶のツーピース仕様

通常のスプレー缶は、スリーピースで、胴の部分を長方形の板を丸めて円柱にし、その後上下に丸い蓋をかぶせるタイプのものがほとんどです。ツーピース缶は、丸い金型をプレスしてつくられます。そのため、筒の横にも上の部分にもつなぎ目がありません。

ツーピースのスプレー缶の制作工程
ツーピースのスプレー缶の制作工程

エヌ・ケイ・ケイさんの実験では、現在使われているHFC152aのスプレー缶の方が可燃性で危険であるという実験結果が出ているという話でした。そして、HFCなどフッ素系ガスは、燃焼したときに毒ガス(フッ酸)などを発生するため、実際に事故も起きているということです。

改正フロン法でのスプレーの用途規制について

現在、ダストブロワー用のフロンについては、現在新たな規制案が検討されているところです。昨年の国会で改正された「フロン回収破壊法」で、フロンを使用した製品にGWP規制がかかることになり、今年4月24日の審議会(産業構造審議会製造産業分科会フロン対策WG)で、「噴霧剤(ダストブロワー)」も用途指定される案が出ています。現在の審議会の案では、2019年にGWPを10とする目標値が設定されています。

これまでの「フロン回収破壊法」では、冷媒に使われたフロン類は回収して破壊することが義務づけられていましたが、スプレー用のフロンは何も規制がなく大きな矛盾をかかえていました。こうした矛盾を解消できたことは一定の前進ですが、5年後と言わず、もっと早くできるはずです。

本物のノンフロンへ

これまで、「グリーン購入法」でダストブロワーについてはGWPが150以下であることを基準としてきたため、HFC152aも推奨されていました。そのため、フロン系のものをつかっていても「ノンフロン」などと偽の表示をしているまで見かけることがあります。これは明らかに偽装表示です。そして、最近ではGWPが4と非常に低いHFC1234zeという新たなフッ素系ガスがスプレーに使われているものが出始めました。これもフロンの一種で、環境への影響や毒性などについても懸念が残ります。

今回の視察内容については、今年度の「ノンフロンレポート(仮称)」で詳細をまとめる予定です。

最後に、視察をさせていただいたエヌ・ケイ・ケイ株式会社の畑中利文副社長をはじめとする姫路工場の皆様に厚くお礼申し上げます。

エヌ・ケイ・ケイの皆さんと
エヌ・ケイ・ケイの皆さんと一緒に記念写真。

ダイキン工業との意見交換~R32給湯器について~

 東京事務所の桃井です。リニューアル版ブログの初投稿となります。みなさま、新ブログもどうぞよろしくお願いします。

 さて、初回の話題としては少し長目の話で恐縮ですが、先般、気候ネットワークでは、共同声明「家庭用ヒートポンプ給湯器は自然冷媒が主流自然冷媒からフロン(HFC32)への逆行にブレーキを」と補足ペーパー「なぜヒートポンプ給湯器の冷媒にフロン(HFC32)を使ってはならないか」を発表しました。この声明は、すでに自然冷媒が主流になっているヒートポンプ給湯器で、ダイキン工業がフロン(HFC32)を冷媒とする給湯器を開発したという話を受けて発表したものです。

 この記事では、その後の話をさせていただきたいと思います。

ダイキン工業のCSR担当の方と意見交換

 声明発表の後、ダイキン工業のCSR担当の方からご連絡をいただき、ダイキン工業常務取締役の岡田慎也さんら3名の方と5月22日に意見交換の場を持つことができました。意見交換の主旨は、“ダイキン工業としての考え方を説明した上で様々な立場の方からの意見を伺いながら、今後の方向性や事業をすすめていくため” とのことでした。そして、これが最初で最後ではなく、引き続き意見交換の場は持っていきたいとのことでした。

 3時間にもわたってじっくりと意見交換をすることができ、持続可能な社会を目指して行くという目的の共有もできましたし、非常に有意義な会合となりました。このような形で、企業が環境団体や消費者団体と直接積極的にコミュニケーションをとり、事業活動にフィードバックしようとする姿勢は高く評価したいと思います。

R32ヒートポンプ給湯器

 給湯2 さて、全体の話の中で、私たちが問題にした”R32ヒートポンプ給湯器”のことについても時間をかけて議論しましたので、ここで報告しておきたいと思います。

 まず、なぜ「R32給湯器」なのかについて、次のようなご説明をいただきました。

「京都議定書目標達成計画では、CO2冷媒ヒートポンプ給湯器(エコキュート)520万台普及の目標をかかげていたが、大幅な未達となった。その理由は(1)エコキュートは4人以上の世帯では受入れられるが3人以下の世帯では経済合理性が成り立たず普及しない、(2)CO2は高圧対応設計のためイニシャルコスト低減に制約がある」ということでした。普及が鈍化したのは、福島の原発事故前からだそうです。

 「R32給湯器」はこれらの課題を解決する位置づけだとのことです。その理由説明は次のとおりです。

  1. 1~3人世帯を対象としたR32給湯器はエコキュートよりも若干ライフサイクルコストを低減できる(使用湯量の多い4人世帯以上はエコキュートの方がライフサイクルコストが安い)。
  2. R32を使ったルームエアコンとも部品が共通化できるから合理化され、コスト削減できる。
  3. 従来のガス給湯器に比べると、一台あたり年間0.198~0.266トン削減できる。
  4. 今後原発が再稼働すれば、夜間電力の活用によってピークシフトと電力平準化に貢献できる。また電力会社との契約によっては、導入した家庭では電気代を安くできる。
  5. 冷媒の管理(冷媒漏洩防止・回収・再利用)をしながら利用する。

 つまり、R32ヒートポンプ給湯器を世の中に出せば、消費者は安く”高効率給湯器”を購入することができるからこれまで普及しなかった層での普及が期待でき、温暖化対策に貢献する、というお話でした。

R32給湯器が温暖化対策になる?

 R32ヒートポンプ給湯器に対しての私たちの反論は、「なぜヒートポンプ給湯器の冷媒にフロン(HFC32)を使ってはならないか」に書いたとおりです。つまり、地球温暖化係数(GWP)の高い冷媒からの転換ならまだしも、GWPが1のCO2冷媒から、よりGWPの高いフロンに転換するということは、そもそもフロンを削減するという方向性からは明らかに逆行ではないかという点です。この旨、こちらからも説明をさせていただきました。

 また、R32給湯器に対してご説明いただいた点についても、以下のような疑問が残ります。

 まず、エコキュートの販売の伸び悩みの理由は、大きな貯湯タンクを置く場所がないスペースの問題や、オール電化に対する疑念なども要因として大きいでしょう。とりわけ、設置スペースの問題に関しては、R32給湯器も貯湯タンクを必要とするので、設置スペースの問題が解決できているとは言えません。

 さらに、ガス給湯器との比較でCO2削減効果が高いというのも、いただいたデータが原発事故前のものだったので本当にそうなのか疑問が残りました。私の方で、電力の排出係数を原発事故後の2012年で計算しなおしてみると高効率ガス給湯器の方がCO2排出量が低くなります。そもそもヒートポンプにおけるAPFとかCOPとか効率を表す数字はあくまでも一定の条件下で測定した値であり、実際には地域特性や外気温の条件、使い方によって表示どおりの性能が出ていないケースをよく聞きます。

 結局、エコキュートよりもイニシャルコストの安いR32給湯器を世の中に出せば、従来の石油給湯器、ガス給湯器、電気温水器の分野で普及させたいという思惑とは逆に、エコキュート市場を食いつぶしていくことになるのではないか、CO2排出量全体でみても温暖化対策に逆行することになるのではないか。いや、そもそも本当に売れるのか。などなど疑問が残りました。

 フロンの回収システムを構築するという話も、現状では回収体制が何もなく、エアコンの回収ですら3割程度と低迷状態ですから、これも机上の空論ではないでしょうか。実際に回収費用をだれがどのように負担するのか、回収の費用をトータルコストに織り込んでもいないようです。

期待を込めて

 今回、3時間にわたる意見交換会の中では、冷凍冷蔵空調分野での自然冷媒へのチャレンジしてきた経緯なども伺いました。CO2ヒートポンプ給湯器もラインナップしており、今後も大事にしていきたいという話でした。持続可能な社会を目指すという方向性も私たちと同じだとのことでした。

 もし、そうであれば、R32ヒートポンプ給湯器の販売は、目指す方向からは明らかに逆行しているように思います。お話を伺った上でもなお、やっぱりR32ヒートポンプ給湯器は世の中に出すべきではないという感想を持っています。

 最後に、このような意見交換の場を設けてくださいったダイキン工業の岡田慎也さん、藤本悟さん、杉本栄さんには改めてお礼申し上げます。そして、ぜひ「R32給湯器は出さない」と結論を出していただきたい。そう期待しています。

意見交換の概要

日時/場所

2014年5月22日/気候ネットワーク東京事務所

意見交換メンバー

  • 岡田慎也さん(ダイキン工業株式会社 常務執行役員・地球環境担当)
  • 藤本悟さん(ダイキン工業株式会社 CSR地球環境センター(兼)東京渉外室室長)
  • 杉本栄さん(ダイキン工業株式会社 技術渉外担当課長)
  • 野口陽さん(ストップ・フロン全国連絡会理事/滋賀県電気商業組合環境アドバイザー)
  • 山田佳代子さん(ストップ・フロン全国連絡会理事)
  • 山岸尚之さん(WWFジャパン気候変動・エネルギーグループ リーダー)
  • 西島和さん(日本環境法律家連盟/弁護士)
  • 桃井貴子(気候ネットワーク)

*「R32」の「R」は冷媒を意味します。「HFC32」と同じフロンのことを指しています。