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インターンが見たCOP21~会議場で感じたこと~

こんにちは!気候ネットワークでインターンをしています、津田です。

僕は、フランス・パリで行われたCOP21(気候変動枠組条約第21回締約国会議)にオブザーバーとして参加しました。法的拘束力ある「パリ協定(Paris Agreement)」が採択されるという歴史的瞬間に立ち会えてよかったです。

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日本でもCOP21はニュースになっていますが、今回の記事ではCOP会場内で見たこと、感じたことについてご紹介します。

世界中から関係者が集結。会場は過去最大級の規模に!

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会場の立ち並ぶメインストリート。その広さはテーマパーク顔負け!

COP21パリ会議では、京都議定書に続く気候変動の国際的な新枠組みの合意の実現をめざした交渉が行われました。世界の温暖化対策次第で、今後の世界平均気温上昇の度合いが1~2℃も変わってしまうと言われています。そのため、世界中から気候変動に関係する多くの人がパリに集結しました!

COP21の会場はパリの郊外にある「ル・ブルジェ空港」の敷地内にテントのような仮設会場(とはいっても、何千人を収容できる大規模なテントですが…)を建ててつくられています。今回のCOP21会場には、のべ約4万人が来場しました。あまりの広さに、どこに何があるのかを把握するだけで初日が終わってしまうほどでした…笑

会議初日の11/30には、150か国以上の首相が集結し、COP21と気候変動に対して演説を行いました。これほど多くの国の首相が集まるのは、ニューヨークの国連本部を除いては異例のことです。気候変動問題解決に向けて世界各国がいかに本気か伝わってきます!

COP21会議場内のいたるところでアクションが!

COP会場内では、交渉以外にもさまざまなイベントが行われました。今回のCOPには3000人とも言われるほど多くのメディア関係者が訪れています。そのため、世界に伝えたいことのある人は、メディアを通して世界に発信してもらえるよう、会議場内のメインストリート部分などでアクションを行います。

僕も途上国における石炭火力発電所の計画中止を求めるアクションに参加しました。現地のNGOは石炭火力によって自分たちの生活がいかに蝕まれているかを必死に訴えていました。僕も、海外NGOメンバーと声を合わせて、「キャンセル・コール(石炭やめよう)!」と叫びました。

脱石炭を訴えるアクション!僕も参加させていただきました。
脱石炭を訴えるアクション!僕も参加させていただきました。

 

COP会場で聴いた、世界中の人々の心からの訴え

COP21では、気候変動問題を解決しようと世界中の人々が一つの会場に集まっています。そのため、日本国内では触れることのない様々な「生の声」を聴くことができます。脆弱な途上国の人々が今まさに気候変動の影響に苦しんでおり、今すぐの行動が必要だと訴える声を何度も耳にしました。また、気候変動の原因となる化石燃料、特に石炭に関連する事業をやめ、再生可能エネルギー100%の未来へ転換するべきだというメッセージも多く目にしました。

たとえば、先述の石炭火力発電所反対のアクションもその1つです。今回参加した石炭火力発電所反対アクションのメインターゲットはインドネシア・バタンの石炭火力発電所建設計画でした。この計画の資金源は、日本の企業からの出資がそのほとんどを占めるといいます。

日本の政府や企業は、「日本の石炭火力発電所技術は高効率でクリーンだから積極的に海外に広げるのだ」と説明します。しかしアクションをしていた現地の人に話を聞くと、バタンで計画中の発電所は日本で作られたものと比べて大気汚染物質(窒素酸化物:NOxや硫黄酸化物:SOx)の排出量が数倍も多いそうです。これは、インドネシアの環境基準が緩く、これに合わせて環境対策を緩くするからだとか…。「日本の技術はクリーンだ」と宣伝しておきながら、海外は規制が緩いから環境対策が疎かでも大丈夫という理屈は、海外の人々の生活や健康を軽視しているように感じました。

気になったので調べてみると、この計画は住民の十分な同意を得ないままに押し切られつつあり、インドネシア政府は軍を導引して住民の反対運動の制圧にあたっているようです。日本の企業が関わるプロジェクトが、日本では行われないような低い環境基準のものであること、かつ軍の介入で地元の住民を抑え込むという人権侵害につながっているという現状には衝撃を受けました。ちなみに、COP21で合意されたパリ協定の前文には人権保護の必要性について言及されています。

日本の政府や企業が進めている事業が、現地の人々から反対されている…。これは国内にいるだけでは実感できないことでした。正しい行動をするためには多くの声を聴き現実を知ることが必要です。途上国の実情を知った上で行動しようという姿勢が必要だと感じています。

 


 

参考資料

11月11日開催「セミナー『国際問題化する石炭支援~国際交渉の最新動向とJBIC投融資事業の実態〜」(JACSES、気候ネットワーク、FoE Japan主催)

 

セミナー『行動するなら今でしょ ストップ温暖化』に参加しました

あけましておめでとうございます!今年も気候ネットワークをよろしくお願いします。京都事務所のインターン生の津田です。

先日1月18日に、セミナー『行動するなら今でしょ ストップ温暖化 〜地球温暖化にどのように向き合っていくか〜』が開催されました(主催:京都府・京と地球の共生府民会議。共催:気候ネットワーク)。

このセミナーでは、WWFジャパンの気候変動・エネルギープロジェクトリーダーの小西雅子さんに、地球温暖化や国際交渉について最新の情報をお話しいただきました。

以下、セミナーの内容を4つに分けて振り返ってみたいと思います。

地球温暖化にどのように向き合っていくか

1.地球温暖化ってほんとに起こっているの?

将来地球温暖化が進行し異常気象や食糧危機をもたらす、といった話をよく耳にします。しかし、温暖化に関しては懐疑的な人も少数います。

地球温暖化は本当なのでしょうか? その判断の基準になるのが、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)による「評価報告書」です。これは、世界中の地球温暖化に関する世界の最新の研究をまとめたもので、地球温暖化に関する最新の情報を提供しています。世界各国は、この報告書を基に国際交渉や政策実施を進めます。

この報告書では、人間による影響が温暖化の最も有力な原因であった可能性は95%以上であるとしています。つまり世界の最新の科学では、人類のせいで地球温暖化が進行しているのは当然のこととされているのです。

2.地球温暖化を食い止めるための国際交渉

最新の「IPCC第5次評価報告書」によると、

  • このまま対策が行われなければ、世界の平均気温は4℃前後上昇する。
  • 世界各国が今すぐ対策を講じても、平均気温は2℃前後上昇する。

ということが言われています。そのため、早急に世界を巻き込んだ対策が必要です。そこで毎年COP(気候変動枠組条約の締約国会議)が開催され、世界全体でCO2の排出を削減する枠組み(例えば京都議定書)を作るための交渉が行われています。

3.国際的な合意を得る難しさ

京都議定書は先進国のみにCO2の排出削減義務を課していました。ただ途上国のCO2排出量が急増しているため、途上国も参加する新たな枠組みが必要です。そこで2020年以降全ての国に排出削減を求める、新しい国際枠組み交渉が始まりました。

しかし、枠組み作成の交渉は難航しています。CO2削減よりも経済成長を優先する途上国と、環境政策を進めたい先進国とでは考え方が対立しているのです。しかし、このような状況でも、なんとか妥協点を探して合意に導くことが大切です。一定の合意があれば、CO2排出削減に向けて交渉が前進できるからです。

4.世界から見た日本の立ち位置は?

京都議定書の発行に貢献したことに代表されるように、以前の日本は気候変動対策に大きな影響力を持っていました。しかし現在の日本はCO2削減目標すら明確にすることが出来ず、国際交渉においても存在感はほとんどなくなっているということです。

 

セミナーに参加して思ったこと

日本が足を引っ張るのではなく、リーダーシップを取れるよう積極的な政策を取ってほしい

今回のセミナーで私は、気候変動に関する国際交渉の難しさを感じました。日本国内でCO2排出削減目標を決めることも大変なのに、世界中の国が合意できるような枠組みを作ることは絶望的にも感じることがあります。そのような中で、日本は、交渉の足を引っ張るのではなく、リーダーシップを取れるよう積極的な政策を取ってほしいです。

2015年は特に気候変動政策に注目を!

今年、2015年12月に開催されるCOP21パリ会議では、2020年以降の新たな枠組みに合意する事になります。そのため日本でも、CO2排出削減目標といった多くの地球温暖化に関する重要事項が決められます。今年決まったことが2020年以降の気候変動政策に大きな影響を及ぼすため、今年は特に気候変動に関する政策に注目し、行動する必要があると思いました。

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セミナーにはたくさんの人が集まっていました

 

東アジアが共同で「低炭素都市づくり」を目指す! ~京都国際環境シンポジウム~

はじめまして! 10月から京都事務所でインターンをしている津田です。私は関西学院大学総合政策学部の3回生で、環境政策について学んでいます。環境について研究をする前に実際に行われている取り組みを体験したいと考え、インターンに参加しています。

今回は東アジアの環境政策を勉強するために、イクレイの京都国際環境シンポジウムに参加しました!

「イクレイ」って?

イクレイは、持続可能な開発を公約した自治体と自治体協議会で構成された、国際的な連合組織です。11月5日の京都国際環境シンポジウムは、京都市主催、イクレイ共催で行われました。このシンポジウムでは、東アジアの環境分野における国際協力を推進することを目的に、様々な講演や議論が行われました。

地球温暖化のリスクと人類の選択

シンポジウムのはじめの基調講演では国立環境研究所の江守正多氏に地球温暖化の現状についてお話いただきました。昨年9月に行われたIPCC第5次評価報告書によると、地球温暖化について懸念されているのは、大きく分けると、

  1. このまま対策が行われなければ、世界の平均気温は2100年には4℃前後上昇する
  2. 北極の氷の消失による海水面の上昇、異常気象など
  3. 世界の平均気温の上昇を、産業革命以前から2℃未満に抑えなければ、被害が深刻化する

の3つがあります。また、地球温暖化は社会全体に大きな被害をもたらすものの、所属する地域や社会属性によっては、地球温暖化の対策を行うことによって被害を受ける人々も存在します。

立場によって地球温暖化に対する意見は違いますが、誰もが地球温暖化についての正確な情報を共有し、そのうえでどうするかを選択することが大切です。

東アジア低炭素共同体構想って?

次に立命館大学の周瑋生氏(シュウ・イセイ)から、東アジア低炭素共同体構想についてお話いただきました。東アジアである日本、韓国、中国の3カ国のCO2総排出量は、世界全体の30%以上です。また一国で原発事故が起こると他の二カ国にも放射線が拡散するように、一国で生じた環境問題は他の二国にも大きな影響を及ぼします。

この日・中・韓が技術や社会システムに関して協力することで、広域低炭素社会(低炭素社会:CO2排出量の少ない社会)を実現しようというのが、この構想の狙いです。たとえば中国では、PM2.5などの大気汚染が深刻化していますが、この影響は日本や韓国にも及びます。日本・韓国が大気汚染防止の技術を提供することができれば、大気汚染の問題も軽減することができ、結果的に3カ国とも便益を得ることができるのです。

都市の省エネ・創エネが武器になる

午後から行われた分科会では、

  • 産業・技術
  • 市民生活・くらし
  • 教育
  • 都市づくり

の4つに別れ、それぞれ日中韓等のNGOや行政関係者、研究者が、それぞれの現状と今後について話し合われました。私は1の「産業・技術」の分科会に参加しました。

産業・技術部門にも、日中韓の担当者が参加しました。現在、日本の各都市では、それぞれ地域に合わせた独自の環境システムや技術が作られています。また韓国では現在、ビッグデータの環境政策へ利用を試みており、将来電力システムの効率化などの分野での活躍が期待できそうです。一方、中国は環境問題への対策を産業化する途中段階で、これから政府と産業が一体となって発展を目指していく、ということでした。

個人的には、けいはんな学研都市や北九州市が自分たちの技術やシステムをビジネスモデル化し、国内外で顧客獲得を目指すという取り組みに期待できると感じました。またけいはんな学研都市の重松氏によると、「新たな社会を作るには住民と粘り強い対話をし、住民が巻き込むことが必要」、とのことです。これから環境都市を目指す自治体には、参考にしてほしい内容です。

全体セッションを終えて

他の分科会でも様々な議論がなされましたが、中でも興味深かったのが、3の「教育」での話です。環境問題に意識を向けさせるために正解を押し付けても、意識や行動は変わりません。人と対話していくプロセスの中で、意識や行動は少しずつ変わっていく、ということです。また、「未来は政府から生まれるのではなく、(学校の)教室1つ1つから生まれる」という話を聞き、子どもと対話し子どもが自ら環境について考えるような環境教育が重要だと感じました。