「スタッフの日々」カテゴリーアーカイブ

温暖化する地球、日常化する異常気象?

京都事務所スタッフの伊与田です。先日の台風でも各地に被害がでたようですね。気候が大変なことになっているような気がする今日このごろ、みなさまいかがお過ごしでしょうか。

歴史的な記録が、次々と塗り替えられている

2014年6月1日、京都は観測史上最速で猛暑日を記録したばかりか、同年7月26日には、7月の気温としては観測史上最高の38.3℃を記録したと伝えられています。8月の気温は例年より低めでしたが、全国各地を未曾有とも言われるような気象災害が発生しました。記録的豪雨によって広島、京都などで甚大な被害をもたらしたことは記憶に新しいと思います。

日本だけでなく、このところインド、フィリピンなどでも豪雨・洪水で被害があり、フランスのモンペリエでは9月末に数時間で半年分の雨が降ったとのこと。なかなか尋常じゃないですね。

2050年の天気予報 日本版

ちなみに、世界気象機関は国連気候サミットにあわせて「2050年の天気予報」という動画を公開しています。今後の気候変化をイメージするにはわかりやすくておすすめですよ!

2014年夏の豪雨と地球温暖化?

2014年夏の各地の豪雨も、温暖化との関係がどうなんやろと言われるところです。気象庁の異常気象分析検討会が9月3日に発表した資料では、次のように書かれています。

地域気象観測所(アメダス)における、1時間降水量が50mm 以上や80mm以上となった年間及び8月の観測回数には、増加傾向が現れています。また、我が国の高層気象観測による上空の水蒸気量にも増加傾向がみられます。 「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の第5評価報告書第1作業部会報告書、地球温暖化の進行に伴って今世紀末までに、我が国を含む中緯度の陸域のほとんどでは極端な降水がより強く、より頻繁となる可能性が非常に高いこと、大気中の水蒸気量が世界平均で 5~25%増加すると予測しています。

これらのことから、我が国における短時間強雨の増加傾向には、地球温暖化が関連している可能性がありますが、観測期間が短いことから、地球温暖化との関連性をより確実に評価するためには今後のさらなるデータの蓄積が必要です。

(出典:気象庁『平成26年(2014年)8月の不順な天候について ~異常気象分析検討会の分析結果の概要~』P.5)

すでに地球温暖化で豪雨が増えている可能性はあるが、現時点では確実なことは言えない、ということですね。ただ、IPCCなどの科学的知見では、温暖化のせいでこれから豪雨が増えていくという予測も示されているということです。これまでの豪雨について因果関係の完全な証明が難しいからと言って、これから対策をしなくてよいということにはならないと思います。

「異常気象は温暖化のせいですか?」

地球温暖化問題のことで人と話していると、「異常気象は地球温暖化のせいですか?」と聞かれることがあります(ちなみに、気象庁は異常気象のことを「30年に1回程度で起こる現象」と定義しています)。

科学的には、それぞれの異常気象について、「100%地球温暖化のせいだ!」とは言いきるのは難しいそうです。気候が変わる要因には人間活動のCO2排出による地球温暖化の他にも、自然的なもの(エルニーニョ現象とか)があります。人為的な地球温暖化が進む前にも、たまには、大変な豪雨や熱波は起こったはずです。それに、都市部の猛暑の場合なんかは、ヒートアイランドの効果も無視できません。

「いかさまのサイコロ」のたとえ

この、温暖化と異常気象の関係は難しいのですが、ひとつわかりやすいたとえ話があります。気候ネットワークのシンポジウムにもお招きしたことのある気候学者・江守正多さんの著書『異常気象と人類の選択』(2013年・角川SSC新書)にある「いかさまのサイコロ」の話です。

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サイコロの6の目が「異常気象」だとします。

サイコロを何度も振るといろんな目が出て、たまに6の目も出ます。「異常気象」はふつうのサイコロを振っていても、たまに起こることです。

さて、ここに、6の目が出やすくなるように細工されたイカサマサイコロがあるとします。これが温暖化した気候に対応します(温暖化する前がふつうのサイコロ)。このイカサマサイコロを何度も振るとやはりいろんな目が出て、たまに6の目も出ます。

数回振ったくらいでは、ふつうのサイコロとイカサマサイコロは区別がつきませんが、100回くらい振ると、明らかにイカサマサイコロのほうが6の目が出る回数が多くなることに気が付きます。これが、「温暖化のせいで異常気象が増えているといえるかは長期的に見なければわからない」ということです。

江守正多(2013)『異常気象と人類の選択』P.48-49

このたとえ、わかりやすくないですか?この書籍には、他にも温暖化の科学を考える上で参考になるお話がたくさんありますのでおすすめです。後ろの方の政策に関する話はちょっと違うかも…と思うところもありますが、示唆に富む内容と思います。

因果関係の複雑さを受け止め、乗り越える

こういう、因果関係の複雑さ、説明の難しさは、地球温暖化と異常気象に限った話ではありません。統計的に、たばこを吸う人は肺がんになるリスクが高いことが知られていますが、たばこを吸わない人も肺がんになることがあります。

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私が高校生のとき、ヘビースモーカーな保健体育の先生がいました。保健の授業で「たばこを吸ったらがんになりやすくなるから君たちはたばこはだめだ!」と説明する一方、「でも、俺はがんになってもいいからたばこを吸うんだ!」と言っていて、おいおい…と思った記憶があります。がんになりやすいと知っていながらたばこをやめられないのは、温暖化が進んで異常気象が増えるとわかっていながらCO2を出し続けるのと、少し似ているのかもしれません…。

不確実性がありながらも、リスクがあるのを理解した上でどんな行動を選択するのか?これは、温暖化だけでなく、ありとあらゆる問題につきまとうことです。自分なりに信頼できる科学的知見に学びながら、とるべき選択を考えることが大切なのだと思っています。

 

関連記事:「観測史上●●記録」を量産する時代~人類の生存を脅かす気候変動~

アイスバケツチャレンジとALSと須田さん

東京事務所の桃井です。

アイスバケツチャレンジがブーム

この夏、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の撲滅と寄付を訴え、有名人が次々と氷水をかぶるパフォーマンス「アイスバケツチャレンジ」がネットでの映像などを通じて話題になりました。いろいろな賛否が出る中で、そろそろブームも収束しつつありますが、このキャンペーンでALSという難病について世界中に知れ渡り、多額の寄付が集まったという点で成功だったと言えるのではないでしょうか。そんなキャンペーンのブームに乗じて、今回は書き留めておきたいことがあります。

ALSと須田さん

実は、気候ネットワーク副理事長の須田春海さんが、2009年にこのALSを発症し、現在、東京都内のご自宅でこの病気と闘っています。私は須田さんがこの病気にかかるまで、ほとんど病気のことは知りませんでした(ホーキング博士と同じ病気と言われて、「ああ、あの筋肉が固まってしまう病気か」とわかる程度でした)。ALSは筋肉が萎縮してだんだんと体の自由がきかなくなっていく神経系の難病で、治療法が確立していません。今、須田さんはすでに体のほとんどの部分を自分の意志で動かすことができず、喉を切開して人工呼吸器をとりつけ、筋肉が硬直していく恐怖と戦いながら毎日を過ごしておられます。

そのような中で、須田さんは、ほぼ毎日、共通のMLやブログなどでご家族やヘルパーさんの介助のもとにメッセージを発信されていますが、その内容は現政権に対しての危機感を中心に、中には気候変動問題などを憂うものもあります。体の自由がまったくきかない中で、一言発信することがどれほど大変なことか私たちの想像をはるかに超えるものだと思いますが、逆にその言葉に込められたメッセージの重さにも感じるのです。

気候ネットワークと須田春海さん

もともと、京都が本拠地である気候ネットワークに東京の事務所があるのは須田さんが主宰されていた市民運動全国センター(センター)に、気候ネットワーク前身の気候フォーラムの時代から東京オフィスを構えたのがきっかけです。センターには、今も10数団体にもわたる様々な市民団体がオフィスを構えており、そのほとんどの団体は設立で須田さんが関わった団体です。

私自身、気候ネットワークのスタッフになったのは2008年からですが、それ以前から(大学生の頃から)様々な団体に関わる中で、いずれの活動においても須田さんは重要なアドバイザーでした。様々な政治の情勢などを分析し、今何をすべきかを実に的確なアドバイスを投げてくれます。

”気候災害被害者のネットワークを”

 須田さんが数年前から気候ネットワークに投げかけられていたことの一つに、気候災害による被害者の全国ネットワークを作ったらどうかということがありました。

確かに今、夏の高温化による熱中症患者の増加、集中豪雨やゲリラ豪雨、大型台風などによる暴風・暴雨による災害、突風や雹など極端現象による被害、つい最近ではデング熱の感染など、かつてから温暖化のリスクとして呼びかけられていたことが現実のものになってきています。すでに多くの人が気候変動のリスクにさらされ、そのリスクは今後ますます高まってくるでしょう。単なる自然災害ということではなく、人間が排出した温室効果ガスが原因でこうした災害が巨大化しているわけで、気候変動の被害を受けているということの認識を持つためにも、”被害者”のネットワークを構築することは必要かもしれません。

つい先日の広島での土砂崩れで大きな被害があったときにも、須田さんは「異常気象、広島だけではない」と打ち込まれていました。気候変動の被害が具体的に顕在化してくることで、ダム・堤防・防波堤などの土木工事など含む適応策への要求が高まってくるのではないかと思いますが、一方で、温室効果ガスの排出を削減するという根本的な対策がままならないことについて国民的な議論をしていく必要があるでしょう。須田さんのご示唆を頭におきつつ、気候ネットワークとして何ができるのかを改めて考えていきたいと思っています。