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G7合意で水素・アンモニアは排出削減対策として認められたのか?

 2022年のG7では、ロシアのウクライナ侵攻や燃料価格の高騰などを背景にエネルギー安全保障への懸念が高まるなか、気候変動対策の具体的な行動を加速させるため、G7でどのような合意形成がなされるかが、気候変動分野での注目ポイントの一つでした。

 そのなかで、5月のG7気候・エネルギー・環境大臣会合のコミュニケ(共同声明のこと、以下「環境大臣コミュニケ」とします)では、はじめて「水素・アンモニア」が盛り込まれました。このことは「脱炭素手法として水素・アンモニアが認められた」と日本でも報道され、日本が推進するゼロエミッション火力=アンモニア・水素混焼が、石炭火力発電の排出削減対策として認められたのでは?と思われた方もいるかもしれません。本当にアンモニア・水素混焼が石炭火力発電の排出削減対策として認められたと言えるのか、今回は環境大臣コミュニケを読み進めたいと思います。

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今国会の法案審議で参考人として意見陳述

 東京事務所の桃井です。”カーボンニュートラル”という言葉を聞かない日はないくらい、最近、よく耳にする言葉になりました。これを聞いて気候変動対策は加速化していると思う人はどれくらいいるのでしょうか。

 さて、今国会では、気候変動問題に関連する重要法案が多数上程されました。中でも省エネ法改正案については、これまでの省エネ法から大きく形を変え、非化石エネルギーをエネルギーとして位置づけて推進していくという目的の変更を伴う大改正です。また温暖化対策推進法(温対法)改正案も昨年に続き、今国会でも審議されました。

省エネ法等改正案について

 今回、省エネ法、エネルギー供給構造高度化法、JOGMEC法などの束ね法案が経済産業委員会で審議されました。問題は、「非化石エネルギー」として水素・アンモニア燃料を位置づけ推進するという点で、衆参両院の審議で論点になりました。特に、原料に化石燃料を使い、製造時に大量のCO2排出を伴うグレー水素・グレーアンモニアはCO2削減効果がほとんどないばかりか、水素・アンモニア混焼によって既存の石炭火力の延命になり、大量のCO2排出を固定化するため、カーボンニュートラルの方向性にも合致しないものですが、政府はこれも含めて非化石エネルギーとして位置付ける方針を示したのです。

 これまで政府は、エネルギー基本計画にもこうした水素・アンモニアやCCUSの推進を位置付けるほか、グリーンイノベーション基金を創設して2兆円の予算をつけ、様々な関連のプロジェクトが実行されていますが、これを省エネ法、高度化法などによって法的に位置付けることでさらにその体制を盤石なものとすることがねらいです。

 法案の審議にあたって、参議院経済産業委員会では、浅岡代表が参考人として招致され、問題を指摘しています。

2022年5月11日参議院経済産業委員会 省エネ法改正案参考人質疑 

参考人:浅岡美恵(気候ネットワーク代表)

動画リンク
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温暖化対策法改正案について

 温暖化対策法改正案は、これまで環境省が行っていた地域脱炭素投資促進ファンドを財投を活用した新たな出資制度として新たに位置づけ、(株)脱炭素化支援機構を創設することを新たに位置付けるものです。地域の脱炭素支援は重要ですが、政府のエネルギー政策に問題があり、再エネなどにブレーキがかかっている現状では、地域の脱炭素化にもブレーキがかかりかねません。

 参議院環境委員会では私桃井が招致され、意見陳述しました。水素・アンモニアの問題についても触れたところ、議員の皆さんからはいろいろなご質問をいただき、討議する良い機会になりました。いずれにしても”カーボンニュートラル”という看板をかかげながら、CO2の削減につながらず、国民負担が増えていくという構造そのものが問題だと思っています。国政の場で、この問題についてもっと議論を深めてもらいたいものです。

2022年5月19日参議院環境委員会 温暖化対策推進法改正案参考人質疑

参考人:桃井貴子(気候ネットワーク東京事務所長)

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説明用資料

参考

【プレスリリース】改正省エネ法等法案は石炭火力温存へのミスリード~水素・アンモニアを非化石エネルギーと位置づけ推進すべきではない~(2022年3月1日)

私たちは慣れてはいけない 「国際防災の日」に考える気候災害の危機

きょう10月13日は「国際防災の日」。でも、365日、毎日が防災の日であるべきであるかのような状況が続いています。「気候災害が深刻化している」と言うのもむなしくなるような危機が相次いでいます。

ニュースで「観測史上●●」、「記録的●●」といった「異常な」言葉を「日常的に」聞かされ、感覚が麻痺してしまいそう…。それはまるで、増え続けるコロナ感染者数の数字に、慣れてしまってきたかにみえる今の社会の姿と重なります。 続きを読む 私たちは慣れてはいけない 「国際防災の日」に考える気候災害の危機

ジョニー・デップ主演の映画「MINAMATA」が今に伝えるもの

先日、世界的俳優ジョニー・デップが写真家・故ユージーン・スミスを演じた映画「MINAMATA」を観てきました。

そのタイトルが示す通り、四大公害のひとつである水俣病が題材です。非人道的な大企業の罪を世界に知らしめた写真家たちと、高度経済成長の日本で未曾有の産業公害に立ち向かう患者と家族たちの姿を描いた作品です。

 

映画「MINAMATA」

公式ウェブサイト:https://longride.jp/minamata/
上映時間:115分
劇場公開日(日本):2021年9月23日
総合評価:★★★★☆

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パブコメを書こう!気候変動・エネルギー政策に声をあげよう!

 政府は9月3日に、エネルギー基本計画地球温暖化対策計画などの改正にあたって政府案を公表し、パブリックコメント(通称:パブコメ)を開始しました。パブコメでは、一般市民が政府の政策案に対してインターネット上から意見を政府に提出することができ、政府も集まった意見を尊重して政策を決めることとされています。

 気候変動の影響は高温化や熱波・集中豪雨・旱魃・海面上昇といった形で猛威を振るいはじめていますが、将来の甚大なリスクを回避するためには、今、気候変動・エネルギー政策を大転換する必要があります。しかし、政府の政策案は、「大転換」には程遠いものです。したがって、このパブコメ期間はとても重要なタイミングです。 続きを読む パブコメを書こう!気候変動・エネルギー政策に声をあげよう!

CO2排出量ランキング!日本で一番たくさんのCO2を出しているのはどこのだれ?

気候変動の主な原因であるCO2ですが、日本国内でたくさん出しているのは、どこのだれなのでしょう?

日本で最も多くのCO2を排出している、上位10事業所のランキングを作ってみました(数字は国の「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度」に基づく気候ネットワーク分析によるもの。CO2排出量の数字はいずれも2017年です)。

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ゴールドマン環境賞を受賞して

東京事務所の平田です。

この度、2021年のゴールドマン環境賞の受賞に際し、たくさんのお祝いや激励のメッセージをいただき、また7月4日に開催した受賞記念のシンポジウムにも、多くの方にご視聴いただきまして、ありがとうございました。 続きを読む ゴールドマン環境賞を受賞して