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すすめよう!ナチュラル・ファイブ。日本を代表するノンフロン・自然冷媒の優良企業は!?

こんにちは。東京事務所の桃井です。

さて、今日はいつか書こう、書こうと思っていたことの一つについて書きたいと思います。

自然冷媒の業界専門誌「ACCELERATE(アクセレレート)」

世の中には、ごく普通に生活しているとほとんど知る機会がない、特定の分野の人に向けた専門誌というのが結構たくさんあります。今から紹介する専門誌「ACCELERATE」も、超ニッチな「自然冷媒」という話題だけでほぼ全ての記事が構成されるレアな冊子です。この「ACCELERATE」、もともとはヨーロッパとアメリカで先行されていましたが、昨年から日本語版がつくられるようになりました。私がここでオススメしたいと思ったのは、昨年「フロン排出抑制法」が全面施行となり、フロン対策をなんとかしていかないといけないと思っている全ての企業の方にはぜひ読む価値があると思っているからです。

今、地球温暖化対策としてHFC対策が進められる中、フロンではなく自然冷媒を選択する企業が増えています。そんな事例がかなり細やかにインタビューをした上で紹介されています。この冊子の目的は明確で、自然冷媒を導入する企業や仲間を加速度的に増やすことを目指しています。つまり、私が長年取り組んできたフロン問題への解決策が、この冊子に凝縮されているのです。

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NGOの期待に応えたノンフロンのダストブロワー工場を見学

東京事務所の桃井です。

先日、姫路にあるスプレー缶の工場に視察に行ったので、簡単に報告したいと思います。エヌ・ケイ・ケイ株式会社は、ダストブロワー(ほこりとばし)のノンフロン化をはじめて実現した会社です。話を聞くにつけ、ノンフロン化の実現にはいろんなドラマがあったことがわかって非常に面白かったです。

本題とは全く関係ありませんが、姫路といえば、大河ドラマの主人公・黒田官兵衛の故郷でもありますね。姫路城は現在改修作業のまっただ中で、白鷺城というより白すぎ城と言われるほど、真っ白になってました。。。

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白すぎ城…??

スプレー缶にフロンってまだ使われてる?

さて、スプレーの話題に戻しましょう。

スプレー缶にフロン類が大量に使われていたのは80年代。殺虫剤から化粧品に至るまでほとんどのスプレー缶にフロン(CFC)が噴霧剤として使われていました。オゾン層保護対策の規制がはじまるのとほぼ同時に、真っ先に消費者の目の前からなくなったのもフロン入のスプレーでした。その代替として、噴霧剤にはDME(ジメチルエーテル)に切り替えられています。DMEは、フロンのようにオゾン層破壊や地球温暖化はおこしませんが、炭化水素で可燃性であるため、多くのスプレー缶に「火気厳禁」の表示がされるようになりました。

しかし、一部のスプレーでは代替フロン(HFC)が使われるようになりました。その代表格がダストブロワー(ほこりとばし)です。精密機械などについたほこりを飛ばすための噴霧剤ですが、静電気などで火花が散って可燃性ガスに着火するリスクがあることから、HFCを使う必要があるとされてきました。ここで使われているフロンの種類はHFC134a(GWP=1300)、HFC152a(GWP=140)です。

家電量販店やホームセンターに行くとPC付属品のコーナーなどで山積みになってダストブロワーが販売されているのを見かけることがあると思います。ただ、家庭用よりは、パチンコ店、電車の改札機・券売機、銀行のATMといった機械の清掃といった用途が全体の7割を占めると言われています。

私たちが、ダストブロワーのフロン問題をとりあげはじめたのは今から10年も前のことです。2003年、気候ネットワークでは、ストップ・フロン全国連絡会と一緒に「脱フロンキャンペーン」をスタートし、そのときにまず最初のターゲットとしたのが、「代替フロンスプレーの購入・使用をやめよう」というものでした。2004年3月3日には、小池百合子環境大臣(当時)を表敬訪問し、キャンペーンについての説明をしています。小池大臣も「こんなところで未だにフロンが使われているとは知らなかった、環境省としてできることを考えたい」と述べられていました。

 ノンフロンダストブロワーへのチャレンジ

今回エヌ・ケイ・ケイ株式会社に伺い、お話を聞いてはじめてわかったことがあります。2004年当時、私たちが環境大臣を訪問し、フロンのダストブロワーを見せて「これが問題だ!」と伝えたニュースを知った彼らは、当時まだフロンのダストブロワーを作っていたため、これをきっかけにしてノンフロン製品の開発をがんばったのだそうです。ノンフロン化を求める私たちの期待に応えてくれたのだということがわかり、その心意気にも感動しました。そして、今では全体のダストブロワーの約半分くらいのシェアを持つようになったのですから、そのご尽力には敬服するばかりです。

ノンフロンのダストブロワー 2つの工夫

ノンフロンのダストブロワーは、DMEと、可燃性をおさえるためにCO2を混ぜているところがポイントです。普段私たちが目にするスプレー缶とは違う2つの工夫があります。

1)特殊吸収体の開発

これがノンフロンダストブロワーの成功の鍵をにぎっているようですが、逆さまにしても液状のDMEが吹き出さないようにパルプを使った特殊吸収体が開発されました。吹き付けた時に液状になって中身が出ると引火の原因になるからです。この特殊吸収体の開発で360℃どんな向きにしても液状にはなるのを防ぎます。

特殊吸収体
パルプでつくった特殊吸収体
2)缶のツーピース仕様

通常のスプレー缶は、スリーピースで、胴の部分を長方形の板を丸めて円柱にし、その後上下に丸い蓋をかぶせるタイプのものがほとんどです。ツーピース缶は、丸い金型をプレスしてつくられます。そのため、筒の横にも上の部分にもつなぎ目がありません。

ツーピースのスプレー缶の制作工程
ツーピースのスプレー缶の制作工程

エヌ・ケイ・ケイさんの実験では、現在使われているHFC152aのスプレー缶の方が可燃性で危険であるという実験結果が出ているという話でした。そして、HFCなどフッ素系ガスは、燃焼したときに毒ガス(フッ酸)などを発生するため、実際に事故も起きているということです。

改正フロン法でのスプレーの用途規制について

現在、ダストブロワー用のフロンについては、現在新たな規制案が検討されているところです。昨年の国会で改正された「フロン回収破壊法」で、フロンを使用した製品にGWP規制がかかることになり、今年4月24日の審議会(産業構造審議会製造産業分科会フロン対策WG)で、「噴霧剤(ダストブロワー)」も用途指定される案が出ています。現在の審議会の案では、2019年にGWPを10とする目標値が設定されています。

これまでの「フロン回収破壊法」では、冷媒に使われたフロン類は回収して破壊することが義務づけられていましたが、スプレー用のフロンは何も規制がなく大きな矛盾をかかえていました。こうした矛盾を解消できたことは一定の前進ですが、5年後と言わず、もっと早くできるはずです。

本物のノンフロンへ

これまで、「グリーン購入法」でダストブロワーについてはGWPが150以下であることを基準としてきたため、HFC152aも推奨されていました。そのため、フロン系のものをつかっていても「ノンフロン」などと偽の表示をしているまで見かけることがあります。これは明らかに偽装表示です。そして、最近ではGWPが4と非常に低いHFC1234zeという新たなフッ素系ガスがスプレーに使われているものが出始めました。これもフロンの一種で、環境への影響や毒性などについても懸念が残ります。

今回の視察内容については、今年度の「ノンフロンレポート(仮称)」で詳細をまとめる予定です。

最後に、視察をさせていただいたエヌ・ケイ・ケイ株式会社の畑中利文副社長をはじめとする姫路工場の皆様に厚くお礼申し上げます。

エヌ・ケイ・ケイの皆さんと
エヌ・ケイ・ケイの皆さんと一緒に記念写真。

ダイキン工業との意見交換~R32給湯器について~

 東京事務所の桃井です。リニューアル版ブログの初投稿となります。みなさま、新ブログもどうぞよろしくお願いします。

 さて、初回の話題としては少し長目の話で恐縮ですが、先般、気候ネットワークでは、共同声明「家庭用ヒートポンプ給湯器は自然冷媒が主流自然冷媒からフロン(HFC32)への逆行にブレーキを」と補足ペーパー「なぜヒートポンプ給湯器の冷媒にフロン(HFC32)を使ってはならないか」を発表しました。この声明は、すでに自然冷媒が主流になっているヒートポンプ給湯器で、ダイキン工業がフロン(HFC32)を冷媒とする給湯器を開発したという話を受けて発表したものです。

 この記事では、その後の話をさせていただきたいと思います。

ダイキン工業のCSR担当の方と意見交換

 声明発表の後、ダイキン工業のCSR担当の方からご連絡をいただき、ダイキン工業常務取締役の岡田慎也さんら3名の方と5月22日に意見交換の場を持つことができました。意見交換の主旨は、“ダイキン工業としての考え方を説明した上で様々な立場の方からの意見を伺いながら、今後の方向性や事業をすすめていくため” とのことでした。そして、これが最初で最後ではなく、引き続き意見交換の場は持っていきたいとのことでした。

 3時間にもわたってじっくりと意見交換をすることができ、持続可能な社会を目指して行くという目的の共有もできましたし、非常に有意義な会合となりました。このような形で、企業が環境団体や消費者団体と直接積極的にコミュニケーションをとり、事業活動にフィードバックしようとする姿勢は高く評価したいと思います。

R32ヒートポンプ給湯器

 給湯2 さて、全体の話の中で、私たちが問題にした”R32ヒートポンプ給湯器”のことについても時間をかけて議論しましたので、ここで報告しておきたいと思います。

 まず、なぜ「R32給湯器」なのかについて、次のようなご説明をいただきました。

「京都議定書目標達成計画では、CO2冷媒ヒートポンプ給湯器(エコキュート)520万台普及の目標をかかげていたが、大幅な未達となった。その理由は(1)エコキュートは4人以上の世帯では受入れられるが3人以下の世帯では経済合理性が成り立たず普及しない、(2)CO2は高圧対応設計のためイニシャルコスト低減に制約がある」ということでした。普及が鈍化したのは、福島の原発事故前からだそうです。

 「R32給湯器」はこれらの課題を解決する位置づけだとのことです。その理由説明は次のとおりです。

  1. 1~3人世帯を対象としたR32給湯器はエコキュートよりも若干ライフサイクルコストを低減できる(使用湯量の多い4人世帯以上はエコキュートの方がライフサイクルコストが安い)。
  2. R32を使ったルームエアコンとも部品が共通化できるから合理化され、コスト削減できる。
  3. 従来のガス給湯器に比べると、一台あたり年間0.198~0.266トン削減できる。
  4. 今後原発が再稼働すれば、夜間電力の活用によってピークシフトと電力平準化に貢献できる。また電力会社との契約によっては、導入した家庭では電気代を安くできる。
  5. 冷媒の管理(冷媒漏洩防止・回収・再利用)をしながら利用する。

 つまり、R32ヒートポンプ給湯器を世の中に出せば、消費者は安く”高効率給湯器”を購入することができるからこれまで普及しなかった層での普及が期待でき、温暖化対策に貢献する、というお話でした。

R32給湯器が温暖化対策になる?

 R32ヒートポンプ給湯器に対しての私たちの反論は、「なぜヒートポンプ給湯器の冷媒にフロン(HFC32)を使ってはならないか」に書いたとおりです。つまり、地球温暖化係数(GWP)の高い冷媒からの転換ならまだしも、GWPが1のCO2冷媒から、よりGWPの高いフロンに転換するということは、そもそもフロンを削減するという方向性からは明らかに逆行ではないかという点です。この旨、こちらからも説明をさせていただきました。

 また、R32給湯器に対してご説明いただいた点についても、以下のような疑問が残ります。

 まず、エコキュートの販売の伸び悩みの理由は、大きな貯湯タンクを置く場所がないスペースの問題や、オール電化に対する疑念なども要因として大きいでしょう。とりわけ、設置スペースの問題に関しては、R32給湯器も貯湯タンクを必要とするので、設置スペースの問題が解決できているとは言えません。

 さらに、ガス給湯器との比較でCO2削減効果が高いというのも、いただいたデータが原発事故前のものだったので本当にそうなのか疑問が残りました。私の方で、電力の排出係数を原発事故後の2012年で計算しなおしてみると高効率ガス給湯器の方がCO2排出量が低くなります。そもそもヒートポンプにおけるAPFとかCOPとか効率を表す数字はあくまでも一定の条件下で測定した値であり、実際には地域特性や外気温の条件、使い方によって表示どおりの性能が出ていないケースをよく聞きます。

 結局、エコキュートよりもイニシャルコストの安いR32給湯器を世の中に出せば、従来の石油給湯器、ガス給湯器、電気温水器の分野で普及させたいという思惑とは逆に、エコキュート市場を食いつぶしていくことになるのではないか、CO2排出量全体でみても温暖化対策に逆行することになるのではないか。いや、そもそも本当に売れるのか。などなど疑問が残りました。

 フロンの回収システムを構築するという話も、現状では回収体制が何もなく、エアコンの回収ですら3割程度と低迷状態ですから、これも机上の空論ではないでしょうか。実際に回収費用をだれがどのように負担するのか、回収の費用をトータルコストに織り込んでもいないようです。

期待を込めて

 今回、3時間にわたる意見交換会の中では、冷凍冷蔵空調分野での自然冷媒へのチャレンジしてきた経緯なども伺いました。CO2ヒートポンプ給湯器もラインナップしており、今後も大事にしていきたいという話でした。持続可能な社会を目指すという方向性も私たちと同じだとのことでした。

 もし、そうであれば、R32ヒートポンプ給湯器の販売は、目指す方向からは明らかに逆行しているように思います。お話を伺った上でもなお、やっぱりR32ヒートポンプ給湯器は世の中に出すべきではないという感想を持っています。

 最後に、このような意見交換の場を設けてくださいったダイキン工業の岡田慎也さん、藤本悟さん、杉本栄さんには改めてお礼申し上げます。そして、ぜひ「R32給湯器は出さない」と結論を出していただきたい。そう期待しています。

意見交換の概要

日時/場所

2014年5月22日/気候ネットワーク東京事務所

意見交換メンバー

  • 岡田慎也さん(ダイキン工業株式会社 常務執行役員・地球環境担当)
  • 藤本悟さん(ダイキン工業株式会社 CSR地球環境センター(兼)東京渉外室室長)
  • 杉本栄さん(ダイキン工業株式会社 技術渉外担当課長)
  • 野口陽さん(ストップ・フロン全国連絡会理事/滋賀県電気商業組合環境アドバイザー)
  • 山田佳代子さん(ストップ・フロン全国連絡会理事)
  • 山岸尚之さん(WWFジャパン気候変動・エネルギーグループ リーダー)
  • 西島和さん(日本環境法律家連盟/弁護士)
  • 桃井貴子(気候ネットワーク)

*「R32」の「R」は冷媒を意味します。「HFC32」と同じフロンのことを指しています。