「海外」タグアーカイブ

バルセロナで見た脱炭素社会へのヒント

 

今年5月に気候ネットワークに入職しました菅原です。1年半ほどスペインのバルセロナに滞在していたので、そこで感じたことを振り返ってみました。

居住区に溶け込んだ緑の空間

バルセロナ市は、地中海に面した、コンパクトで人口密度が高い、スペイン第2の都市です。ガウディを始めとする、有機的なデザインの建築物や、自由でゆったりとした雰囲気が素敵なところです。

現地の人々は外で時間を過ごすのが好きで、道には飲食店のテラス席や、公共のベンチがたくさんあります。私が特に好きだったのが、街中に植わっている多様な木々です。見た目が美しいのはもちろんのこと、日差しの強いスペインでは木々が提供する日陰が欠かせません。 続きを読む バルセロナで見た脱炭素社会へのヒント

私たちは慣れてはいけない 「国際防災の日」に考える気候災害の危機

きょう10月13日は「国際防災の日」。でも、365日、毎日が防災の日であるべきであるかのような状況が続いています。「気候災害が深刻化している」と言うのもむなしくなるような危機が相次いでいます。

ニュースで「観測史上●●」、「記録的●●」といった「異常な」言葉を「日常的に」聞かされ、感覚が麻痺してしまいそう…。それはまるで、増え続けるコロナ感染者数の数字に、慣れてしまってきたかにみえる今の社会の姿と重なります。 続きを読む 私たちは慣れてはいけない 「国際防災の日」に考える気候災害の危機

自治体が進める脱石炭:アジアで初めてPPCAに加盟した韓国・忠清南道

はじめまして!6月から気候ネットワークのスタッフになった田中です。

ここ1年ほど、コロナ禍で在宅時間が増えたこともあって、自分の住んでいる地域(兵庫県西宮市)の市政ニュースや県政ニュースをじっくり読む時間が増えました。「実はこんな取り組みをしていたんだ」と気づくことも多くて、最近では西宮市が「ゼロカーボンシティ」を宣言していたと知りました。 続きを読む 自治体が進める脱石炭:アジアで初めてPPCAに加盟した韓国・忠清南道

Climate Reality 東京トレーニングに参加~人生でアル・ゴアさんに一番近づけた日~

どうも!インターンのテイラーです!

先週は、日本において気候変動問題史上に残る大イベントが開催されました。そして個人的にも感慨深い経験をさせて頂きました。

第43回The Climate Reality リーダーシップ・コミュニティ・東京トレーニングです。日本初!アル・ゴア元副大統領が創設者兼会長をつとめるThe Climate Reality Projectという団体が行う、気候変動問題の解決に向け今後活動するクライメート・リーダーを育成するプログラムです。 続きを読む Climate Reality 東京トレーニングに参加~人生でアル・ゴアさんに一番近づけた日~

南太平洋の島国 フィジーにて

COP23に向けてフィジーに広がる気候変動への意識

今年の夏の間、COP23ボン会議の議長国を務めるフィジーに滞在する機会を得た。南太平洋に浮かぶ332の島からなるフィジーは、美しい海の高級リゾートのイメージがあるだろうが、世界で最初に京都議定書とパリ協定を締結した国でもある。滞在中、現地の新聞には毎日のように気候変動関係のニュースが登場していた。また、首都スヴァや国際観光都市ナンディなどで開催される地域のお祭りのテーマに「気候変動」が掲げられるなど、議長国を務めるCOP23をひかえて、気候変動の意識を盛り上げようという意欲が随所で感じられた。

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日本の税金でインドネシアの海を汚さないで!~現地住民が批判する日本の石炭支援~

こんにちは。東京事務所インターン生の酒井です。

今回は、インドネシアのチレボンから緊急来日した現地NGO・弁護士の方々の2日間に同行しました。現地の司法判断に対する日本企業の対応と彼らの訴えについて、報告します。

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サウジアラビアと日本の「不名誉な共通点」~温暖化対策の劣等生~

京都事務所の伊与田です。テレビでは、サウジアラビア国王の来日が話題になっていますね。

そんな中ですが、私は、「日本」と「サウジアラビア」という2つの国名を見ると、これらの国の間の「不名誉な共通点」を思い起こさずにはいられません。

結論から言いましょう。

サウジアラビアと日本の、意外で不名誉な共通点。

それは、地球温暖化問題の解決の足を最も引っ張っている劣等生ということです。

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環境・気候変動に新たな問題意識が芽生えたインターン

こんにちは。7月27日より3週間、気候ネットワーク東京事務所にインターンシップ生としてお世話になりました山口と申します。

短い期間でしたが、シンポジウム・勉強会・記事作成・リサーチ・経産省分科会傍聴等、数々の経験をさせていただきました。 

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フランシスコ教皇が気候変動に対する国際的な行動を「回勅」で呼びかけ

こんにちは。フィリピンからの留学生で、京都事務所インターンのマーヴィンです。

今回は、「パリでの気候変動交渉に先駆け、ローマ・カトリック教会を牽引する教皇が、すべての人々が気候変動に対する責任を負い、有意義な対話を進めるように呼びかけた」という話題です。

フランシスコ教皇の呼びかけ

フランシスコ教皇は、気候変動に関する回勅の中で、人類共通の家である地球環境を守るように世界に呼びかけました。

現在、我々は悲惨な環境破壊に直面していますが、フランシスコ教皇は、人類は私たちの共通の家である地球環境を救うことができると希望を持っています。

回勅とは、カトリックの教義に関する教皇の指針を示す公文書です。近年の教会の歴史においては、人類にとっての重大な問題について見解や批評などが発表されてきました。それは世界中のキリスト教徒だけでなく、宗派を超えて広く届けられ、現代の喫緊の課題について考え、取り組むように促しています。

この回勅が、気候問題に関する論議を具体化させる、強力な後押しとなることが期待されます。今回の発表は、世界各国が新たな合意に向けて協議を行うパリでの気候変動枠組条約締約国会議を数か月後に控えた極めて重要なタイミングで行われており、これにより、各国に現代の深刻な環境問題に立ち向かう「世界共通の計画」への総意を促しています。

フランシスコ教皇の呼びかけは、個人、家族、地域社会、国、国際コミュニティまであらゆる対象に向けて、環境問題について有意義な対話と協議を行い、方向性を変えていくよう、積極的に介入するよう求めています。

万物は全て共にあり(創造物の一体性)

Laudato Si’
ラウダート・シ-あなたが称えられますように-)*1

この言葉は、800年前に自然環境の守護聖人であるアッシジの聖フランシスコによって書かれた賛歌「私の主よ、あなたは称えられますように、私たちの姉妹である母なる大地のために。大地は、私たちを養い、治め…」*2から引用されています。ちなみに、フランシスコ教皇はこの聖人にちなんで名付けられました。

*1訳注:2015年6月18日にフランシスコ教皇が発表した回勅につけられたタイトルでアッシジのフランシスコの『太陽の讃歌』の冒頭から取られたもの

*2訳注:ラウダーテ>太陽の賛歌

主をたたえ、万物を守ることはキリスト教の信仰の中心です。実際、フランシスコ教皇は回勅の最初と最後に、万物、つまり人間を養い、人を治める自然について言及しています。教皇にとって自然は人間社会と対峙するものではありません。むしろ、自然との交流は不可欠です。自然と人は表裏一体の関係であり、環境問題と人間社会は切り離すことができないものです。人は世界の土地を耕し、守る役割を担っているにすぎません。人類が自然を敬い、受け入れるという道徳的概念なしに地球との共存はあり得ないでしょう。

産業革命以降、人類の活動は急速に自然を破壊してきました。教皇は「我々の無責任な行動によって危害を与え続けてきたため、地球は悲鳴を上げています」と警鐘を鳴らしています。

無責任な人間の行動は、大気汚染や気候変動、水不足、膨大な廃棄物、生物多様性の喪失、世界的な不均衡など複雑な環境問題を引き起こしています。

フランシスコ教皇は、我々が直面している人為起源の環境問題を指摘し、無駄の多い大量消費と場当たり的な開発を批判しています。物質的な需要を満たすための発展に重きを置き、社会的共生や環境の持続性のような他の要素を進展させることを怠ってきたというのです。

気候変動

フランシスコ教皇は、気候とは、人類全員に公共の利益をもたらすものであり、全ての人にとって意味のあることだと理解されています。健全で安定した気候は、人命にとって不可欠な数多くの要素に関与しています。

しかし、200年にわたる急激な産業化に伴う人類の活動が地球温暖化を招いてきました。フランシスコ教皇は、地球温暖化は、おおむね人為起源であると確信しています。

 「ここ数十年の地球温暖化の原因は、主に人間活動の結果排出されている温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、窒素酸化物ほか)が濃縮したものだと、数々の科学研究が示しています。」と指摘しています。

気候変動は、確実に今日の人類が直面する最重要課題となっています。温暖化が引き起こす結果は深刻かつ複雑で、環境、社会、経済、政治および物流などあらゆる分野を網羅しています。誰にとっても頭の痛い問題ですが、貧困家庭を生む原因にもなります。災害や天候の変化に対処できる経済力を持たない最貧困層の人々が影響を受けやすいという偏りが生じるのです。

迅速かつ統一的な行動を

気候変動とその深刻な結果にさらされているにも関わらず、国際政治の反応は鈍く十分ではありません。

フランシスコ教皇は、今日の我々の行動が将来世代の運命を決定づけるのだと思い出させてくれました。気候変動においては防ぐことのできないことですが、私たちの子供や孫たちがつけを払わされるのです。

教皇が我々に投げかけたのは「私たちに続く子供たちが大きくなったとき、どんな世界を彼らに残したいですか?」という問いかけでした。

この問いかけが回勅の重要な点です。

化石燃料や他の有害な炭素排出源からの排出を今のまま続ければ、将来世代の家(地球)をも危険にさらすのです。

フランシス教皇にとって気候変動は、地球に人類が存続するために何らかの対処を取るべき問題なのです。この世界で私たちが生を受けたのは何のためでしょう?ここに存在している理由は何でしょう?私たちが働き、努力するのは何のためでしょう?これらの大切な質問を自問自答してみてはいかがでしょうか。

一日の終わりに、フランシスコ教皇は、国際社会、国、地域、個人レベルでの対話を通して迅速かつ統一的な行動を起こすよう呼びかけました。気候変動は世界的な問題なので、世界的な行動が必要なのです。

 「個々の国が単独で行動しても解決できない深刻な気候問題に対抗するには、世界での対話が不可欠です」と結んでいます。


photo3本記事の執筆者のマーヴィン・トレス・ラゴネラは、気候ネットワークのインターンです。フィリピンのアテネオ・デ・マニラ大学で修士を取得し、ASEAN大学ネットワークと京都大学間の交流プログラムのもと京都大学でエネルギー管理と持続可能性の転換に関する研究に従事しました。

(訳:スタッフ鈴木)

*原文の英語は続きをご覧ください

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