<プレスリリース>

ドイツ政府諮問委員会、2038年までの脱石炭を提言
~日本はもっと早く実現可能だ~

2019年1月29日
特定非営利活動法人 気候ネットワーク
代表 浅岡美恵

 2019年1月26日、ドイツ政府が2018年6月に設置した「成長・構造改革・雇用委員会(通称:石炭委員会)」は、国内の石炭火力発電を2035~2038年の間に全廃すべきだとの結論で合意した。委員会は、現在電力の38%を供給している計84基・4,500万kWの石炭火力発電設備のうち、2022年までに1,250万kWを廃止し、2030年までに1,550万kWを廃止するよう勧告している。

 今後、ドイツ政府はこの勧告を下に法制化を含む政策を決定する予定だ。国内に豊富な石炭・褐炭資源があり、産炭国であるドイツは、石炭火力からの転換が困難だとされ、英(2025年)、仏(2021年)などの他の欧州の先進諸国と比べると脱石炭政策は遅れを取っていた。このたび、脱石炭方針を明確にしたことは大きな方針転換となるものである。温室効果ガスを2020年に40%の削減(1990年比)を掲げたドイツは、その目標が達成困難であると目されていた。さらなる気候変動対策に取り組む上では、産炭国ドイツであっても、脱石炭方針を取ること以外の選択はなかったと言える。

 この歴史的転換に対しては、大きな歓迎の声が上がる一方で、「2038年全廃は遅すぎる」、「EUの中で2030年以降の全廃目標を発表したのはドイツのみだ」、という厳しい評価も数々上がっている。先進国は2030年までに石炭火力を全廃しなければ、パリ協定の目標とは整合しないと試算される。今後ドイツは、脱原発目標(2022年)と共に、この脱石炭目標を政府目標としていかに前倒しで設定し、速やかに実施に移せるかが問われることになる。

 翻って日本では、脱原発に向き合えていないばかりか、現在、多数の石炭火力発電の新設計画が今も進められており、驚くことに現在20基近くが環境影響評価手続きを終え、建設中である。さらに、脱石炭方針の検討にすら着手していない。パリ協定を締結し、IPCCの1.5℃特別レポートの決定も歓迎した日本が、なぜ現在も、気候変動対策と真っ向から逆行する石炭火力発電のあり方を見直そうとすらせず、新設計画を野放しにし続けているのか。石炭資源のほぼ100%を輸入に依存し、石炭産業がほぼない日本は、ドイツよりも容易に、そして早く脱石炭を実現できるはずである。

 気候ネットワークでは昨年11月、「石炭火力2030フェーズアウトの道筋」提言レポートを発表した。ここでは、新規の計画の全てを速やかに中止するとともに、既存の4,412万kWの発電所の2030年までのフェーズアウトを提案している。そして、気候変動に取り組む長期戦略に明確にその方針を位置づけ、具体的な計画を策定することも提案している。

 議長国を務めるG20大阪サミットを6月に控え、日本として、気候変動問題にどう自らの行動を引き上げる用意があるのかが問われている。長期戦略を検討中の今こそ、2030年の脱石炭の検討を開始するべき時である。

 

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