本日、気候変動政策、環境経済学、環境社会学、森林科学などの専門家、気候変動・バイオマス、森林保全などの市民団体など276人10団体が連名で、固定価格買取制度(FIT)におけるバイオマス発電の認定に温室効果ガス削減評価を求める声明を発表し、経済産業省、環境省などに提出しました。

固定価格買取制度(FIT)におけるバイオマス発電に、
ライフサイクル全体での温室効果ガス(GHG)排出評価の導入を!

再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)により、電力利用者の賦課金で促進されているバイオマス発電ですが、認定量の9割は輸入燃料に依存し、本来のFIT法の目的(環境負荷低減、地域活性化)に沿わないことが懸念されています。パーム油など原料の生産段階で、森林減少や生物多様性の破壊が懸念される計画も多く存在します。

今年4月、経産省は「バイオマス持続可能性ワーキンググループ」を立ち上げました。その資料によれば、森林伐採などの土地利用転換を考慮に入れなくても、多くの輸入バイオマス燃料において、ライフサイクルでの温室効果ガス(GHG)排出量は、化石燃料(天然ガス)と同等もしくはそれ以上となっています(下図)。森林や泥炭地の開発を伴う場合、GHG排出量はさらに膨大なものとなります。このままでは、FIT法の目的にそぐわない大量のバイオマス発電が稼働し、パーム油発電だけでも最大4兆円の利用者負担(注)が発生する可能性があります。

FITにおけるバイオマス発電に、ライフサイクルアセスメントによる温室効果ガス(GHG)排出を考慮した制度の導入を求めます。

注)パーム油発電認定量(180万kW)に年間稼働時間(330日×24時間)を乗じ、さらにパーム油発電の買い取り価格(24円/kWh)から回避可能費用(10円/kWh)を引いた13円/kWhを乗じた金額。

※なお、2019年10月末まで、個人・団体の賛同を呼び掛けています。こちらのフォームからご連絡ください。

呼びかけ人(20人):明日香壽川(東北大学東北アジア研究センター教授(気候変動政策))、井上 真(早稲田大学教授/環境社会学、森林ガバナンス論)、嘉田由紀子(参議院議員、前滋賀県知事、農学博士)、金沢謙太郎(信州大学教授/環境社会学)、後藤敏彦(環境経営学会会長)、坂西欣也(国立研究開発法人産業技術総合研究所福島再生可能エネルギー研究所(FREA)・所長代理)、下村委津子(認定NPO法人環境市民 副代表理事)、関 良基(拓殖大学教授/森林科学)、谷口信雄(東京大学先端科学技術センター特任研究員)、寺西俊一(一橋大学名誉教授)、長谷川公一(東北大学大学院教授(環境社会学)、藤井良広(一般社団法人環境金融研究機構代表理事/上智大学地球環境学研究科客員教授)、細川弘明(京都精華大学教授,高木仁三郎市民科学基金理事)、星川淳(作家・翻訳家)、丸山康司(名古屋大学大学院教授/環境社会学)、三浦秀一(東北芸術工科大学教授)、水口剛(高崎経済大学教授)、水戸部秀利(宮城厚生協会若林クリニック所長・きらきら発電市民共同発電所理事長)、山下博美(立命館アジア太平洋大学准教授/環境社会学)和田喜彦(同志社大学教授/エコロジー経済)

呼びかけ団体:バイオマス産業社会ネットワーク、国際環境NGO FoE Japan、気候ネットワーク、地球・人間環境フォーラム、プランテーション・ウォッチ、熱帯林行動ネットワーク、九州バイオマスフォーラム 

賛同人(256人):(略)

賛同団体(4団体):岩手・木質バイオマス研究会、NPO法人蔵前バイオエネルギー、NPO市民放射能監視センター、福島老朽原発を考える会

参考URL

「バイオマス発電に関する共同提言」