【声明】
ベトナム・ブンアン2石炭火力発電事業からの撤退を求める
機関投資家の共同エンゲージメントを歓迎

~日韓の官民は撤退要求に耳を傾けるべき~

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
気候ネットワーク
国際環境NGO FoE Japan
国際環境NGO 350.org Japan
メコン・ウォッチ

ベトナム中部で進められているブンアン2石炭火力発電事業(以下、ブンアン2)に関与する日韓の公的金融機関や企業に対し、ノルデア、アムンディ、AP7、アリアンツ等を含む複数の機関投資家が事業からの撤退を迫っていると報道されています【注1】。私たち環境NGOは、この機関投資家の共同エンゲージメントを歓迎します。ブンアン2は日本の官民が海外で新規に建設しようとしている残り少ない石炭火力発電事業の一つとされていますが、石炭関連事業からの投融資撤退(ダイベストメント)が世界で進むなか、日本の官民の姿勢に国際社会から改めて厳しい目が向けられています。

北欧最大の機関投資家Nordea Asset Managementは、他の機関投資家と連名で、同事業に関与している(もしくは関与するとされる)公的金融機関や企業に対して書簡を送ったことを明らかにしています【注2】。書簡では、同事業がパリ協定の目標や持続可能な開発目標(SDGs)と乖離していること、また、再生可能エネルギーの新規建設がより安価になっているベトナムで、石炭火力の経済性への疑問について指摘しています。また、世界法律家連盟(ELAW)による分析は、同事業の環境影響評価(EIA)が国際的に適用されている排出基準よりも低い基準を用いていること、石炭火力以外の発電方法について検討していないなど、国際基準を満たしていないと結論付けていることも取り上げています。そして、企業は気候関連問題に積極的に取り組むことが不可欠で、ブンアン2は気候関連リスクや財政的リスクのみならず評判リスクも高いとした上で、ブンアン2はもとより「世界中で例外なく新規の石炭火力事業はしないという公約を掲げるべき」と要求しています。

書簡の宛先は公表されていませんが、ブンアン2の事業会社に出資する三菱商事、中国電力、韓国電力公社(KEPCO)、付保を検討中の日本貿易保険(NEXI)、そして融資を検討中の国際協力銀行(JBIC)、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループ、三井住友トラスト・ホールディングス、韓国輸出入銀行(KEXIM)、また、EPCで関与する斗山重工業、サムスン物産が含まれているとみられます。

気候変動は喫緊の課題です。真剣に取り組まない企業は、すでに投資家の投資対象から外されており、その流れは今後いっそう加速するでしょう。日本企業も化石燃料からの早期脱却が求められています。JBICやNEXI、民間銀行・保険会社は、自らが脱石炭を推進するとともに、日本企業による石炭火力発電事業からの撤退を後押しすべきです。

菅首相は10月26日の所信表明演説で、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする目標を掲げ、「もはや、温暖化への対応は経済成長の制約ではありません。積極的に温暖化対策を行うことが、産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につながるという発想の転換が必要です」と述べました。しかし、国外で新規の石炭火力発電所の建設を支援し、相手国のCO2排出を長期にわたりロックインさせるのでは、政府の方針としても矛盾しています。

ブンアン2はまだ計画段階の案件です。日韓の公的金融機関および企業は、これまでに挙げられてきた国内外からの反対の声【注3】に加え、今回の機関投資家からの要求も真摯に受け止め、事業から「撤退」すべきです。

脚注

【注1】
例えば以下報道など。

【注2】
Nordea Asset Management, 2020年10月, Enquiry regarding the Vung Ang 2 coal-fired power plant project in Vietnam,
https://www.nordea.lu/documents/static-links/Nordea_CEO_letter_on_climate_coal_phase_out_Vung_Ang_2.pdf/
Nordea Asset Managementが上記URLで公開している書簡の連名機関は、AkademikerPension、Amundi、AP7、Brunel Pension Partnership、CCLA、Church Commissioners for England、Church of Finland、Church of Sweden、Danica Pension、Folksam、LD Pensions、Nordea Life & Pension、PenSam、Sampension、Storebrand Asset Management、Varma、Vellivで、連名機関はこの他にもおり、宛先(ブンアン2関与企業)により異なる連名で送付したとしている。
例えばIJGlobalの記事(2020年10月22日, Investors launch ESG offensive against Vietnamese coal plant, https://ijglobal.com/articles/150815/investors-launch-esg-offensive-against-vietnamese-coal-plant)では、上記の他にAllianz、PensionDanmarkの名前も報道されている。

【注3】
No Coal,Go Green!日本の海外石炭融資にNO!https://sekitan.jp/jbic/category/press-release

連絡先

国際環境 NGO FoE Japan
〒173-0037 東京都板橋区小茂根 1-21-9
tel: 03-6909-5983 fax: 03-6909-5986

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