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国内対策関係

2002年11月25日

経済産業省・環境省の「エネルギー税制見直し案」に対する炭素税研究会コメント


気候ネットワーク

●経産省は、その所管である「石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計(石特会計)」及び「電源開発促進対策特別会計(電特会計)」の歳入・歳出双方を見直すエネルギー税制見直し作業を進めており、2003年10月の実施を目指している。
●石特会計は、歳入面では、石油・天然ガス・液化石油ガス(LPG)に課税してきた「石油税」を衣替えし、石炭に新たに課税し、天然ガス・LPGへの課税を強化する方針を示している。石炭・天然ガス・LPGの税率を段階的に引き上げ、2007年度には500?800億円程度の増税を行うとしている。歳出面では、そのグリーン化を進めるとし、環境省と共管することに合意した。
●電特会計は、歳入面では、電源開発促進税(電促税)の減税を実施するとしている。上記の石油税増税と電促税減税を合わせ税収中立的に行うとし、電促税は2007年度には600?650億円程度を減税するとしている。歳出面では、原子力発電などへの支援の重点化をうたっている。
●以上を概略とした本見直し案に対する私たち「炭素税研究会」のコメントを以下に示す。

要 旨

 本見直し案は、歳入のグリーン化として私達が強く要望してきた「石炭課税導入」を行う点は評価できる。また、「歳出のグリーン化」を進める方針を示したことも基本的に評価できる。  しかし、石炭への課税率は十分とは言えず、高率化が必要である。歳出のグリーン化も、石特会計の範囲におさまっていることは問題で、電特会計と合わせた歳出の大枠を変えなければならない。その中身も、京都メカニズムでなく、省エネルギー/自然エネルギーへの支援を柱としなければならない。
 本案も、相変わらず「原子力推進」をうたっており問題である。原発支援は大幅縮小し、原発の環境負荷への課税を強化するのが当然である。
 「経産省と環境省は、環境対策と銘打ち、問題の大きい特別会計を協力して維持し、それぞれの権限維持・拡大を図っているだけ」と批判されないために、両省は、以上の課題に取り組むとともに、「特別会計の将来的一般財源化」及び「透明性と市民参加の確保」に努めねばならない。
 本案は「石油への課税率を維持」することになっているが、民生・運輸部門のCO2排出増を促さないため、当然の措置である。また、本案で「今回の石油税見直しは環境税と全く別もの」としている点も当然であり、「別途炭素税導入が急務」である。

本 文

<歳入(課税)面>

1.石炭への課税
 本案では石炭を新たに課税対象としている点は評価できる。これは環境に配慮した課税面の改革として、私達がこれまで強く主張してきたことであり、極めて重要である。ただし、本見直し案における石炭への課税率は石油への課税率と比べ低く抑えられており不十分である。燃料転換を進めるために、石炭への課税の高率化をはかる必要がある。

2.石油の課税率
 石油への税の引き下げは、特に増加が著しい民生・運輸部門のCO2排出増をさらに促す価格インセンティブを与える誤った政策であり、行ってはならない。本見直し案では、石油への税率を引き下げない方針が固められているが、これは当然の措置である。

3.炭素税の別途導入
 今回の見直しは現行エネルギー課税の歪みを正すだけで、エネルギー全体としては現行水準の課税を維持するものにすぎない。本案のままでは、CO2排出増が著しい民生・運輸部門のエネルギー消費量を削減することができない。地球温暖化防止のために、本見直しとは別に、 既存のエネルギー税に「上乗せ」し、価格上昇によりCO2排出削減を促す「炭素税」の導入が急務である。本案が「今回の見直しは環境税(炭素税)とは異なるものである」点を明確化しているのは当然のことである。別途、炭素税の導入を急がねばならない。

<歳出(財政支出)面>

1.歳出のグリーン化
 本案の「歳出のグリーン化を推進する」という基本的な考え方は評価できる。ただし、その範囲が石特会計に限られている点は、不十分であるといわざるを得ない。「実際には電特会計の温暖化対策予算が石特会計に移動するだけで、石特会計・電特会計を合わせた両会計の歳出の大枠は変わらない」ことも危惧される。真の意味で歳出のグリーン化を進めるには、両特会を合わせた歳出全体をグリーン化する必要がある。
 また、本案は、グリーン化の中身として京都メカニズム対策を推進するとしているが、海外削減手法である京都メカニズム推進の前に、まず国内排出削減手法を主とすべきであり、CO2排出及びその他の環境負荷の低減という観点から優れている省エネルギー/自然エネルギー対策を柱とすべきである。

<その他>

1.原子力発電
 本案では「日本の政府や企業が海外で手がけたCO2排出削減の成果を日本に移転する事業への補助金などを拡充する」としている。しかし、海外削減手法である共同実施やCDMの本来あるべき姿をしっかりと議論しないまま、それらに補助金を出そうというのは問題である。議論が進んでいない現状では、京都メカニズムへの利用を基本的に許すべきではない。

2.特別会計/共管
 「経産省は、時代遅れで予算も余っている石特会計と電特会計を「環境配慮の強化」と銘打って維持し、温暖化対策事業を管理下におきつつ権限維持・拡大を構想しているだけではないか」「環境省も、石特会計を共管化することで、結局は自らの予算獲得を考えているだけではないか」という疑念もある。
 非効率・不透明など様々な問題が指摘されている「特定財源」「特別会計」は、廃止していく流れにあり、今回の見直しはその流れに逆行する。良い「特別会計」であっても、既得権益化し非効率になる問題はついてくる。今回の特会見直しと共管化が経産省や環境省の権限維持・拡大のために行われるものであってはならない。近い将来には「石特会計」「電特会計」は一般財源化を目指すべき、という方向性を確保すべきである。
 環境省の共管により「グリーン化」が保障されるわけではない。今後、共管部分の歳出の決定が透明な市民参加のプロセスで行われ、真に適切で効果的な温暖化対策への支援がなされるよう担保する必要がある。
 特に、環境省は、共管獲得に満足することなく、炭素税の早期導入を必ず実現せねばならない。

3.政策プロセス
 経産省・環境省は今回の見直しを省益に利用しているにすぎないという疑念を払拭しなければ、今後、益々両省及び官僚機構全体への市民の不信と不支持は強まるであろう。それを防ぐには、両省が、以上の課題に真摯に取組むと同時に、本見直しの検討・実施プロセスを改善し、透明性と市民参加を確保しなければならない。

以上

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