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COP8の結果について

2002年11月21日、マラケシュ

COP8の結果について

気候ネットワ−ク

会議の概要

 2002年10月23日(水)〜11月1日(金)、インドのニューデリーにおいて、気候変動枠組条約第8回締約国会議(COP8)が開催されました。締約国会議(COP)は、気候変動枠組条約に参加する186ヶ国が地球温暖化防止の国際的な取り組みについて交渉する会議であり、1997年のCOP3では、先進国の数値目標を定めた「京都議定書」が採択され、昨年2001年のCOP7では、その京都議定書の運用ルールについて最終合意した「マラケシュ合意」が成立しました。

●京都議定書の発効に届かぬままCOP8開催

多くの国は、今年8〜9月にヨハネスブルグで開催された「持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)」までに京都議定書を発効させることを目指していましたが、アメリカ抜きの発効には不可欠なロシアがまだ批准していないため、京都議定書の発効はWSSDにもCOP8にも間に合いませんでした。そのためCOP8は、議定書の発効へ確実につなげることが重要な会議となりました。

●2013年以降の対策の交渉をにらんだ前哨戦− 南北の対立

さらに、昨年のマラケシュ会議で京都議定書の運用ルールについては合意していたため、各国は、数値目標が定められている第1約束期間以降の“次のステップ”に目を向けて、COP8に臨みました。かろうじて各国の妥協を引き出し「デリー閣僚宣言」を採択しましたが、途上国と先進国の間には、優先すべき事項についての考え方に大きな隔たりがあり、南北の対立が際立ちました。特に、世界全体での削減のあり方の議論を始めようとする先進国に対して、途上国側には先進国の義務の履行に対する不信感が強く、途上国の持続可能な開発と温暖化の被害への対応が最優先課題だと主張し、議論は最後まで平行線をたどりました。

●目だったアメリカの干渉

アメリカは今回、「経済成長が環境対策の鍵であり、途上国に過度の削減の負担を課すべきではない」と途上国の支持にまわりました。アメリカはこれまで、途上国が削減義務に参加していないことを京都議定書の反対理由としてきましたが、COP8では、途上国の削減が先送りになる方がアメリカに対する風当たりも少なくなると考えたようです。さらに、南北問題を際立たせることで、意図的に京都議定書の解体をねらっているのではないかとも言われました。

●詳細の議論での進展は少なく

COP8では、「デリー閣僚宣言」のほかにも、気候変動枠組条約のもとで議論すべきことや、京都議定書の実施ルールでさらに詰めなければならないことの交渉も行われました。一部では合意に至りましたが、多くの議題で結論が出せず、次の補助機関会合などで継続して審議されることとなりました。



デリー閣僚宣言

●デリー宣言の採択までの経緯

 「デリー閣僚宣言」の採択は、COP8議長国インドが会議の成果として提案したもので、今後の温暖化交渉を前進させる役割が期待されていました。
 しかし、インドのバールCOP8議長が10月28日に出した第1次案では、途上国の関心事である持続可能な開発の促進や、温暖化への適応措置などについても、その具体化を求めるものではなく、京都議定書の発効を求める文章すらないという弱い宣言案でした。ほとんどの国が不満を示すなか、アメリカが全面的にサポートを表明したことは、その案の性格をよく示しています。31日に提示された第2次案には、京都議定書の批准を求める文言は入っていたものの、その他の箇所で各国の主張がバラバラに織り交ぜられ、その後11月1日未明まで続いた徹夜の交渉でも、全く合意が得られていない状況でした。

●デリー宣言の主なポイント

(宣言本文(仮訳)は下記)

・条約の「究極の目標」を達成するためには地球規模で排出の大幅な削減が必要とのIPCCの第三次報告の内容を確認していること、京都議定書のタイムリーな批准(締結)を促していること(a)、気候変動の悪影響へ適応するために条約とマラケシュ合意の約束の実施を求めていること(e)、再生可能エネルギー資源の割合を増加させるとしたこと(l)、などが盛り込まれたことは、第1次案からのわずかなる改善点である。ただし、議定書の批准や再生可能エネルギーに関する文言は、8月のヨハネスブルグ・サミットで合意された文言と同じで、それを繰り返すだけに終わった。

・EU・日本などの先進国(アメリカを除く)が求めた、2013年以降のさらなる行動について交渉プロセスを開始することについては明言されなかった。ただし、温室効果ガス排出の緩和(削減を意味している)が高い優先課題であり続けることを確認し、緩和・適応の両方に関連する行動については非公式の情報交換を促進する(f)とされた。日本政府はこれを、間接的ではあるものの次に向けたステップへの一歩と受け止めている。しかし、実質的な道が開かれたとみるのは早計である。

・途上国の悪影響への措置と連動して、サウジアラビアなどの産油国が主張する経済への悪影響への対応措置も一緒に盛り込まれ、十分な考慮が払われるべき(g)とされたこと、エネルギーを多様化するものとして化石燃料や大規模水力を推進する文言が盛り込まれたこと(k)(これもWSSDと同じ表現)など、当初の議長案から後退した部分もある。

 難航の末に、このような「デリー宣言」が採択されたものの、次のステップに踏み出したといえる積極的な内容には至りませんでした。南北の対立も解消に向かったとはいえず、逆に、今後悪い影響を及ぼしかねないものも含まれています。京都議定書の発効後の第1回会合を兼ね、次のステップに踏み出すための大変重要な会議となるであろうCOP9に向けて、信頼関係を構築するための努力が各国に求められています。

主要な個別議題―補助機関会合SBI・SBSTA

●資金メカニズム

 マラケシュ合意では途上国を支援するため3つの基金の設置が決まりましたが、まだいずれも運用していません。COP8では、後発開発途上国基金については迅速な運用と支払いを確保することとしたガイダンスを、また特別気候変動基金についてはCOP9で遅延なく基金を運用するためのガイダンスを作ることを決めました。迅速な資金供与を求める途上国と、お金を出し渋る先進国との間での合意作りが難しく、COP8の議題で最も難航した議題の一つでした。

●途上国(非附属書I国)の国別報告書

 条約では、途上国にも(資金面での支援を得ながら)国別報告書の提出を求めており、多くの途上国が第1回目の国別報告書を提出しています。今回は、今後の国別報告書についてのよりしっかりした指針作りが課題でしたが、途上国グループは、新たな義務が課されることについては、能力不足や資金不足を理由に指針の強化に反対し、結果的に、途上国の意向を大きく反映した指針が採択されました。

●HFC・PFCの扱い

 京都議定書の削減対象ガスであるHFC・PFCが、モントリオール議定書のもとではオゾン層を破壊するフロンの代替物質として利用促進されている問題について、COP8では、モントリオール議定書の技術経済評価パネル(TEAP)と気候変動に関する政府間パネル(IPCC)に、2005年までに特別共同報告書を作成することを求めました。これにより実質的には2005年まで議論が止まると考えられます。また2005年以降は、HFC・PFCを扱っていた議題を抹消し、「他の関連国際機関との協力」という議題の中でまとめて取り扱うこととしてしまいました。これは、HFC・PFCを全廃へ導くことへ強く反対するアメリカなどのフロン業界と、業界の利益を代弁する日・米政府の主張が色濃く反映された結果です。

●CDM理事会からの報告

 CDM理事会の運営規則、小規模CDMプロジェクトの簡略手続きについて採択しました。運営組織についてはCOP8で指定することが出来ず、理事会が暫定措置を取ることとし、次のCOPで指定することとされました。なお、京都議定書を離脱しているアメリカは、離脱してもCDM理事会への参加を制限されないように、効果的な参加プロセスを執拗に求め、会議を混乱させました。

●CDMにおける吸収源活動

 マラケシュ合意では、クリーン開発メカニズム(CDM)事業として、新規植林・再植林に限って基準年排出量の1%を上限に、吸収源活動を利用することを認めました。その方法論や定義についてさらに検討することが必要になっており、追加性やリーケージ、非永続性などの詳細な論点について議論されましたが、各国が意見を述べ合うだけで終わり、議論は次のSBSTAで継続されることとなりました。

●報告・審査手続き等

 COP8では、京都議定書で先進国の義務とされている排出量などの通報や、そのレビュー、補足的情報の報告、不遵守によって京都メカニズムの利用を停止された場合のその回復のプロセスなど、詳細のガイドラインが議論され、合意されました。

●政策と措置

 京都議定書では、数値目標の達成のための国内措置については各国にまかせています。これまでワークショップを開催して優良事例の紹介などを行ってきました。COP8では、サウジアラビアを代表する産油国が、温室効果ガスの削減策だけでなく、対策によって受ける経済への影響についても同様に焦点を当てるべきだと強く主張し、議論は合意をみることが出来ず、次のCOP9で継続して検討することとなりました。

●ブラジル提案(科学的・方法論的側面)

 ブラジル政府は、COP3前から、気温上昇への過去の排出の寄与度に応じて、各国に排出削減を分担するアプローチを提案してきました。このような考え方は、第2約束期間以降の数値目標を考える一つの方法といえます。この「ブラジル提案」に関してはこれまでに、専門家の会合や研究機関による科学的な研究がなされてきており、今回の会合で取り扱いが議論されました。今後も更に検討を進め、SBSTA20(2004年)にその進展を報告し、SBSTA23 (2005年)に議論することになりました。

今後に向けて

来年イタリアで開催されることが決定したCOP9は、京都議定書の発効に至れば、1回目の議定書の締約国会合(COP/MOP1)を兼ねることとなり、とても重要な会議となります。COP8はそこへ向けた橋渡しとして強い宣言をまとめることができず、逆に、今後の交渉の困難さを予見させる南と北の国々の間の溝の深さを露呈した会議となりました。また産油国やアメリカなどが途上国の交渉姿勢に積極的に関わり、一層複雑な交渉の展開となっています。地球規模で気候の安定に向けて、南北間の不信感をぬぐい、アメリカや産油国がつけ入る余地を与えずに建設的な一歩を踏み出すために、以下の3つが必要です。

●京都議定書の発効

京都議定書の発効は、温暖化対策の一歩です。既に97年の議定書採択から5年が経過しています。来年の夏には発効させて、COP9をCOPMOP1として同時開催させることが必要です。

●先進国の大幅な削減と途上国への支援

先進国が京都議定書の目標を国内で確実に達成できる削減対策の実施し大幅削減を実現させることと、途上国の削減を促すための技術移転、キャパシティビルディング、また気候変動の悪影響を受ける途上国へ対する支援などを、具体的・積極的に進めることが必要です。それが不十分なまま途上国の参加の議論を始めることは不公平だと考えられます。

●近い将来に世界全体での大幅な削減

今後10年〜20年で、大幅に世界の温室効果ガスの削減をしなければ、人類の生存に安全なレベルで温暖化をくい止めることは難しいと考えられています。事態は極めて深刻で緊急です。「共通だが差異ある責任」の原則のもとに、世界全体での削減に向けて早期に検討を開始すべきです。その際、途上国の削減とともに、先進国の大幅な削減が必要であることはいうまでもありません。



気候変動及び持続可能な開発に関するデリー閣僚宣言(環境省仮訳)
2002年11月1日

 気候変動枠組条約第8回締約国会議に出席した閣僚及びその他の代表団長は、条約の究極の目的、原則及び約束を想起し、経済社会開発と貧困の撲滅が、開発途上国の第一の最優先事項であることを再確認し、条約の究極の目標を達成するためには地球規模で排出の大幅な削減が必要である旨を確認するIPCC第3次評価報告書の知見、及び当該報告書の示唆に関し、科学上及び技術上の助言に関する補助機関で進行中の検討を関心を持って認識し、附属書I国及び非附属書I国の両方で緩和行動が現在実施されていることに注目し、そして気候変動を防止するための温室効果ガス排出の緩和は、条約の諸条項の下で高い優先課題であり続け、かつ同時に、適応措置を進めるために緊急の行動が求められることを強調し、気候変動は、すべての地域において将来の福利、生態系及び経済成長を危険にさらすことを認識し、すべての国、特に後発途上国及び小島嶼開発途上国を含む開発途上国は、気候変動の負の影響による増大するリスクに直面していることを深く憂慮し、アフリカは気候変動と貧困の複合影響を最も被る地域であることから、アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)等の開発イニシャティブは、持続可能な開発の文脈の中で支持されるべきであることを認識し、現在及び将来に直面する挑戦に対応するため、気候変動とその悪影響は、持続可能な開発の要請に合致しつつ、対処されるべきことを決議する。このため、我々は、次のことを要請する。

(a) 京都議定書を締結した締約国は、未だ締結していない国に対し、京都議定書をタイムリーに締結するよう強く求めるべきである。

(b) 締約国は、持続可能な開発を促進する権利を有し、そして持続可能な開発を促進すべきである。経済開発が、気候変動に対処するための措置を採るために不可欠であることに鑑み、気候システムを人為的な変化から保護するための政策と措置は、締約国ごとの固有の状況にふさわしいものであるべきものであり、また、国家開発計画と統合されるべきである。

(c) 持続可能な開発の国家戦略は、水、エネルギー、保健、農業及び生物多様性等の鍵となる分野において、さらに十分に気候変動の目的を統合させ、かつ、持続可能な開発に関する世界首脳会議の成果に立脚して構築すべきである。

(d) すべての締約国は、共通であるが差異のある責任、それぞれの能力、並びにそれぞれの国家的・地域的な開発優先事項、目的及び事情を考慮し、持続可能な開発を達成するため、気候変動及びその悪影響に対処するための条約に基づく約束の実施を継続的に進めなければならない。

(e) 気候変動の悪影響に適応することはすべての国にとって高い優先課題である。開発途上国、とりわけ後発途上国及び小島嶼開発途上国は特に脆弱である。適応には、すべての国の緊急的な配慮と行動が必要である。すべてのレベルにおける脆弱性と適応に関するアプローチの開発のため、また、持続可能な開発戦略に適応の問題意識を統合することを目的とした能力開発のために、効果的で結果指向型の措置が支持されるべきである。これらの措置は、条約及びマラケシュ合意に基づく既存の約束の完全な実施を含むべきである。

(f) 締約国は、締約国が気候変動に対する効果的で適切な対応を発展させ続けることを支援するため、緩和及び適応に関連する行動についての非公式の情報の交換を促進すべきである。

(g) 気候変動の悪影響と対応措置の実施による影響から生起する、開発途上国締約国の固有のニーズと懸念に十分な考慮が払われるべきである。

(h) エネルギー部門を始めとする開発の鍵となる分野、及び民間部門の参画、市場指向型アプローチ、公共支援策等を通じた投資の分野における革新的な技術を開発し、普及するための国際協力が促進されるべきである。

(i) エネルギー、輸送、産業、保健、農業、生物多様性、林業、廃棄物管理を含むすべての関連する部門における具体的なプロジェクト及び能力開発を通じ、技術移転が強化されるべきである。研究開発、経済の多様化、関連する地域、国及び地方における持続可能な開発のための組織の強化を通じ、技術的進歩が促進されるべきである。

(j) 各国の特性及び事情を考慮し、様々な措置を通じて、信頼でき、入手可能で、経済的に実施可能で、社会的に受容可能で、環境上健全なエネルギーサービス及び資源へのアクセスの向上が図られるべきである。

(k) 先進的、より清浄、より効率的、入手可能で費用対効果に優れた、化石燃料技術や、水力を含む再生可能エネルギー技術を含んだエネルギー技術を開発することにより、エネルギー供給を多様化するとともに、相互に合意された優遇条件で途上国に移転するため行動が求められる。

(l) 国家的な、及び自発的で地域的な目標とイニシャティブの役割を、これらが存在する場合は認識し、エネルギー政策が開発途上国の貧困撲滅に向けた努力を支持するものであることを確保しつつ、総エネルギー供給における貢献度を増大することを目的として、すべてのレベルにおいて再生可能なエネルギー資源の割合を実質的に増加させる緊急の行動が求められる。

(m) 附属書I国は、附属書II国については資金、技術移転及び能力開発に関する条項を含め、条約に基づく約束をさらに実施するとともに、気候変動を緩和するための国家政策及びその関連措置の採択を通じ、条約の究極の目的に従って、人為的な温室効果ガス排出の長期的な推移を改変するために主導的に取り組んでいることを例証すべきである。

 すべての国は、デリーの第8回締約国会議で達成された良好な協力関係、特に技術的作業の進展とここで行われた建設的な議論を歓迎するとともに、バールー大臣及びインドの政府と国民の親切なもてなしに対し感謝の意を表する。

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