<声明>

原発・石炭回帰の「第5次エネルギー基本計画」
民意無視の閣議決定に対する抗議声明

2018年7月3日
特定非営利活動法人 気候ネットワーク
代表 浅岡美恵

 

 2018年7月3日、「第5次エネルギー基本計画」が閣議決定された。今回、政府は、世界を取り巻くエネルギー情勢の劇的な変化を考慮することなく、原発や石炭火力をベースロード電源とするこれまでのエネルギー基本計画を踏襲する内容で決定した。時代遅れのエネルギー政策の決定に対して強く抗議するとともに、多数の市民が脱原発・脱石炭で再エネシフトを求めてきたことに対して、完全に民意無視のプロセスで決定したことに対しても強く抗議する。

 

1.エネルギー基本計画の内容についての問題 ~世界の潮流に逆行、再びチャンスを失った~

 2014年のエネルギー基本計画の改定から3年が経過し、世界は今、パリ協定のもと「脱炭素社会」の早期実現に向け、「原発・化石燃料」から「省エネ・再エネ」へとダイナミックにシフトする「エネルギー大革命」の中にある。この転換こそが、新しいビジネスチャンスとなるため、多くの先進国も途上国も、再エネシフトを持続可能な経済活動の柱にしつつあるのだ。

 日本は、自然資源(再生可能エネルギー資源)に恵まれた有数の国だ。だからこそ日本もエネルギー政策を抜本的に見直し、地域社会を豊かにすることが不可欠だ。しかし、今回のエネルギー基本計画は従来の原発・石炭を温存させ、これら旧来型の事業にも多額の予算が投じられる基本政策として既得権に強く配慮した政策となった。これにより、日本は持続可能な社会づくりを放棄したばかりか、国際交渉力や国際的なアドバンテージをみすみす手放すことになったと言える。

 

2.決定プロセスについての問題 ~民意無視の決定プロセス~

 今回の改訂作業は、総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会で行われてきたが、関係業界寄りに強く偏ったメンバー構成で原発や石炭を推進するステークホルダーが多数を占めた。分科会開催期間に、経産省は市民の意見を集める「意見箱」を設置し、環境NGOや市民団体から多数の意見が送られていたが、意見の反映を試みたのはわずか1名の委員にとどまり、結果的には内容に反映されることはなかった。

 そして、5月19日から30日間行われたパブリックコメントでは1710通の意見が提出されたことが明らかになったが、すべての意見が公開されたわけではなく200項目程度に分類集約されるにとどまり、どのような意見が多かったのかも明らかになっていない。これと同時に、今回は53,403名の脱原発に舵を切るエネルギー政策の大転換を求める署名を提出しているが、脱原発を求める人々の声は完全に無視された。世界共通のゴールとして掲げられているSDGsでも意思決定プロセスとして市民参加は非常に重視されているが、民意が完全に無視された形で決定されたこのプロセスも世界に逆行するものだと言える。

 

参考

●気候ネットワーク「エネルギー基本計画改訂にあたっての意見書」
https://www.kikonet.org/info/press-release/2018-03-02/basic-energy-plan-opinion

●資源エネルギー庁「第5次エネルギー基本計画策定に向けた パブリックコメントの結果について」
http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000175672

●資源エネルギー庁「新しいエネルギー基本計画が閣議決定されました」
http://www.meti.go.jp/press/2018/07/20180703001/20180703001.html

 

プレスリリース(PDF)

【プレスリリース】原発・石炭回帰の「第5次エネルギー基本計画」 民意無視の閣議決定に対する抗議声明(2018/07/03)

 

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