石炭火力発電所の新設計画、規模別出資比率が一番高い関西電力グループをウォッチ!


 こんにちは。東京事務所の桃井です。

 気候ネットワークが運用している石炭火力発電所建設計画ウォッチはご存知でしょうか。現在、48基もある計画をリスト化し、環境アセスメントの状況や個別の計画情報を集めてアップしています。

 石炭を燃料としてこれから計画すること自体がすべて問題なのですが、特にその中でも国際合意の基準に満たない案件や、環境大臣から「是認できない」と意見された案件、住民から説明会の開催を求めても一切回答がない案件など悪質ともとれる計画があります。

 ここでは、全国47基の計画に対して、規模別出資比率が最も高い関西電力(関電)グループの案件をまとめてみました。

【1】赤穂(兵庫県赤穂市)

燃料転換でボイラー技術は国の基準にも適合せず

 関西電力の既存の重油・原油を燃料とする火力発電所からボイラーを改造して石炭へ燃料転換する計画です。設備容量は120万kW(60万kW×2)で2020年度運転開始予定としています。「原動力設備のみの変更」との理由から、国の環境アセスメントの対象になっておらず、現在、「自主アセスメント」が進行中です。

 まず、自主アセスは、情報公開や住民の参加、環境配慮が確保されているかどうかの確認手続きが十分にできないとの問題があります。そして実際、この計画では国が求める”最先端技術“よりも劣っているボイラー技術(超々臨界圧=USCではなく、超臨界圧=SC)を採用しています。このSCという技術は、通常の環境アセスでは承認されない古い技術なのです。

 さらに、この技術は、昨秋、経済協力開発機構(OECD)で規制された途上国向けの基準にも劣るものです。つまり、途上国ですら導入すべきでないと国際的に合意された古い技術を、先進国である日本で今後新しく導入しようとしているのが関西電力、ということです。

(追記)2017年1月31日、関西電力は、石油を燃料とする火力発電所「赤穂発電所(兵庫県赤穂市、60万kW×2基)」について、石炭へと燃料転換する計画を見直すと発表しました。国内48基にのぼる石炭火力発電所新増設計画のうち、計画が中止となったのは今回が初めてです。詳細はこちらをご覧ください。

【2】市原(千葉県市原市)

人口密集地帯で追加・複合汚染に配慮せず

 東京電力管内の千葉県市原市で、関西電力の子会社である関電エネルギーソリューション(KENES)と石油元売り大手の東燃ゼネラル石油とが共同出資し、新規の石炭火力発電所計画(100万kW)を推進しています。

 2015年9月には環境アセスメント配慮書が公表され、これに対して環境大臣は同年11月に「是認できない」と意見しました。ところが、今年2016年2月5日には方法書の手続きへと進み、8月には経済産業省の審査も通過してしまいました。

 現在でさえ、大気汚染が環境基準に満たない場所であり、周辺に学校や病院もあることから、環境大臣から追加的な大気汚染の懸念が示されていたのです。しかし、事業者側からは具体的な対応策は示されていない状況です。

【3】秋田港(秋田県秋田市)

首都圏用電源?SOx・NOx排出は都市部の2倍

 東北電力管内の秋田県秋田市の秋田港で、KENESが丸紅と共同出資をして新規建設を推進する石炭火力発電所計画です。規模は130万kW(65万kW×2)と非常に大規模で、首都圏用電源などとも報じられています。

 市原同様、環境アセスの配慮書で環境大臣が「是認できない」と意見していましたが、今年3月に環境アセスの方法書が公表され、経済産業省の審査会を通過してしまいました。

 この計画のSOxやNOxの排出濃度では、SOxが41ppm、NOxが30ppmと、いわゆる最高効率とされる横浜の磯子石炭火力発電所の排出濃度の約2倍にあたり、環境対策も不十分です(秋田県では能代でも東北電力の石炭火力発電所の建設計画があり、この計画もSOxやNOxの排出濃度が非常に高いのです)。東北は首都圏よりも汚染排出基準が甘くていいのでしょうか?

【4】仙台(宮城県仙台市)・神栖(茨城県神栖地区)・水島(岡山県倉敷市)

小規模石炭火力発電、環境アセスメント条例がない「抜け穴」地域で住民説明なしに推進

 KENESは、国の環境アセスメントの対象とはならない11.25万kW未満の小規模な石炭火力発電所の建設も進めています。

参考:【プレスリリース】環境アセスメント逃れの小規模石炭火力発電所計画、汚染排出データ未公表のまま着工

仙台パワーステーション:KENESなど、仙台市民の求めに応じず

 仙台港では、KENESと伊藤忠エネクスとの共同出資で11.2万kWの石炭火力発電所建設計画を進め、昨夏の住民による説明会要請にも一切回答せず、昨年12月に着工を開始しました。仙台市は、その着工後に条例アセスの対象に火力発電所を加えたものの、本件は対象としていません。今なお、仙台市民からは本計画の説明を事業者側に求めていますが、回答されていません。

関東・茨城のかみすパワーも、中国・岡山の水島MZ発電所も「関西電力」

 また今年4月、関西電力は丸紅と共同出資で特定目的会社「かみすパワー」を設立し、11.2万kWの発電所計画をすすめていると報じられました。これはもともと大阪ガスが昨年12月に丸紅との計画を断念したのですが、それを関電が拾ったものです。

 岡山県でも、環境アセスメントの基準をぎりぎり下回る小規模火力発電の建設が着工しています(水島MZ発電所)。

 宮城、茨城、岡山のいずれの地域も環境アセスメント条例がなく(当時)、住民への説明なしで進められる”抜け穴”地域になっています。

企業の公式ウェブサイトでは再エネ発電事業だけをアピール!?

 このように、環境配慮なく、地域住民不在のままに石炭計画を各地で推進する関西電力グループですが、上述の赤穂以外5つの計画に出資をしている関電エネルギーソリューション(KENES)のWEBサイトに掲載されている発電事業には、太陽光発電、風力発電、小水力発電と、いわゆる再生可能エネルギーしか掲載されていません。

参考ページ:関西電力エネルギーソリューション サービス内容 発電事業

 それらKENESの再エネ発電の出力は約5万kWと、小規模火力0.5基分に満たないのですが、もっと規模の大きな石炭については一言も触れていないのです。

 

 昨年にパリ協定ができて、今世紀後半(早ければ2050年頃)には世界の温室効果ガス排出量を実質ゼロにしようということが決まっています。世界中が脱炭素社会に向かっている時代において、いずれ座礁資産になるであろう石炭火力発電所を、これほどたくさん計画する…。関西電力グループは、ずいぶん世界の流れから外れているなあと思ってしまうのは私だけでしょうか。

 

*この記事は、気候ネットワーク通信108号(2016年5月)の記事「突出する関西電力グループの石炭火力発電計画」に加筆したものです。