<プレスリリース>

山口の石炭火力発電所新設計画 大阪ガスが撤退を表明
~電源開発・宇部興産による事業継続は誤った判断、直ちに計画中止を~

2019年4月24日
特定非営利活動法人気候ネットワーク
代表 浅岡美恵

4月24日、大阪ガス株式会社は、山口県宇部市で進められていた石炭火力発電所「西沖の山発電所(仮称)」の新増設計画から撤退することを発表した。大阪ガスの発表によれば、「電力事業を取り巻く事業環境の変化や将来的なリスク等を踏まえ、当社の投資基準に照らして総合的に判断」したとしている。今回の大阪ガスの決断を歓迎したい。

一方、宇部興産株式会社、電源開発株式会社の2社は計画変更を行い、新設計画を継続することを表明している。設備容量を、60万kW×2基より変更し、60万kWクラスのUSCもしくは、酸素吹IGCC(石炭ガス化複合発電)による商用機開発への計画変更を検討するという。しかし、パリ協定との整合性を図るなら、2030年に石炭火力発電は全廃するしかない。IGCCへの変更を含めて現行の政府方針に沿う内容に計画を変更したとしても本質的な問題は全く変わらない。また電源開発は、将来の脱炭素化に向けた研究や取り組みを進めるとしているが、CCSやCCUなど、実用化のめどが立たない技術を並べ、それらが解決策のように強調されているが、2030年までに実用化の可能性のない技術に依存することは、化石燃料利用やエネルギー多消費社会の継続を正当化させ、取るべき対策を遅らせるだけである。電源開発・宇部興産がなお事業を継続しようとしていることに私たちは驚きを隠せない。本事業を直ちに白紙撤回するべきである。

気候ネットワークやその他の市民団体や地元住民の間では、かねてより、本計画については、気候変動をさらに悪化させ、大気汚染を招く西沖の山発電所新設計画に対して懸念の声をあげてきた。これまでの環境影響評価では、そのCO2排出量が甚大であること、最善の環境対策を行うとの事業者の説明に反して、実際には既に稼働中の石炭火力発電所よりも汚染物質の排出濃度の数値が悪いことなどが明らかになり、計画への批判が強まっていた。大阪周辺では、大阪ガス社長宛に石炭火力発電所新増設計画から撤退するよう要望するはがきを出す市民アクションも2016年から行われていた。さらに、昨年6月の大阪ガス株主総会当日、その会場前で「ガスはクリーンなエネルギー」と宣伝する一方で石炭事業を進める大阪ガスに対する抗議アクションも展開された。今回の大阪ガスの撤退判断は、安全な気候や大気環境を守ることを願う、粘り強い市民アクションの成果である。

また、地元の宇部市長は、環境影響評価手続きにおいて、「再検討」を求める意見を表明していた。地元市長の意見も石炭火力に対する厳しい姿勢が見られた。環境大臣も3月28日に、「電力部門の低炭素化に向けて~新たな3つのアクション~」を発表し、本計画への意見を念頭に、「是認できない」と厳しい意見を述べる方針を発表していた。こうした声を受けても本事業は直ちに中止するしか道はない。

全国では、石炭火力発電所の新増設計画がなお25基もある。これらの事業に関与する事業者も、リスクの大きい石炭火力発電所の新増設から撤退するべきである。折しも検討中の長期低排出発展戦略では、脱石炭の方針が産業界の反対によって削られたという。かかる延命策は、気候変動だけでなく、日本の健全な経済成長の足かせにもなる。政府は、無策を通してきたために、事業者が本来費やさずに済んだリソースを無駄に投じることになっていることを重く受け止め、国全体で温室効果ガス排出削減の道筋を明確にするべく、脱石炭の方針を一刻も早く決定すべきである。

プレスリリース(全文)

【プレスリリース】山口の石炭火力発電所新設計画 大阪ガスが撤退を表明ー電源開発・宇部興産による事業継続は誤った判断、直ちに中止をー(2019/04/24)

参考

西沖の山発電所(仮称)新設計画からの撤退について(大阪ガス)

山口宇部パワー(株)西沖の山発電所(仮称)新設計画 計画変更の検討および環境影響評価手続の休止について(電源開発)

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