<プレスリリース>

石炭火力発電所松浦2号の営業運転開始はパリ協定に逆行する
~時代錯誤な計画に対する抗議声明~

2019年12月18日
特定非営利活動法人 気候ネットワーク
代表 浅岡 美惠

 九州電力が12月16日、松浦発電所2号機(長崎県松浦市)が20日の営業運転を前に報道陣に公開したことを各種新聞等メディアが報じた。これから新たな石炭火力発電所を稼働することは、パリ協定の「1.5~2℃目標」の達成を極めて危うくするものであり、到底認めることはできない。また本事業は現行の環境影響評価法に基づく、環境影響評価も実施していない不適切な計画であり、速やかな中止を求め、厳重に抗議する。

 この計画は、超々臨界圧の技術をつかった100万kW石炭火力発電所で、CO2排出量は推計で年間532万トンに及ぶ。現行の環境影響評価法に基づく環境影響評価ではなく、いわゆる「省議アセス」と呼ばれる1997年9月から通産省省議決定に基づく環境アセスメントを実施した古い計画である。その後2001年3月に工事計画届出が行われたが、2004年6月には電力需要の減少から工事が中断されていた。ところが15年以上経過した2015年11月に工事計画変更届出がなされ、2016年1月に工事を再開している。20年以上昔に環境影響調査を行い、その時の調査報告があらためて公開されることもないままに、ゾンビのように建設計画を蘇らせたのである。工事再開当初、2019年10月に試運転を始め、2020年6月に営業運転に移行する予定と公表されていたが、急ピッチで工事をすすめ、稼働時期を前倒しさせた。

 現在、世界的な温室効果ガス排出量はいまだ増加傾向がみられ、1.5℃目標の達成が極めて危うい状況にある。先だって国連環境計画が発表した「Emissions Gap Report 2019」では、2℃目標の達成には、各国がNDCで定めた2030年時点の削減目標の3倍(15GtCO2)、1.5℃目標の達成には、5倍(32GtCO2)削減する必要があるという厳しい現実をつきつけている。また、12月2日からスペイン・マドリードで開催されたCOP25では、日本の石炭火力発電所の方針が国際社会の中で強い批判を受けたばかりである。当該発電所のように年間532万トンものCO2の大規模排出を伴う発電所を新たに運転すること自体が、国際社会の「脱石炭」の潮流から外れ逆行する日本を象徴するものだ。九州電力は即刻この計画を止め、再生可能エネルギーへの転換に進むべきである。

※報道では470万トンとなっているが、現行の環境影響評価法に基づく手続きが行われておらず、実態が分からないため推計値。

<参考リンク>
いまさら「復活」ですか ~昔むかしに計画されたゾンビ石炭火力までも
https://sekitan.jp/info/eia_20160120/

「松浦発電所2号機 増設工事の再開について」 九州電力によるプレスリリース(2016/1/27)
http://www.kyuden.co.jp/var/rev0/0050/4281/yemz243ph8m91c.pdf

松浦発電所2号機の発電を開始します
-2019年6月1日から試運転による発電を開始-九州電力によるプレスリリース(2019/6/1)http://www.kyuden.co.jp/press_h190531c-1.html

プレスリリース(PDF)

石炭火力発電所松浦2号の営業運転開始はパリ協定に逆行する~時代錯誤な計画に対する抗議声明~

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