プレスリリース

「GENESIS松島計画」への環境大臣意見は旧式石炭火力の延命の容認だ

~気候危機に向き合うなら「是認できない」となるべきだ~

2021年12月16日
特定非営利活動法人気候ネットワーク
代表 浅岡美恵

本日12月16日、環境省は電源開発株式会社によるGENESIS松島計画(以下「本計画」)に対する環境大臣意見を公表した。今般示された環境大臣意見はカーボンニュートラル宣言、2030年の温室効果ガス削減目標の引き上げ及びグラスゴー気候合意の採択後、初めて出されたものである。環境大臣は、今求められる気候変動対策や国際社会の動向と不整合で、わが国の不十分な削減目標とも整合しない本計画に対して「是認できない」と厳しく指摘すべきであったが、本意見は事実上容認するもので極めて遺憾である。

12月9日に当団体がプレスリリースにて指摘したように、本計画は、稼働から40年が経過した、早期のフェーズアウトが求められている電源開発・松島火力発電所2号機(超臨界圧・50万kW)にガス化発電設備を付加して老朽火力を期限を定めず延命するものであり、時代に逆行するものである。

そもそも、パリ協定のもとでの排出量の削減が求められているのであり、CO2排出原単位や省エネ法におけるエネルギー効率及び電力業界の自主的取り組みの枠組みは、日本の2030年目標の確実な達成を担保するものではない。また、2030年までに引き上げられた2013年比46%削減に対応する対策の具体化もなく、電力業界の自主的枠組みの改定もいまだなされていない。それにもかかわらず、大臣意見では、電源開発が示した具体性を欠く「カーボンフリー燃料の導入」、「CCUS/カーボンリサイクルの導入」といった構想に対して、実質的な期限を定めず可能な限り早期に導入の検討を進めることを求めるにとどまる。そもそもCCSは、1970年代から多額の研究開発予算を費やしているにも関わらず現時点で国内の実証実験がようやく終ったにすぎない、国内には適地が乏しく、コストも高く、実現可能性を欠く構想である。また、本件計画は石炭のガス化・混焼に製造過程でCO2排出を伴う水素・アンモニアを燃料とするものであるが、具体的な排出量の検討もされていない。こうしたもとで、本意見は、CCUSの導入時期を明示させることや、アンモニア混焼による排出削減の具体的内容を明確にすることを求めることなく、単に検討を求めるにとどまったもので、同様の不確かな「対策」を通じて事業者が日本全国に立地する数多くの非効率石炭火力を延命させ、日本の脱炭素化を遅らせ気候危機を一層深刻化させることに環境省としてゴーサインを出したも同然であり、歴史的に禍根を残すものと言わざるを得ない。

今日、パリ協定及びグラスゴー気候合意のもとで2030年の温室効果ガス削減目標の引き上げが求められているのであり、既設及び建設中の石炭火力発電所のフェーズアウトに向けて根本的な見直しが不可避である。政府は、石炭火力発電事業者に対して、石炭火力の延命ではなく早期廃止に向けた実効的な方策の構築を急ぐべきである。

 

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【プレスリリース】 「GENESIS松島計画」への環境大臣意見は旧式石炭火力の延命の容認だ~気候危機に向き合うなら「是認できない」となるべきだ~(2021/12/16)

 

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