脱炭素地域づくりの取り組み推進のための「枠組み」について、条例で定める自治体が多くあります。気候ネットワークは、地球温暖化対策に係る条例についてまとめています。(このページは情報が古くなっている恐れがあります。参考にされる際にはご注意ください。)
地球温暖化対策条例
脱炭素地域づくりを進める枠組みとして
脱炭素地域づくりの取り組み推進には、「枠組み」が必要です。地域の将来像(ビジョン)をどう描くか?何をめざすのか?誰がどう取り組むか?進捗をどのようにチェックし、改善するか?このような「枠組み」について、条例で定める自治体が多くあります。現在自治体で広がる2050年CO2排出ゼロを目指す、ゼロ・カーボンシティの実現のためにも条例を策定することは有効です
条例の意義
条例をつくる意義には、次のようなものがあります。
- 地域の課題を解決し、地域を元気にするような温暖化対策を主体的に進める意思を明らかにする。
- 地域の将来像(ビジョン)、対策の目的と目標、実施分野、対策メニュー、対策の進行管理方法等を明らかにすることで、継続的に取り組みが行われることを担保する。
- 条例を策定する過程で議論を重ねることにより、地域の多様な主体の間で認識が共有され、温暖化対策の地域的なネットワークができる。
- 自治体独自のルールを定め、ある主体に義務を課したり、権利を与えたりすることができる。
- 条例制定の動向
2004年、京都市が全国で初となる、地球温暖化対策の推進に特化した条例、「京都市地球温暖化対策条例」を制定しました。それ以降、同様に温暖化対策を目的とする条例(以下、地球温暖化対策条例)を制定する自治体が広がっており、2012 年末時点で 33 自治体(17道府県、12市、2区、2町)を数えます。
条例は、市民、自治体、事業者といった地域の主体が地球温暖化対策に取り組むことの責務を明らかにする意義があります。また、自治体の中の各部署で温暖化対策への理解が深まるという効果がみられます。さらに、自治体によっては独自のルールを導入しているところもあります。
例えば、東京都は 2008 年に環境確保条例を改正し、大規模事業所を対象とした温室効果ガス排出量総量削減義務と排出量取引制度(キャップ・アンド・トレード)を導入しました。制度を開始した 2010年度は猛暑の年であったのにも関わらず、基準排出量に比べ、13%(前年度比 0.7%)の削減に成功し、2011 年度には 23%削減(速報値)を実現しています。また、多くの自治体の地球温暖化対策条例で、事業者・事業所向けの温室効果ガスの算定・計画・報告制度が導入されています。これによって、各事業者・事業所の温室効果ガス関連データが蓄積され、地域で対策を検討する場合の貴重な基礎資料が得られるようになります。得られたデータをもとに各事業者の取り組みを評価し、A、B、C…などとランク付けをしている自治体もあります。
省エネルギーや再生可能エネルギーの推進について条例で定める自治体もあります。京都市では地球温暖化対策条例を 2010年に改正し、一定規模以上の新築建築物への再生可能エネルギー導入義務付けを行いました。また、温暖化対策に特化しているわけではありませんが長野県飯田市の「飯田市再生可能エネルギーの導入による持続可能な地域づくりに関する条例」では、市民が再生可能エネルギーを導入することは市民の権利だとし、市長が協働で支援することが明記されています。
「条例をつくることができるのは大規模な自治体だから」という声も聞かれます。しかし、埼玉県嵐山町(人口約 1 万 9000 人)では、人員不足の町役場をカバーする町議会のイニシアティブや気候ネットワーク他の NPO の支援のもと地球温暖化対策条例案の検討が進められ、2011 年 5 月に条例が制定されました。宮崎県五ヶ瀬町でも同年 9 月に「五ヶ瀬町における低炭素社会実現のための基本条例」が成立しています。地域の人が多様な主体と協働で低炭素地域づくりの枠組みを整えることも可能です。
条例を足がかりに脱炭素地域づくりを進めるためには
まずは、自治体が温暖化対策の条例を策定済みかどうか、市町村のウェブサイトや役所の窓口等で調べてみてください。条例がない地域ではまず策定をめざす(策定の是非を検討する)ことから始めましょう。検討する際のメンバーには、すでに地域内で低炭素地域づくりに関連する取り組み実績のある市民、事業者、NPO、教員・研究者等を巻き込むことがポイントです。
条例がすでにある地域では、実際に取り組みが十分に行われているのか、温暖化対策で地域の課題を解決し、地域を元気にするという理念があるのかといった点を確認しましょう。また、条例は見直しが行われることがあります。見直しの際に脱炭素地域づくりの視点を入れ、「活用」できる条例にしていくことが大切です。条例を「活用」して、脱炭素地域づくりを進める足がかりにしましょう。