気候ネットワーク 市民のチカラで、気候変動を止める。

【パブコメ・意見書】 「GX実現に向けた基本方針」に対する意見提出(2023年1月20日)


気候ネットワークは、2023年1月22日締め切りの「GX実現に向けた基本方針」に対する意見募集に、以下の意見を提出しました。

※意見提出時の注意
ここでは基本方針の記載に準じて[該当箇所]を記載していますが、入力時に〇囲み文字(④など)が機種依存として入力エラーを起こした場合には、囲みなしの数字に置き換えるなどの対応を行っています。

意見の内容

【意見1】「GX実現に向けた基本方針」について(全体)

該当箇所:全体
意見内容:GX(グリーントランスフォーメーション)という名のもとに「グリーン」に向かわない政策を推進することは、脱炭素社会の実現に繋がらない。実質的な経済の大転換となる政策を推進するべきである。

理由:GXの名のもとに石炭火力のアンモニア混焼・専焼化に財政支援を制度化して推進することは、戦後の産業・エネルギー政策の大転換とするものではなく、旧来からの原子力と石炭重視の方針をさらに硬直的に延長するものでしかない。世界で進められているエネルギー政策に逆行し、経済合理性も全く欠くもので、気候危機回避に重要なこれからの10年の、日本の気候危機・エネルギー危機に不可欠の経済の大転換を妨げることになる。

【意見2】原子力の活用について(1)

該当箇所:P6, 3) 原子力の活用
意見内容:エネルギーの安定供給において原子力発電を重要と位置付け、運転期間の延長、増設をすべきではない。

理由:この基本方針では、原子力発電所がエネルギーの安定供給とカーボンニュートラル実現に重要な役割を果たすとして、法律で定められた「原則40年」の運転期間を踏み越え、停止期間を含まずに60年を超える稼働を可能にするとしているが、経年劣化によって原子炉の安全上のリスクは増大する。福島第一原発の事故処理および汚染水を含む放射性廃棄物の処理など数々の問題が解決に至っていないことも周知の通りである。原子力発電は安全面でも対策コスト面でも大きな問題を抱えている。さらに、ロシアがウクライナ進攻で稼働中の原子力発電所を攻撃したことから、安全評価における戦時リスクも想定外とは言いにくくなっている。これらの状況を鑑みれば、新増設への理解は得られにくい。新増設を行ったとしてもエネルギー基本計画における2030年度の原子力の割合(20~22%)まで増やすことは実質的には困難である。しかも、原子力発電の新設・再稼働には膨大な費用を要するので、そうした費用が電力価格に転嫁されれば、再生可能エネルギーによる電力価格と比較しても、原子力発電による電力価格は競争力を失うことになる。実際、世界各国では再生可能エネルギーによる電力価格が低下している。より安全、かつ安価な再生可能エネルギーではなく、リスクが大きく高価な原子力発電を新増設し、電力系統に優先的に接続する、あるいは運転年数を延長して稼働させてまで活用すべきではない。

【意見3】原子力の活用について(2)

該当箇所:P6, 3) 原子力の活用
意見内容:従来の政策の大転換であり、改めて国民的議論の場を設けるべきである。

理由:これまでのエネルギー基本計画は、「原子力への依存を可能な限り低減」するとしてきた。原発再稼働への関係者の総力の結集、原発の運転期間延長、次世代革新炉の開発・建設など原発推進の方向性を強く打ち出したGX基本方針は従来の政策を大転換するものであり、国民的議論を経ずに、原子力産業に近い立場の委員が多数を占める原子力小委員会での審議で決定したことには大きな問題がある。各地で公聴会を実施するなど、決定の前に十分な国民的議論の時間と機会を設けるべきである。

【意見4】原子力の活用について(3)

該当箇所:P6, 3) 原子力の活用
意見内容:原子力活用は有効な気候変動対策ではなく、原発は気候変動の影響に対して脆弱であるため、改めて専門家や国民を交えた議論を実施すべきである。

理由:GX基本方針では、原発活用の理由として、「安定供給とカーボンニュートラル実現の両立に向け、脱炭素のベースロード電源としての重要な役割を担う」ことを挙げている。しかし、原子力の活用は気候変動対策の有効な手段とは言えず、また、原子力に頼らずともCO2排出削減は可能である。福島原発事故後に全国の原発が停止した後も日本のCO2 排出量はほとんど変わらず、2014 年以降は減少に転じている。これは再生可能エネルギーの普及と省エネが進んだことによるもので、多くの原発が停止していても日本のCO2 排出量は減り続けている。逆に、日本で原発が増加してきた過去50 年間では、CO2 排出量は増え続けてきた。原発の存在が、エネルギー大量消費とCO2 排出量増加を促してきた側面もある。さらに、原発は需要に合わせた出力調整ができないため、調整力として、またトラブル等による停止時のバックアップとして火力発電を必要とし、脱炭素の選択肢とはならない。
 原発は気候変動の影響に対する脆弱性も抱えている。原発は大量の冷却水を必要とするが、地球温暖化によって世界各地で干ばつによる水不足や、水温の上昇が起きている。原発大国であるフランスでは2022年夏、猛暑と干ばつによって原子炉の冷却が困難となり、原発の出力低下による電力危機が引き起こされた。日本の原発は海岸沿いに立地しているため、海面上昇や巨大台風などの異常気象の増加によっても脆弱性を増すことになる。こうした点をふまえ、改めて専門家や国民を交えた議論を実施すべきである。

【意見5】原子力の活用について(4)

該当箇所:P6, 3) 原子力の活用
意見内容:「次世代革新炉」の開発は現実的な投資対象ではない。より短期間で実施でき、排出削減効果や経済性も高い再生可能エネルギーの導入拡大や省エネ技術の普及にこそ大きな投資を向けるべきである。

理由:政府が「次世代革新炉」として挙げている中には、革新軽水炉、高速炉、高温ガス炉、核融合炉、小型軽水炉が含まれているが、いずれも投資対象としても、気候変動対策としても現実的ではない。革新軽水炉は既存炉と比べ「革新」と呼べるほど新しいものではなく、建設が行われている英国やフランス、中国では、工期の大幅な遅れや建設費上昇を繰り返している。高速炉は燃料冷却材のナトリウムの扱いが難しく、日本ではトラブル続きだった高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉が決まった。高温ガス炉、核融合炉も長年開発が進められてきたが、技術が未確立で商用化の見通しが立たない。小型軽水炉は世界中で開発が行われているが、炉型や規模がばらばらで過当競争となっており、採算性が疑問視される。小型なので現在の原発と同じ発電量を確保するには多数建設する必要があるが、新たな候補地が見つかる保証はない。出力が小さいため運転の採算性にも疑問がある。さらに、気候変動対策の観点では、1.5℃目標達成のためには2030年までに温室効果ガス排出量の大幅削減が求められているが、次世代革新炉の導入はいずれも、2030年までに間に合わない。より短期間で実施でき、排出削減効果や経済性も高い再生可能エネルギーの導入拡大や省エネ技術の普及にこそ大きな投資を向けるべきである。

【意見6】燃料アンモニアの導入促進について(1)

該当箇所:P7, 4)水素・アンモニアの導入促進
意見内容:現時点で実用化できていない石炭火力への燃料アンモニア混焼、将来的な専焼に依存する排出削減を描き、そこへの巨額投資をすべきではない。

理由:水素・アンモニアを発電燃料として利用すべく、公的資金を投入しての技術開発および実証実験が進められているが、現時点で石炭火力へのアンモニア混焼およびガス火力への水素混焼は実用化できていない。事業者の開発計画では、将来的な専焼に向けて段階的に混焼率を上げていくとしているが、2030年までにCO2排出量の半減は達成できない。2030年までの限られた時間内に効果的に排出を削減するためには、水素・アンモニアの混焼といった「イノベーション技術」に投資するのではなく、実質的なCO2削減につながる省エネ・再エネへの投資が必要である。また、既存の火力発電への混焼が実証実験レベルから実用レベルに進めたとしても、現在の水素・アンモニア製造技術ではCO2排出削減が可能となる「グリーン」な燃料を必要量を確保することは難しい。この点も踏まえれば、発電部門での水素・アンモニアの導入を促進するためではなく、確実に排出削減効果のある省エネ・再エネへの投資を確保し、着実に推進すべきである。と同時に、カーボンプライシングなどの排出削減につながる経済政策を早期に導入し、再生可能エネルギーの普及につながる施策に全力を注ぐべきである。

【意見7】燃料アンモニアの導入促進について(2)

該当箇所:P7, 4)水素・アンモニアの導入促進
意見内容:燃料アンモニアの石炭火力への混焼は、限られた時間枠内で火力発電からの CO2 排出量を削減することはできず、カーボンニュートラルに向けた突破口とはならない。さらに、その供給を国外に依存すれば、エネルギー安定供給の確保にもつながらない。よって、燃料としての水素・アンモニアの導入を促進すべきではない。

理由:発電分野はCO2を全く排出しない再生可能エネルギーの技術が確立しており、太陽光、風力など価格も下がっている。アンモニアを石炭火力に混焼しても、ほとんどCO2の削減にはつながらず、気候変動対策にならない。トランジションを支える役割どころか、カーボンニュートラルに逆行している。現在、GXで推進しようとしているのは国外の化石燃料を原料にしたアンモニア製造で、「自給率の向上」には全くつながっていない。国外から燃料を輸入する体制を拡大することも、エネルギー自給率の向上に逆行する。アンモニアの導入促進は進めるべきではない。

【意見8】燃料アンモニアの導入促進について(3)

該当箇所:P7, 4)水素・アンモニアの導入促進
意見内容:石炭火力への燃料アンモニア混焼、将来的な専焼によるCO2排出削減効果は少なく、石炭火力発電の延命につながるので、燃料アンモニアの開発、実用化を促進すべきではない。

理由:現在、アンモニアは「ハーバー・ボッシュ法」という高温高圧下で生産されているため、その生産プロセスで大量のエネルギーを必要とする。触媒による生産方法などが研究されているが、大規模な石炭火力発電所での消費を賄える量を低コスト、低エネルギー消費で生産することは難しい。加えて、国外で生産された燃料アンモニアを運搬する際に化石燃料のエネルギーが使われれば、そこでも大量のCO2を排出することになる。つまり、既存のサプライチェーンでは、生産および運搬の段階でCO2が排出され、そうして入手した燃料アンモニアを石炭火力に混焼させても、ライフサイクルCO2はほとんど削減されない。確約できない将来的な削減量を掲げて燃料アンモニアの混焼を進めることは、化石燃料利用の延命にしかならない。

【意見9】燃料アンモニアの導入促進について(4)

該当箇所:P7, 4)水素・アンモニアの導入促進
意見内容:水素・アンモニアの供給体制を作るのであれば、国外に依存せずに、国内生産を進めるべき。

理由:政府は、2030年に水素・アンモニア300万トン(電源構成1%分)、2050年に水素2000万トン、アンモニア3000万トン)を想定した供給体制のロードマップを描いているが、既存のグリーン水素・アンモニアの製造量は限られており、化石燃料起源から水素・アンモニアを製造し、その過程で発生するCO2をCCSで回収するブルー水素・アンモニアの製造でも製造量に限界がある。CCS付であってもCO2の回収は限定的で、原料に化石燃料が使われている限りCO2を排出することは変わらない。水素・アンモニアの供給体制の構築を目指しているが、多額のコストがかかる。供給体制を作るためのコスト対CO2削減量を考えれば、国内で再エネ普及の体制をつくる方に投資を集中すべきである。また、発電設備での混焼を急ぎ、グレーやブルーアンモニアを確保するための供給体制を構築できたとしても、技術的にもインフラ的にも全く異なるグリーン水素・アンモニアの供給体制には簡単にシフトできない。将来的に「グリーン水素・アンモニア」の利用を目指すなら、最初から製造時に温室効果ガスを排出しないグリーンな水素・アンモニアだけを念頭においた供給体制を国内で構築すべきである。そのためにも「クリーン」の定義を完全に再エネ由来でCO2フリーの水素・アンモニアに限定し、体制構築を進める必要がある。

【意見10】燃料アンモニアの導入促進について(5)

該当箇所:P7, 4)水素・アンモニアの導入促進
意見内容:水素・アンモニアの導入拡大は、産業振興や雇用創出などの経済への貢献につながらない。

理由:技術的にもコスト的にも課題の多い燃料アンモニアの導入を推進しても、化石燃料以上にコストがかかり国富の流出につながる。また、石炭火力が維持され続けるので、供給されるのは高炭素電源により発電された電力となる。CO2を排出せずに発電された電力が得られないことで、RE100を目指すような意識の高い多くの日本企業やグローバル産業が国外に流出してしまう可能性があり、産業振興どころか、経済の弱体化をもたらすことが懸念される。

【意見11】燃料アンモニアの導入促進について(6)

該当箇所:P7, 4)水素・アンモニアの導入促進
意見内容:アンモニア自体、毒性の強い物質である上、燃焼するとNOxが発生し、大気汚染が懸念されることに加え、水素からアンモニアを生産するプロセスにも無駄がある。

理由:アンモニアは化学肥料などに利用されているが、エネルギー分野では水素キャリアとして、輸送の際に水素をアンモニアに変換していたことから、直接燃料として使用してはという発想に至った経緯がある。アンモニア自体に強い毒性があり、眼、皮膚、口腔や気道の粘膜に即時性の損傷(重度の刺激症状と熱傷)をもたらす危険性がある。アンモニアは水素に比べると燃えにくく、燃焼時には大気汚染物質であるNOxを発生し、毒性も強い。発電設備に除去装置を付けるとしても、国内で大量のアンモニアが燃焼されることになれば、大気汚染および健康被害が懸念される。水素キャリアとしての利用については、国内で再エネから直接水素を作れば、わざわざエネルギーを使ってアンモニアに変換して運搬する必要はなくなる。まして、そのままで燃料として使える水素からエネルギ―を使ってアンモニアに変換し、それを燃料として使用するのはプロセス的にも費用的にも無駄が多い。

【意見12】燃料アンモニアの導入促進について(7)

該当箇所:P7, 4)水素・アンモニアの導入促進
意見内容:水素・アンモニアをCO2が発生しない燃料のように広めることは、正確ではない。国民理解の下での水素・アンモニアの社会実装を目指すのであれば、問題点を明確に示し、国際合意に反する策であることも含め、正確な情報提供をすべきである。

理由:製造過程や輸送においても完全にCO2を排出しないアンモニアや水素の製造が実用段階にない状態で、アンモニアや水素をCO2フリー燃料であるかのように伝えるのは誤りである。国民理解の下での水素・アンモニアの社会実装を目指すのであれば、国民に対して燃料アンモニアの問題点などを明確に伝える必要がある。本当の意味での正しい理解を深めるためにも、討論型国民的世論調査をすべきである。また、水素やアンモニアを活用するイノベーション技術を国外、特に東南アジア諸国にも推進する考えを示しているが、国際的にはCOP26でのグラスゴー合意や、G7での石炭火力の段階的廃止に向けた合意や2035年までの電源の脱炭素化が決定しており、日本もそこに参加している。水素やアンモニアの導入を促進することにより、既存の石炭火力を延命する、または化石燃料由来の水素・アンモニアの利用を促進することになれば、国際合意に全く整合しないことになる。

【意見13】カーボンニュートラルの実現に向けた電力・ガス市場の整備

該当箇所:P8, 5)カーボンニュートラル実現に向けた電力・ガス市場の整備
意見内容:電力市場の整備における容量市場の役割が懸念される。

理由:「供給力確保に向けて、2024 年度開始予定の容量市場を着実に運用する」、「長期脱炭素電源オークションを通じ、安定供給の実現や、計画的な脱炭素電源投資を後押しする」とあるが、容量市場は実質的には原発や既存火力発電を延命する支援措置である。容量市場は、既存の石炭火力発電所の維持に強いインセンティブとなることが懸念される。同様に、脱炭素電源投資もアンモニア混焼などを後押しする制度であり、かつ気候変動対策に逆行する。再生可能エネルギーの最大限の導入を基本として、その後押しとなる制度を構築すべきである。

【意見14】カーボンリサイクル/CCS ④CCSについて

該当箇所:P12, 13) カーボンリサイクル/CCS ④CCS
意見内容:CCSによるCO2の回収・貯留には多額のコストが必要とされる以外にも、さまざまな課題が挙げられている。この技術に依存してCO2排出削減対策を遅らせるべきではない。

理由:CO2の回収や貯留(CCS)には多額のコストが必要な上、回収には限界があり、回収・貯蔵後もCO2漏洩のリスクは否定できない。政府は、2050年時点で毎年3億トン以上のCO2の回収・貯留が必要と試算しているが、該当量のCCS適地を日本国内で確保するのは困難であり、貯留先についても国外に依存することになる。回収したCO2を国外に輸送するとなれば、その手間とコストも発生する。また、CCSを想定しての水素・アンモニア生産と同様、CO2の処理を他国頼みとすることは、日本のエネルギー政策上でも問題であり、これらを踏まえると、現時点で安定した商用実績が限られるCCS技術を見越してCO2排出削減対策を遅らせるべきではない。

【意見15】「成長志向型カーボンプライシング構想」の実現・実行について(1)

該当箇所:P13, (1)基本的考え方
意見内容:国際公約達成と、我が国の産業競争力強化・経済成長の同時実現を図るのであれば、巨額の国費を投じて経済成長を目指すのではなく、1.5℃目標に整合するものであるべきである。

理由:カーボンプライシングの基本的な考え方は、「1.5℃目標」に整合する大幅削減のインセンティブとすること、再エネや省エネなど脱炭素型の経済への転換を促すことで、地域経済の発展やエネルギー自給率向上、地域雇用の活性化などを実現することを目指すべきである。

【意見16】「成長志向型カーボンプライシング構想」の実現・実行について(2)

該当箇所:P14 , (2)「GX経済移行債」(仮称)を活用した大胆な先行投資支援(規制・支援一体型投資促進策)
意見内容:
排出量取引制度や炭素税の導入を先送りにし、「将来得られる財源」を当てにして「GX経済移行債」を先んじて導入するのは本末転倒である。炭素税などを先行して導入し、効果的な削減のインセンティブを与えながら、その財源を効果的な対策に充てていく必要がある。

理由:将来的な投資促進策を講ずるために、カーボンプライシングを導入し、その結果得られる財源を裏付けとした 20 兆円規模の「GX 経済移行債」(仮称)を来年度以降 10 年間、発行するとあるが、財源の確保方法としては不確実であり、将来世代に負担を課すものとなりかねない。着実に財源を確保できる炭素税などの導入を急ぎ、早期に効果的な対策に着手すべきである。

【意見17】「成長志向型カーボンプライシング構想」の実現・実行について(3)

該当箇所:P14, 3.「成長志向型カーボンプライシング構想」の実現・実行,(2)「GX経済移行債」(仮称)を活用した大胆な先行投資支援(規制・支援一体型投資促進策)2) 「GX経済移行債」(仮称)
意見内容:今後10年間で150兆円超えが想定されているGX投資によって推進される「GX実現に向けた基本方針」は実質的な脱炭素社会の実現に向けた施策となっていない。

理由:資源循環・炭素固定技術等の研究開発等への投資としてのGX投資には、今後10年間で150兆円超えが想定されている。そのうちの20兆円規模を「GX経済移行債」(仮称)として国が先行投資するため、2023年度以降10年間、毎年度、国会の議決を経た金額の範囲内で発行していくとしている。原子力、水素・アンモニア、CCSなどに巨額の投資を行うことになっているが、実質的な脱炭素社会の実現に向けた施策への投資とは言い難い。こうした投資を省エネや再エネに振り向け、より実現可能な再エネの活用、普及によって脱炭素化を進めることが必要。現状の基本方針は、そのような施策になっていない。

【意見18】「成長志向型カーボンプライシング構想」の実現・実行について(4)

該当箇所:P17, 2) 今後の対応  ① 「排出量取引制度」の本格稼働
意見内容:「排出権取引制度」につき、 参加企業のリーダシップに基づく自主参加型、自主的に目標設定-との言葉が並んでいるが、GHG排出量の削減のためには、より強制力のある効果的な策が必要である。

理由:これまで産業部門のGHG排出に対して、企業の自主的な取り組みに対して何ら規制がなかったために、効果的な削減につながらず、燃料転換も進まないまま、実際には石炭火力が増えていくような状況にあった。169基もの石炭火力発電所が稼働中の現時点でも、建設途中、さらには計画中の案件が控えており、企業によっては目標を掲げてはいるものの、2030年・2050年に向けた石炭火力発電所の閉鎖計画は公開されていない。今後、自主参加型の制度を制定し、(排出削減を)企業の自主努力に委ねたとしても、効果的な削減につながらない可能性は高い。政府は、企業だけにその責任を転嫁するのではなく、確実にキャップをかけ、総量削減につながるようなキャップ&トレード型排出量取引制度を導入すべきである。

【意見19】「成長志向型カーボンプライシング構想」の実現・実行について(5)

該当箇所:P17, 2) 今後の対応  ① 「排出量取引制度」の本格稼働
意見内容:キャップ&トレードの本格稼働を前倒しするとともに、実質的な行動変容を促す効果を生むような価格帯を設定、具体的に言えば、カーボンプライシングで1.5℃~2℃目標に必要な価格は5,000円~10,000円/トンCO2程度とするべきである。

理由:基本方針では、排出量取引市場の本格稼働を2026 年度以降に設定するとしているが、今後10年を見据えたロードマップで大幅削減を実施するなら遅すぎる。来年度から早々にキャップ&トレードを本格稼働するようにするべきである。また、「GXに向けて行動変容を促す」のではなく、「CO2の大幅削減」や「エネルギーシフト」に向けた行動変容を促す効果を生むことにつながる価格帯で設定すべきである。カーボンプライシングで1.5℃〜2℃目標に必要な価格は、5,000円~10,000円/トンCO2程度とし、世界の情勢を踏まえつつ見直しを可能としておくべきである。

【意見20】「成長志向型カーボンプライシング構想」の実現・実行について(6)

該当箇所:P18, 2) 今後の対応  ③ 「炭素に対する賦課金」の導入
意見内容:炭素に対する賦課金は、化石燃料使用からの移行が進むよう、炭素含有量に応じた賦課金とし、効果的な削減につながるものとし、カーボンプライシングとして即時導入を行い、2030年までには10,000円/トンCO2程度の税率にまで段階的に引き上げていくべきである。

理由:炭素に対する賦課金が、炭素排出に対する一律のカーボンプライシングとしての位置づけであるならば、化石燃料使用からの移行を促進させるべく、炭素含有量に応じた額を設定し、効果的な排出削減につながるものであるべきである。そのためには2028年度からの導入では遅い。炭素に対する賦課金をカーボンプライシングとして即時導入し、導入時の価格を負担の少ないものに設定したとしても、2030年までには10,000円/トンCO2程度の税率に段階的に引き上げていく必要がある。G7に加盟する先進国として2030年までに石炭火力を全廃する目標に向け、カーボンプライシングの早期導入を行い、効果的な削減策を推し進めるべきである。

【意見21】カーボンプライシング構想について(1)

該当箇所:P16, 3.「成長志向型カーボンプライシング構想」の実現・実行,(3)カーボンプライシングによるGX投資先行インセンティブ
意見内容:カーボンプライシングは、化石燃料からの脱却を後押しすることになるので、炭素価格の制度設計と導入時期(2028年開始予定)を前倒しすることを再考すべきである。

理由:化石燃料からの脱却を後押しし、脱炭素社会の実現を促進するカーボンプライシングの制度設計を行い、2030年度の温室効果ガス46%削減や2050年のカーボンニュートラルの国際公約を踏まえ、導入時期(2028年度開始予定)を前倒しするように、検討・検証が必要である。

【意見22】カーボンプライシング構想について(2)

該当箇所:P19, 3.「成長志向型カーボンプライシング構想」の実現・実行,(4)新たな金融手法の活用
意見内容:不透明性の高い技術について多額の投資をするのではなく、既に実用化されている再エネ技術等が最大限促進される制度とするべきである。

理由:2050年カーボンニュートラルの実現に向け、今後10年間で官民150兆円超のGX投資を実現するためには、「GX経済移行債」(仮称)による国の支援と合わせて、民間金融機関や機関投資家等による積極的なファイナンスが必要であるとしている。しかし、技術や需要の不透明性が高いものについては、民間金融だけではリスクをとりきれないものもあり、公的資金と民間資金を組み合わせた金融手法(ブレンデッド・ファイナンス)の確立が重要と記している。もはや先行き不透明な技術開発に投資している時間は残されていない。既に実用化されている再エネ技術等が最大限促進される制度とするべきである。方針に示されているような不透明な技術に公的資金を投じるのであれば、そのリスクを明らかにし、国民と対話した上で、技術開発の状況を報告し、進捗によっては技術開発の修正、変更するような体制を構築しておくことが必要である。

【意見23】GX実現に向けた政策の進捗評価について

該当箇所:P26, 6. GXを実現する新たな政策イニシアティブの実行状況の進捗評価と見直し
意見内容:GXの基本方針はエネルギーの安定供給の確保を大前提としているので、脱炭素社会に向けた進捗に繋がらないことが懸念されるが、その進捗を評価する仕組みも曖昧である。

理由:GX投資の進捗状況などの今後の進捗を「GX実行会議」等において定期的に評価するとしているが、そもそものGX基本方針は、エネルギーの安定供給の確保を大前提としたものである。そのため、産業革命以来の化石エネルギー中心の産業構造・社会構造をクリーンエネルギー中心へ転換するという、本来の「グリーントランスフォーメーション」につながるのかの適切な評価、見直しが行われないことが危惧される。2050年ネットゼロに向けた脱炭素政策の進捗評価となるような評価項目、評価体制の構築が必要である。

【意見24】「GX実現に向けた基本方針」に対する意見公募について(全体)

意見内容:パブリックコメント実施期間を延長し、国民的議論の機会を設けるべきである。

理由:今回のパブリックコメントには1か月間の期間が設けられているが、実施の公表が12月末に行われ、多くの国民や企業・団体等が年末年始の長期休暇に入る時期を挟んでパブリックコメントの期間が設定されており、国民の関心や議論が高まりにくい。GX基本方針の議論を進めてきたGX 実行会議の委員はほぼ業界関係者であり、市民団体や経済産業省の示した案に異論を述べる者は殆ど含まれていない。これまで国民不在のもとで議論と決定が行われてきたのであり、国民の意見を取り入れるためにパブリックコメントを最大限に活用する必要がある。そのためには今回のパブリックコメント実施時期や期間は不適切であり、パブリックコメント実施期間の延長や再実施を行い、その間に公聴会など国民的議論の場を設けるべきである。

【意見25】「GX実現に向けた基本方針」に対する意見公募について(全体)

意見内容:今後の日本のエネルギー政策において重要な方針を、限られたメンバー短期に審議し、国民的議論の場も時間も設けないまま、国会審議を急ぐべきではない。

理由:本方針の案を作成したGX実行委員会は、2022年7月27日に第1回会合を開催し、同年12月22日までの約4か月内に5回の審議を行っただけのスピード審議で本方針案を作成した。この基本方針の中には、政府は、この基本方針を23日召集予定の通常国会に提出することを目指しているとされているが、このような今後の日本のエネルギー政策において重要、かつ巨額の資金を必要とする政策(「GX経済移行債(仮称)」を発行し、2023年度から2032年度までに20兆円規模を調達する)を、短期間に限られたメンバーで審議し、十分な国民への説明を行わずに決めるべきではない。「GX実現に向けた基本方針」についての全国説明・意見交換会情報が告知されていても、調整中が多数である上に、国会審議の後となっているものもある。パブリックコメント実施期間を延長し、国会審議に入る前に国民への丁寧な説明を行うべきである。

関連リンク

e-gov:「GX実現に向けた基本方針」に対する意見募集(リンク
「GX実現に向けた基本方針」に対する意見公募要領(リンク
GX実現に向けた基本方針 ~今後10年を見据えたロードマップ~(リンク
資源エネルギー庁:「GX実現に向けた基本方針」についての全国説明・意見交換会情報(リンク

情報リンク

イベント情報(録画と資料あり):2023年1月16日 原発・石炭回帰のGX基本方針の誤りと問題点 -今、なにが決められようとしているのか- 
【プレスリリース】GX実行会議の原発石炭回帰の方針に断固反対 気候変動対策に逆行、国費の浪費、経済衰退への道を進むべきではない(2022年12月23日)
【プレスリリース】新聞意見広告を掲載 ―GXは気候変動対策に逆行している―(2022年12月23日)

意見書(PDF)のダウンロードはこちらから

【パブコメ・意見書】「GX実現に向けた基本方針」に対する意見提出(2023年1月20日)(PDF

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